5月25日の日本経済新聞朝刊で、米国リート指数が低迷しているとの記事がありました。長期金利(期間10年の国債の利回り)の上昇で債券の魅力が増し、リート(REIT)から債券へ資金がシフトしたことが主な要因のようです。今回は、一般的なリートの仕組みや特徴、価格の変動要因、米国リートの状況などについてみていきます。

  • リートは現物の不動産投資より少ない資金で投資でき、売買もしやすい
  • リートの価格に影響を与える要因は、内部要因と外部要因の2つ
  • 米国リート指数の低迷は外部要因か。内部要因に問題なければ投資のチャンスかも

リートは現物不動産より少ない資金で売買しやすい

リート(REIT:不動産投資信託)は、多くの投資家から集めた資金や金融機関からの融資、社債の発行で得た資金で賃貸物件を購入し、その賃料収入(家賃)や物件を売却した時の利益を投資家に分配する仕組みの投資商品です。リートの価格自体も上下しますので、値上がり益を期待することもできます。

現物の不動産投資と比較しますと、少ない資金(個別リートで1口数十万円~数万円程度)で投資を行うことが可能な点と株式と同じように上場されているので、売買しやすく流動性の高い点がリートの魅力として挙げられます。ただし、現物不動産のようにローンを活用した投資ができないので節税の方法としては利用できません。

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物流倉庫を保有するリートが増えている

リートが保有する物件は、従来はオフィスビルやショッピングセンターなどの商業施設、賃貸マンションなどが多かったのですが、最近はネットショッピングなどEコマース利用の拡大により、物流倉庫の保有が増えています

個別リートの場合は、オフィスビルに特化したもの、商業施設に特化したものなど、カテゴリーを決めて運用するものと、複数のカテゴリーに投資するものがあります。

複数のカテゴリーに投資をしたい場合は、複数リートに投資をする投資信託(リートファンドと呼ばれます)も選択肢になります。投信信託の場合は、物件のカテゴリーではなく、米国、世界など地域の違いによってファンドを選ぶこともできます。また投資信託の場合は、投資金額を1万円以下に抑えることもでき、個別リートよりも少ない資金で投資を行うことも可能です。

物流倉庫最近では物流倉庫を保有しているリートも多い(写真はイメージです)

利回り重視の投資商品のため、債券と比較されやすい

リートは債券と株式の中間に位置づけられる金融商品です。

賃料収入が利益の主な原資になるため、リートの分配金は株式の配当に比べて安定性が高いとされています。また、リートは利益の90%以上を分配に回すことで法人税が免除される(リート税制)制度になっていますので、株式の配当に比べて高い分配金利回りが期待できます

値上がり益も期待できるリートですが、基本的には利回りを重視した投資商品になります。ですから、債券(期間10年の国債)の利回りと比較しながら投資が検討されます。国により債券との利回り格差(イールドスプレッド)にばらつきがありますが、長期金利よりおおむね2~4%高い分配金利回りを期待して投資が行われています。仮に長期金利が1%の場合は、リートに対して期待される分配金利回りは3~5%になります。

リートの価格に影響を与える内部要因と外部要因

リートの価格に影響を与える要因は、賃料や空室率といった内部要因と、景気や金利が影響する外部要因の2種類があります。

リートの価格に影響を与える要因
内部要因 賃料 賃料の上昇はプラスに作用。下落はマイナスに作用。
空室率 空室率の上昇はマイナスに作用。低下はプラスに作用。
外部要因 景気 好景気はプラスに作用。不景気はマイナスに作用。
長期金利 低金利はプラスに作用。高金利はマイナスに作用。

リートの収益は、賃料と空室率に影響されます。賃料が上昇すればリートの収益も増え、分配金も増えることが期待でき、リート価格の上昇要因になります。逆に賃料が下落すると賃料収入が減り分配金が少なくなるため、リート価格の下落要因となります。また、空室率が高くなるとその分物件全体の賃料収入が減りますので、こちらもリート価格の下落要因となります。以上が主な内部要因になります。

外部要因の主なものが景気や金利の動向になります。景気が良い時や金利の低い時、投資家は株式やリートなど値上がりが期待できる金融商品の配分比率を上げた運用を行います。逆に景気が悪い、今後の景気の状況が不透明な時や金利が高い(高くなる)時には株式やリートに比べて安全性が高い(利子の金額に変動がなく額面金額で償還される)債券の配分比率を引き上げます。

米国リートは割安な水準にあるかも

今回の米国リート指数の低迷は、FRBのFF金利(政策金利)の引き上げにより、長期金利が3.0%前後と、足元の米国リートの分配金利回りと同程度まで上昇したことが大きな要因として考えられています。

空室率の悪化や賃料の下落が見られないのであれば、米国リートは割安な水準にあるのかもしれません。

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