宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も、前回までに引き続き「投資信託の選び方」について考えていきます。たくさんある投資信託の中から、自分に合った投資信託を選ぶポイントは「リスク」です。

膨大なラインナップから投資信託を選ぶには

前回は、投資初心者の方が資産運用を始めるにあたって、「投資信託」をベースにして、投資の第一歩となる投資信託の選び方の手順を話してきました。資産運用に限らず、「初めて」は何事も不安が付き物です。この「不安」を少しでも「安心」へと変えるために、前回の記事では「3つの手順」を提案したのですが、どうしても入り口としての大まかな提案になってしまいます。

そこで今回は、投資信託の選び方について、より詳しいアドバイスをしていきたいと思います。
「私はギリギリの生活だから……」
「今は問題ないけど、後の生活はわからん」
など、さまざまな不安や心配を抱えている方が「投資のリスク」をどう考えるべきかまで踏み込んで、投資信託を選ぶ手法に関する私の考え方を紹介していきます。

水への投資 世界的に不可欠な資源への投資機会 BNPパリバ・アセットマネジメント

私のもとには、以下のような質問がよく寄せられます。

【質問】
投資信託を金融機関経由で勧められ、どうするか検討中です。だけど投信のラインナップを見てもいろいろありすぎてわからんし、損をしない“安全パイ”を考えると、どの商品がいいのか? 金融機関担当者のお勧めの商品が一番いいのでしょうか?

銀行や信用金庫、証券会社などの金融機関では、投資信託のラインナップとして商品一覧表が用意されています。
確かに、1つの銀行で100本以上の投資信託を取り扱っていることもありますから、その中から選ぶのは難しいですよね。金融機関に勧められるままに選ぶ気持ちもわかります。でも、勧められた商品が本当に自分に合っているかどうかは、自分自身にしかわかりません。

基本的には、前回の手順に沿って商品を選んでいくことになります。

投資信託を選ぶ3つの手順

① マネー情報誌の投資信託ランキングから、国内で運用している投資信託を探す
② 運用期間が長い投資信託を探す。できれば10年以上
③ 運用報告書で組み入れ資産の内容を確認する

投資において、いちばん怖いのはお金が減ってしまうことです。できることなら誰しも“安全パイ”の商品を選びたいですよね。しかし、実際の投資信託には「リスク」があります。一時的に値下がりしてしまう可能性を、ある程度は受け入れなければならないのです。

したがって、投資信託を選ぶうえでは、自分自身の「ここまで損してもあきらめられる範囲」を決める手順を知っておくといいと思います。
例えば、100万円のお金を5年間投資して、

① 100万円のお金が、5年後に50万円になる。
② 100万円のお金が、5年後に80万円になる。
③ 100万円のお金が、5年後も100万円とほぼ変わらない。

というように、3つくらいのリスクパターンを決めて、投資信託のリスク度合いにあてはめていくのです。
このリスク度を、商品を選ぶ際に考えていけばいいのです。

リスク度合いとレーティングをマッチング

投資信託には「レーティング」という指標が設定されています。金融機関によっては「リスクレベル」という言葉が使われることもあります。
リスクが低い、つまり価格変動が小さい順から❶から❺までの数字、または星(★)の数で表されます。数字や星が大きい(多い)ほど、価格変動が大きくなる傾向が強いことになります。

レーティング
(リスクレベル)
値動きの
大きさ
期待される
リターン
➎ ★★★★★ かなり大きい かなり高い
➍ ★★★★ 大きい 高い
➌ ★★★ 中程度 中程度
➋ ★★ 小さい 少なめ
➊ ★ かなり小さい わずか

レーティングは、専門の評価会社が各社の基準で決めています。レーティングについて詳しく知りたい方は、金融機関や資産運用会社に問い合わせてみるといいでしょう。

このレーティングと、先ほどの3つのリスクをマッチングさせていきます。
①のように5年後のお金が半分でも大丈夫と思える方は、レーティングが➍や➎の投資信託を選びます。投資対象は国内株式や外国株式、外国REIT、あるいは新興国の株式があてはまるでしょうか。確かに5年後には資産が半分になってしまうかもしれませんが、10年後には大きく増やせることが期待できるのも➍や➎の投資信託の魅力です。

