当初5月6日までとされていた緊急事態宣言は、5月31日まで延長されることになりました。地域によっては社会・経済活動の一部が再開されるものの、まだまだ予断を許さない状況が続いています。日経平均株価は、ゴールデンウィーク前に一時2万円を超えたものの再び反落するなど、いまだ不安定な動きをしています。そんな中で投資家は現状をどのようにとらえ、行動すべきでしょうか。アセットマネジメントOneの伊藤雅子さんにお話をうかがいました。

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伊藤 雅子さん

アセットマネジメントOne
投資信託プロモーショングループ長
伊藤 雅子さん
2003年興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)入社。外為マーケット経験を生かし、専門的な話をわかりやすく伝えることを第一に、投資信託の普及に努めている。営業員向け研修や一般投資家向けセミナーなど講演経験多数。近著に『マンガでわかる 必ず伝わる!投信提案』(近代セールス社)。

投資の成功を阻む最大の壁は「感情」

Q.「解約が増えている」「むしろ資金流入が増えている」など、今回の調整局面で貴社ファンドはどのような影響を受けていますか。

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2月下旬以降多くの資産価格が急落する中では国内外の株式ファンドへの資金流入が目立ちましたが、4月に入り株式市場の戻りを見てからは様子見姿勢が強まっているようです。

一方、一貫して資金流入が続いているのが、当社の主力運用戦略を使ったバランス型ファンドです。特に『投資のソムリエ』は3月の月間騰落率でプラスを維持したこともあり、お問い合わせが増えています。

Q. 販売会社や個人投資家から増えている質問はありますか。

「マーケット全般の見通し」と「各ファンドの見通し」に二分されます。

今回のコロナショックはその原因が誰の目にも明らかなので、「なぜこんなに下がったのか」と現状を問う質問は少なめです。その分、先々を見通す手がかりが欲しい、特に今自分が「売るか、買うか、持ち続けるか」を判断するための客観的なデータや材料を知りたいというニーズを強く感じます。

市場環境や各ファンドの運用状況などは、弊社ホームページに随時掲載しておりますので、ぜひご活用ください。

Q. こうした局面で個人投資家がやってしまいがちなミスや、やってはいけない行動には何がありますか?

投資の成功を阻む最大の壁は、人間の感情だと言われています。値下がりの恐怖心から慌てて売ってしまう、値下がりはチャンスと冒険心から勢いで一気買いしてしまう……。“なんとなく”相場の雰囲気に流されて、感情のままに行動してしまうと、その後の相場が逆に動いた時に耐えられなくなり、損をして、“なんとなく”投資をやめてしまうことになりがちです。

積立は投資の最大の武器である時間を活用する仕組み

Q. 個人投資家は現状にどう向き合い、どのような行動をとるべきでしょうか?

まず“なんとなく”から脱出していただきたいと思います。そのためには、いつまでにいくら欲しいのかという投資のゴールを、ざっくりとでいいのでイメージできていることが大前提です。

「いつまでにいくら」の目標が明確になれば、それ以上無理に稼ぐ必要はなくなります。目先の市場の動きを追うことよりも、「預金を含めた資産全体で、年何%程度のリターンを上げられれば自分の目標に達するのか」という運用のモノサシが大事になります。運用のモノサシがあれば、投資行動の選択に迷った場合にも、なんとなくではなく意味を持って、売るか買うか持ち続けるかを決断できるようになります。

Q. こうした局面だからこそ見直したい、投資信託のメリットは何ですか?

今や、誰もが世界中のニュースに瞬時にアクセスできる、情報の溢れる時代です。しかし、その情報を分析して運用で勝つことがいかに難しいかを、今回のコロナショックは改めて教えてくれました。

資産運用の手段は投資信託とは限りません。それでも投資信託ならば、個人が自分ひとりではできない様々なことが実現可能になります。直接投資することが難しい投資対象にもアクセスできます。限られた資金量でも十分な分散が図れます。多くの時間と労力をマーケットチェックに割かずに済みます。投資信託が、個人の資産運用において合理的かつ効率的な仕組みであるという点を、今こそ実感いただきたいと思います。

Q. 最後に個人投資家にメッセージをお願いします。

個人投資家には、プロの投資家にはない武器があります。それは「時間」です。私たちの年金を運用する年金基金などの機関投資家は、四半期や年度などの決算時に運用成果を問われますが、個人投資家に決算はありません。10年先、20年先に目標を定めて、純粋に長期投資に取り組むことができます。

そして、投資の最大の壁である「感情」を自動的に排除し、最大の武器である「時間」を継続的に活用する仕組みこそが「積立」です。投資信託では制度利用も含めて積立の活用もできます。今のタイミングを、ぜひ冷静に前向きに、投資を見つめなおす機会にしていただけたらと思います。

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