学校の性教育に蝕む「歯止め規定」。大人が思うより、子どもは子どもじゃない

性的合意やセックスレスの問題は、そもそも学校や家庭における教育が根底にありそうです。実際、今の学校での性教育はどのようなものなんでしょうか?

シオリーヌ 実は各学校でかなりバラツキがあるんですよ。
どのくらい性教育に重きを置いているか、またはどのくらい時間を割いているかは、個々の先生の裁量次第なんです。

正直、かなり手厚く充実した教育をしている学校もあれば、必要最低限のことにほんの少し触れただけという学校もあるのが現状ですね……。

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なるほど。では、国が定める学習指導要領ではどうなっているんでしょうか? 最低限どの段階で何を教えなければならないのか、そのルールが気になります。

シオリーヌ 公立の小学校では、身体と心が変化してくる第二次性徴について教えることになっています。
女性の皆さんは覚えがあると思うんですが、生理が来たときの対処法も含まれますね。
大抵、林間学校とか修学旅行とかの前に先生が生徒を集めて説明するという……。

懐かしいです! 突然、女子だけ残るよう先生に言われるんですよね。

シオリーヌ 最近は男の子も一緒の場合も増えてきましたよ。
まあ、これもまだ学校によりけりなんですけどね。

あと、これは指導要領に入っているわけではないんですが……。
小学校で教わる性教育には、人権教育も含まれるんです。
セクシャルマイノリティーの話だとか性差別をしないという所まで踏み込んだ話をする学校もあります。

シオリーヌ

なるほど……。人権教育は義務ではないんですね。

シオリーヌ そうなんです。
それだけでなく、義務である第二次性徴についても、基本的に生理だけの学校が多いんですよね。
なぜか射精や精通については扱わないれないことが多い印象です。

大抵、教科書に少しだけ書いてある程度だった記憶があります。
本来は生理と同じくらい重きを置いて伝えられるべきですよね。
さて、中学生になると、今度は何を教わるんでしょうか?

シオリーヌ エイズなど性感染症に関することを教えることになっています。
あとは、妊娠・出産についてはほんの少しだけ触れる程度ですね。

というのも、実は「歯止め規定」と呼ばれる規定がありまして、それが原因で妊娠に至る経過については取り扱わないことになっているからなんです。

つまり、話はこんな風に急に始まるわけです。
「精子と卵子が出会って受精します。そして……」

「え? どうやって出会うの?」って、疑問に思うのが普通ですよね。
でも先生はそこには触れられないことになっているんです。

え!? でも、中学生にもなればみんな知ってますよね? それについて持ち切りくらいのテーマだと思うんです。

シオリーヌ ええ。当然知ってるんですよ。
アダルトビデオも年齢制限があると言えど、いくらでもアクセスできる術はありますしね。

そうなんですが先程言った「歯止め規定」のせいで、性行為や避妊、中絶についての具体的な内容を扱うことができないんです……。
つまり、実態とかけ離れているものの、国からは「中学生にはまだ早い」とみなされているということですよね。

まあ、学習指導要領は超えてはならないというわけではないんですよね。
必要最低限教える規定を示しているだけであって。

とはいえ、学校の実情を見てみると、指導要領を超えて教えている先生がいると、保護者からクレームが来たり、「過激な性教育だ!」と思わぬ外部からバッシングを受けたりなどが実際に起きています。
ですから、指導要領を超えることは、学校にとってハードルもリスクも高いんです。

高校に入ればようやく一歩踏み出した教育になっているんでしょうか?

シオリーヌ やっと避妊や中絶の話が具体的に話すことができます。
保健の教科書にも若干ですが触れられているんですよ。

とはいえ、担当する先生がどのぐらい性教育を重視しているかによりますね……。

充実しているところは、看護師さんや助産師さんなど外部講師を呼んで、講義をしてもらうというカリキュラムもあったりしますよ。
先生の裁量に任されているので、受けられる教育が平等でないという点は深刻な問題だと痛切に感じています。

コンドームの装着方法など実践的なことは教えてもらえるのでしょうか?

シオリーヌ 教えないことがほとんどですね……。
ちゃんと教えるところも勿論ありますが。

性教育って実は、国際基準があるんですよ。
WHOやユニセフなどの国際機関が集結して作られた、『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』というものが存在します。

そのガイダンスについて「中学生の時期には正しい避妊方法が理解できる」という目標が定められているんですね。
そのガイダンスに基づく性教育をきちんと行っている国では、中学生でコンドームの装着を練習させたりなんてことも。当たり前にやりますね。
特にスウェーデンやオランダなどではカリキュラムにきちんと盛り込まれていることも多いです。

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