逆に、③のようにお金が減ったら困ると考えた方は、レーティングが➊➋くらいの投資信託を選んでいきます。投資対象は国内債券などが考えられます。安全性を重視した、預金より少し高いくらいの利益を目指す場合はこの選択肢になります。

その中間である②の方は、レーティングが➋~➌の投信を選びます。あてはまる商品群は、株式や債券など複数の資産を投資対象とする、「バランス型」といわれる投資信託が多いと思われます。

ただ、日本国内で運用されている個人向けの投資信託だけでも6000本を超えます。上記でも少し紹介しているように、投信の中身もいろいろです。海外を含む債券、不動産、株式、はたまた為替など、選びたくてもたくさんありすぎて困惑してしまいます。

そこで次のステップとして、投資信託を絞り込むための手法について話をしていきます。

インデックス運用か、アクティブ運用か

投資信託の運用方法は、大まかに2つに区別することができます。

インデックス運用―市場平均への連動を目指す

1つ目は「インデックス運用」です。これは、例えば日本株式で運用する投資信託であれば、東京証券取引所第1部市場に上場している株式の平均値(東証株価指数、TOPIX)や、あるいは日経平均株価のような株価指数と同じ値動きをするように運用する方法です。
「インデックス投資信託(ファンド)」は、あらかじめ決められた指数(ベンチマーク)と同じ値動きをするように運用します。テレビのニュースなどで「今日の日経平均株価の終値は2万○○○○円でした」というのを聞いたことがあるかと思いますが、この日経平均株価がインデックスファンドのベンチマークとなっており、また株式市場全体の傾向を表す指標としても使われます。
米国株式では「ニューヨークダウ」「S&P500指数」がこれにあたります。株価だけでなく、債券や不動産、金などの商品先物のインデックスもあります。

インデックスファンドは、運用コストも比較的低いものが多い点も魅力になっています。

アクティブ運用―市場平均を上回ることを目指す

2つ目は、インデックス運用とは対照的に、運用会社が独自に株式などを運用して、日経平均株価などの市場平均を上回る運用成績を目指す「アクティブ運用」です。
よく耳にする「カリスマ性のあるファンドマネージャー」が運用する投資信託の多くも、この「アクティブ型」に含まれます。
その他、ロボットやAI(人工知能)など旬のテーマに沿って投資するタイプのアクティブ型が、最近は人気を集めているようです。

投資信託の価格が株価指数などに連動するインデックス運用と違い、アクティブ運用はファンドマネージャーの手腕で運用するものが大半で、その投資手法は商品によってさまざまですが、多くのファンドマネージャーは目先の経済でなく、未来の経済動向を踏まえた運用を行っているように思います。
株式のアクティブ運用はレーティングも➍、➎が中心になり、値動きは大きめです。ただし、商品の中には、同じ株式投資でも値動きを極力抑えるようなアクティブ運用を行うものもあり、アクティブ型が一概にリスクが高いというわけではありません。

インデックス型と違って、運用報告書ではファンドマネージャーの独自の見解や、株式などの個別銘柄をどのように組み入れているかという状況も事細かに説明しているので、資産運用が初めての方にとっては、投資を考えるときの参考になります。運用コストは少し高めになりますが、私自身も運用報告書が楽しみなので、アクティブ型の投資信託を買って、報告書を参考にしています。
リスクをいくらか取ってもいいと思う方は、アクティブ型の投資信託は選択肢の1つになるかと思います。

どうでしょうか? ここまでのお話で、かなり投資信託の商品が絞り込めたのではないかと思います。
これで、金融機関で商品を勧められてもあたふたすることなく、自分自身のリスクと向き合いながら、自分に合った投資信託を選べるのではないでしょうか。

次回は、投資信託の活用についてより詳しく考えていきましょう。

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