車の修理会社、ロボット科学教室、ドローンのパイロットスクール、紳士服のコナカの顧問、AI(人工知能)コンサルタント――と5つの顔を持つ石原潤一さん。斜陽産業から新興産業まで幅広く複数の事業を展開するに至った経緯や、近い将来に備えた経営の姿勢について伺いました。(聞き手・文=南野胡茶)

バイクレースの資金調達を目的に、在学時に起業

石原潤一氏プロフィール
石原潤一(いしはら・じゅんいち)
1973年埼玉生まれ。1995年車の修理会社ストーンフィールド設立。2011年ソフトバンクアカデミア入学。2016年ユニバーサル・ロジック設立。2017年国際UAVビジネス支援協会設立。2018年、紳士服コナカの顧問就任。

―現在いくつの事業に携わられているのでしょうか?

石原さん 車の修理会社、ロボット科学教室、ドローンのパイロットスクール、紳士服のコナカの顧問、AI(人工知能)コンサルタント――の5つです。最初に立ち上げた車の修理会社(ストーンフィールド)は、大学3年の時に設立しました。大学1年時にオートバイのレースに目覚め、プロレーサーを目指してレース資金調達を目的に立ち上げた会社です。現在はもうレースに参加していませんが、会社は継続しており2019年度で25年目になります。

ストーンフィールドが提供する車の修理技術は”デントリペア”と言って、日本ではあまり知られていない「再塗装をせず、車のへこみを裏から押して修理する」特殊板金技術です。基本的にはB to B(企業間取引)のビジネスモデルで、雹(あられ)が降った街に移動して被災した車の復旧にあたるという、遊牧民のようなスタイルが特徴です。

石原潤一氏(1)

石原さん 例えば2017年7月、東京都23区内から首都圏周辺にかけてゴルフボール大の雹が大量に降り注ぎました。この時に被災した車はおよそ40万台。都内の板金修理業者が一瞬でパンクしてしまう大規模な被害数と言えます。カーディーラーは一店舗当たり200~300台の車をお客様から預かっており、これがすべて被災したということです。カーディーラーは管理者賠償責任保険に加入しているため修理自体は可能ですが、40万台すべての修理が完了するまでに、おそらく2年半は要するでしょう。また、降雹被害を受けた車体の大半は、屋根が凹んでいます。屋根は通常板金塗装できないため屋根交換となりますが、事故車扱いとなってしまいます。事故車扱いになるとカーディーラーから聞かされたお客様はなかなか納得されないでしょう。

このような窮地に私たちは駆けつけます。デントリペア技術を使えば、屋根も裏から突いて直すため、事故車扱いにはなりませんし、通常屋根交換には1台当たり10日要するところを3日で修理できます。需要のある場所、つまり被災地に赴くストーンフィールドは、地元の企業から大歓迎され修理依頼は殺到します。また、遊牧型ビジネスモデルは修理後のサポートを委託する必要があり、該当地域の企業とは必ず提携を組んでいます。具体的には、地元企業の下請けに入ることによって、双方に利益を生み出す仕組みです。全国の業務委託契約は、現在50社を超えています。

息子の通う教室をヒントに2つ目の会社を設立

―車の修理事業から、ロボット教室やドローンのパイロットスクールなど、IT系の事業に乗り出した理由を教えてください。

石原さん 自動車一辺倒だった私に転機が訪れたのは、2011年。ソフトバンク代表取締役会長兼社長の孫正義氏が運営する「ソフトバンクアカデミア」の外部一期生として入学したことです。

ソフトバンクアカデミアとは・・・?
これからのソフトバンクグループを担う後継者発掘・育成を目的とする経営塾。後継者候補として、高い志と資質を持つ入校生を社内外から募集する。開校は2010年7月。定員は300名で、ソフトバンク内部生200名と外部生100名で構成される。毎年成績下位20%は入れ替えられる。設立当初は外部性の枠に約14000人の応募者があり、その中から100名が選考された。

石原さん ソフトバンクアカデミアで「シンギュラリティ(技術的特異点)」「2045年問題」(シンギュラリティとは、人間の知性をAIが超え、加速度的に進化する転換点を指す。その到来が2045年と予想されている)などを学び、自動車産業を待つ未来は決して明るいものではないと思い至りました。これまで運営してきた自動車修理事業とは別にIT系の仕事で収入の柱を作らないと、会社の経営はいずれ危うくなるだろうと危機感を抱いたのです。

石原潤一氏(2)

石原さん しかし、私は文系出身で、自動車以外触れたことはありません。何を始めたらいいのだろうかと悩んでいた時、当時小学3年生だった息子が通っていたロボットのプログラミング教室がフランチャイズを募集していたので、どうせなら親として自分で子供に教育を与えたいと思い、2016年4月にスタートしたのが2社目のユニバーサル・ロジック(ロボット科学教育 crefusふじみ野校)です。

このロボットのプログラミング教室「クレファス」は、世界最大規模のロボットコンテストFLL(First®LEGO®League)に初年度から参加し、毎年代表チームを輩出しています。米NPO法人FIRSTと、プラスチック製の凹凸ブロックでおなじみのデンマーク玩具会社のレゴ社によって、子どもたちの科学教育プログラムを目的に1998年にスタートしたFLLは、日本では2004年から開催されています。出場者の対象年齢は9歳~16歳で、世界88カ国から3万2000チーム(1チーム5名の計24万人)が参加しています。同コンテストは、自立型ロボットの競技2分30秒の配点が500点、プレゼンテーションの配点が500点の、計1000点で構成されます。つまり、ロボット競技だけでなく、プレゼンテーションスキルが勝敗を大きく左右するということです。

私が「クレファス」に惚れ込んだ最大の理由は、子どもたちが大人になった時に一番求められるであろうプレゼンテーションスキルを重要視しているところです。子どもたちが将来研究者や開発者になったとしても、きちんとしたプレゼンテーションができなければ研究費も開発費もおりず、自分がやりたい研究はできません。営業職も同様に、商品をきちんと説明できなければ売り上げにつながることはないでしょう。こうした能力を鍛える場であるクレファスは、子ども向けのビジネススクールという側面も持っていると言えます。

複数の顔を持つと、見える世界は変わる。コナカ×AIコンサルタント【中編】