車の修理会社、ロボット科学教室、ドローンのパイロットスクール、紳士服のコナカの顧問、AI(人工知能)コンサルタント――と5つの顔を持つ石原潤一さん。斜陽産業から新興産業まで幅広く複数の事業を展開するに至った経緯や、近い将来に備えた経営の姿勢について伺いました。(聞き手・文=南野胡茶)

複数の顔を持つと、見える世界は変わる。コナカ×AIコンサルタント【前編】

子どもたちが世界で英語のプレゼンをする舞台へ

石原潤一氏プロフィール
石原潤一(いしはら・じゅんいち)
1973年埼玉生まれ。1995年車の修理会社ストーンフィールド設立。2011年ソフトバンクアカデミア入学。2016年ユニバーサル・ロジック設立。2017年国際UAVビジネス支援協会設立。2018年、紳士服コナカの顧問就任。

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石原さんが運営される教室の子どもたちも、やはり世界最大規模のロボットコンテストFLL出場を目標にしていますか?

石原さん 実は、私が運営するプログラミング教室クレファスふじみ野校は、2018年2月にFLLの世界大会へ出場を果たしました。世界大会に出場するには、東日本予選大会、全国大会を勝ち抜く必要があります。世界大会のプレゼンテーションは当然英語です。小中学生の子どもたちが、世界大会といったものに参加し、スポットライトの下で英語のプレゼンテーションを行う――こんな経験を得た子どもたちの人生観はきっと変わるでしょう。この事業は、ロボットを通して、子どもたちの人生を変えるようなチャンスを与えたいという信念を持って運営をしています。

FLL競技の具体的な内容をご紹介いただけますか?

石原さん 世界で話題の社会的課題が毎年設定されます。ある年の課題は「震災」でした。ビルなどの瓦礫の山を模したレゴのジオラマの街をステージに、制限時間内に自作のロボットが何名救助できるかを競い合いました。

トラリピインタビュー

子ども向けの大会とはいえ、かなり本格的な内容なんですね。

石原さん はい。普段の授業もそれに沿う内容です。当時小学3年生だった私の息子から「迷路を脱出する自立型のプログラムを作っている」と聞いた時は、かなり高度なことを学ばせるものだと驚きました。

同じ会社でドローン事業も展開されているようですが、こちらの事業を始められたきっかけは何でしょうか?

石原さん ラジコン屋を営む友人から、ドローン関連の仕事が忙しくなってきたので、手伝ってくれないかと相談を受けたことがきっかけで2017年6月にスタートしました。農薬散布用のドローンの販売と、パイロットの育成を手掛けています。

ドローンは、第四次産業革命の中核を担うと言われています。2017年末、米ゼネラルモーターズの前副会長ロバート・ボブ・ラッツ氏が次のようなコメントを残しています。「数百年にわたり、人間の主な移動手段は馬だった。そしてここ120年間は自動車だった。そして今、自動車の時代は終わりに近づいている。移動手段は最適化されたモジュールに置き換えられるだろう。最終的には、運転手が指示をする必要のない、完全に自動化されたモジュールになるだろう」。

石原潤一氏(3)

石原さん 2018年10月、トヨタ自動車とソフトバンクが提携に合意し、2019年2月には共同出資会社MONETの事業を開始しました。トヨタ自動車は2018年度に売上高で過去最高利益を出したにもかかわらず、2019年度の役員報酬を引き下げると記者会見で公表しています。その理由は、自動車業界は100年に一度の大変革の時代を迎えており、会社の存続をかけて脇を占めて経営に臨むためだと言います。

すべての移動手段がITの管理下に収まる未来

石原さん MaaS(Movirity as a service)という概念をご存知でしょうか。自動車、バス、電車、ドローンなどすべての交通手段を単なる移動手段ではなく、一つのサービスとして捉え、決済なども含めてシームレスにつながる新しい移動概念のことを指しています。この頂点に、IT企業が位置します。自動車もバスも電車もドローンもIT企業に飲み込まれるということです。すべて電子制御プログラムで、自動で動くようになります。特に活躍すると言われているのがドローンです。

例えば、ドバイでは警察が空飛ぶバイク「Hoverbike(ホバーバイク)」を2020年から実働予定です。この空飛ぶバイクは人が乗車せずに自立飛行させるドローンモードも備えています。近いうちに、空飛ぶバイクが犯人を追跡する光景が見られるでしょう。中国でも、人を乗せて飛ぶドローンが1000回以上テスト飛行を実施しているようです。ドバイの空飛ぶバイクと比べて、中国の人が乗れるドローンの見た目はヘリコプターに近いですが、ヘリコプターとドローンの大きな違いは、自動運転が可能か否かにあります。将来的に、こうしたドローンは無人タクシーの役割を担っていくと考えられています。

石原潤一氏(4)

石原さん ほかにも、欧州の航空宇宙企業エアバスとドイツの高級自動車メーカーのアウディは共同で空飛ぶクルマを開発しています。小型の2人乗り自動運転車とドローンが合体し、用途に合わせて陸と空の両方を移動できるというコンセプトです。イメージ映像の一つでは、乗客カプセルを備えた地上モジュール(自動運転車)に乗り込む際、顔認証でドアのロックが解除され、事前に登録した目的地へオートで向かっています。目的地の駐車場に到着すると同時に空からフライトモジュール(ドローン)がやってきて、乗客カプセルとドッキングします。地上向けモジュール(車輪部分)はここで切り離され、乗客カプセルはフライトモジュールによって待ち合わせ場所まで飛んでいきます。その映像では、なんとゴルフ場のグリーンのど真ん中で待ち合わせしているようです。ドローン技術が実用化されれば、待ち合わせの概念も変わっていくでしょう。エアバスは、2027年に実用化を目指すと言っています。

国内のドローン事例としては、楽天と西友のドローン配送サービスが関心を集めています。神奈川県横須賀市のスーパーから、およそ1.5キロメートル離れた東京湾の無人島の猿島でバーベキューをするひとに、ドローンで食材を届けるというサービスです。実施期間は2019年7月4日から3カ月間の限定運用ですが、将来的には山間部などでのサービスにもつなげたいとしています。送料は1回500円。

500円! 試してみたいですね。山間部などでのサービスが始まれば、過疎化が進む地域でも活躍する機会が増えそうです。石原さんの会社では農薬散布用ドローンを取り扱っているとのことですが、農業用ドローンは現在どのくらい普及しているのでしょうか?

石原さん 関心を持たれる方は少しずつ増えてきていますが、普及率はまだまだ低いです。農業は慢性的な担い手不足など大きな課題がありますが、無人トラクターや無人ドローンといったテクノロジーがこれらを解決すると言われています。

複数の顔を持つと、見える世界は変わる。コナカ×AIコンサルタント【後編】

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