株式、個人向け国債、投資信託と同じように、個人の方なら誰でも手軽に買える金融商品がJリート(J-REIT、日本版不動産投資信託)です。本連載では、Jリートの特徴や魅力、活用法についてやさしく解説します。

  • J-REITは、不動産の賃料や売却益から経費を除いたお金を配当している。
  • 複数の不動産を持ってリスクを分散。保有する不動産の国や地域も様々。
  • J-REITは株式に比べて、配当が安定している。

第1回 Jリートは資産運用初心者におススメの金融商品

Jリートは株式と同じく「配当」と「売買差益」を狙える

初回では、Jリートは株式と同じように金融商品であること、その特徴について述べましたが、今回は「Jリートとは不動産を投資対象とした金融商品」であること、その仕組みを見ていきたいと思います。

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投資家が株式に投資するのは、投資すれば利益が期待できるからです。株式投資における利益は主に2種類あります。ひとつは、株式を持っている人に定期的(多くは年1回)に分配される「配当」。もうひとつは「売買差益」です。株式を売る時に購入時より価格が上がっていれば、その差益を得て資産を増やすことができます。

Jリートも株式と同様に「配当」と「売買差益」が期待できますが、その細かい中身は株式とは異なります。何がどのように違うのか、Jリートの仕組みを見ていくことで理解を深めていきましょう。

身近なマンションや会社もJリートの物件かも?

【図表1】Jリートのお金の流れ
Jリートのお金の流れ

皆さんがJリートを購入したお金を使って、「Jリートの会社=不動産投資法人」は複数のビルやマンションを購入して賃貸運営をします。そして入居者から受け取る賃料や、不動産を売却した時の利益から運営経費を差し引いたお金を、皆さんに配当します。

トラリピインタビュー

株式会社の場合は様々な事業を行う会社がありますが、Jリートは不動産賃貸業を営む会社しかありません。ただし、Jリートが購入する不動産の種類はオフィスビル、商業施設、賃貸マンション、物流倉庫、ホテル、老人ホームや病院など様々です。また、一つのJリートの会社が持つ不動産は数十棟から百棟以上に上り、全Jリートが保有する不動産の数は今や4,000棟を越えています。皆さんがお住まいになっている賃貸マンションや、お勤めになっている会社のビル、よく買い物をするショッピングセンターも、Jリートの会社が持っているかもしれません。試しにビルの名前とリートと入れてサイトを検索してみてはいかがでしょうか?

複数の不動産を保有してリスクを分散

Jリートは1社(=1銘柄)で数多くの不動産を持つことで収入の安定を図っています。例えば一般的なマンション投資の場合、入居者が退去すれば賃料収入が減り、万が一火災や震災にあった場合には収入がゼロになってしまいます。これに対し、Jリートではたとえ1件の不動産で災害などが発生しても、Jリート全体ではその影響は比較的小さく、配当が大きく減ることはありません。多くのJリートが全国津々浦々の不動産に投資しており、中には海外の不動産を持っているJリートの会社もあります。保有する不動産の地域を分散させることによって、災害などのリスクが分散されているのです。

お金と時間とノウハウがある方は、マンション投資も選択肢としてあるとは思いますが、投資初心者の方にとってマンション投資はかなりハードルが高いものです。そんな初心者の方でも手軽に投資できて、なおかつ収益が安定的な傾向があるJリートは、投資初心者の資産運用にとって有効な手段であるといえます。さらに、Jリートが購入する不動産は「六本木ヒルズ森タワー」など評価額が1千億円を超えるような、個人ではとても買えない大規模かつ高性能な優良不動産が多く、この点もJリートならではの魅力です。

Jリートの配当はなぜ変動が少ないのか?

ところで、第1回ではJリートの配当が安定して比較的高いことに触れました。実は、Jリートにはもう1つ大きな特徴として、株式と比べて配当が安定しているという傾向があります。なぜ、Jリートの配当は変動が少ないのでしょうか? 全国の多くの不動産を保有していることなど、Jリート自身の投資の分散効果に加えて、以下のような理由が挙げられます。

株式会社の場合、事業から得られる利益は、まず本業の売上げ推移によって変わります。売上は国内景気に影響されますし、原材料や製品などの輸出入を行っている会社であれば、国際情勢にも左右されるなど、企業の利益には変動要因が非常に多くあります。これに対し、不動産賃貸業の収入を決めるのは賃料と稼働率(建物賃貸スペースのうち、入居者が埋まっている面積割合)だけです。

下図に示すように、賃料と稼働率の推移が比較的なだらかなため、結果的にJリートの収入は安定しています。そして、この収入がJリートを購入した人への配当原資となり、100%配当されることで、株式会社が発行する株式に比べて、Jリートは利回りの高い配当が長期間にわたり安定しやすいのです。

【図表2】Jリートが保有する不動産の賃料水準と稼働率の平均

Jリートが保有する不動産の賃料水準の平均Jリートが保有する不動産の稼働率の平均

期間:2006年1月~2018年10月
出所:公表資料よりARES作成

では、次回は「Jリート」の買い方を見ていきましょう。

(次回は11月5日の更新を予定しています)

Jリートをもっと知りたい方は → 初めてのJリート(不動産証券化協会)
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