2020年2月中旬に起きた“コロナショック”をものともせず、良好な成績を収める投資信託を紹介する本シリーズ。第4回は、明治安田アセットマネジメントの『新成長株ファンド(愛称:グローイング・カバーズ)』(以下、『グローイング・カバーズ』)を取り上げます。

4月の騰落率は+15.86%、ショックから急回復

『グローイング・カバーズ』は、日本の「新成長銘柄」に投資する投資信託です。新成長銘柄とは、明治安田アセットマネジメントのホームページでは「高い成長余力を有しているものの、経営上の課題・困難に直面したため本来の実力を発揮できなかった企業の中で、それらの経営障壁を克服しつつある企業」と説明されています。すごく簡単に言うと、成長が止まっていたけれどこれからまた伸びそうな企業ということですね。

基準価額の推移を見てみましょう。

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『グローイング・カバーズ』の分配金再投資基準価額の推移
『グローイング・カバーズ』の分配金再投資基準価額の推移

1カ月騰落率 6カ月騰落率 3年騰落率
グローイング・カバーズ +15.86% -3.86% +10.95%
明治安田TOPIXオープン +4.24% -10.98% +0.31%

2020年4月末現在

2020年2月中旬以降、コロナショックの影響で大きく下げていますが、その後急速に回復し、ショック前の水準の近くまで戻ってきています。

東証一部上場の全銘柄を対象とする「TOPIX(東証株価指数)」に連動する『明治安田TOPIXオープン』と比べると、成績の良さがよくわかります。コロナショックのダメージが大きい6カ月騰落率は『グローイング・カバーズ』も-3.86%ですが、『明治安田TOPIXオープン』はもっと下がって-10.98%。1カ月騰落率(4月の騰落率)は『グローイング・カバーズ』が+15.86%となっており、TOPIXを大きく上回る上昇を見せています。少し長い目で見た3年騰落率でも『グローイング・カバーズ』が市場平均より好成績であることがうかがえます。

投資対象のすそ野が広く、銘柄を選ぶ力がモノを言う

「コロナに負けない実力派投信!①」で紹介した『iFreeActive ゲーム&eスポーツ』とは違い、『グローイング・カバーズ』は特定のテーマやセクターに絞った投資信託ではありません。業界のトレンドなどに左右されない一方で、投資対象のすそ野が広く、銘柄を選ぶ力がより試されるファンドと言えます。

トラリピインタビュー

どのような銘柄に投資しているのか、組み入れ上位10銘柄を見てみましょう。

組み入れ上位10銘柄

銘柄名 業種
1 レーザーテック 電気機器
2 ローツェ 機械
3 ジャパンマテリアル サービス業
4 エスプール サービス業
5 MonotaRO 小売業
6 メディアドゥホールディングス 情報・通信業
7 日本M&Aセンター サービス業
8 エムスリー サービス業
9 デジタルアーツ 情報・通信業
10 NITTOKU 機械

2020年4月30日現在

1位のレーザーテックは半導体検査・計測装置を主力とし、2位のローツェは半導体や液晶の製造工程に欠かせない搬送装置を提供しています。4位のエスプールは人材派遣などを手掛ける会社です。

あまり身近とは言いにくい会社が並ぶ中で、組み入れ5位のMonotaRO(モノタロウ)をご存知の人は多いかもしれません。「モノづくりのAmazon」とも呼ばれるモノタロウは、工具通販サイトを運営しています。工具や梱包用品、部品など“働く現場”で使われる商品をたくさん売っており、取扱点数はなんと1800万点。コロナショックの影響は少なく、2020年5月11日には上場来高値を更新する3810円をつけています。

また、組み入れ7位の日本M&Aセンターは、中堅中小企業のM&A仲介で最大手の会社です。近年、経営者の高齢化や後継者不在といった、いわゆる事業承継問題が日本の課題になっています。経営をだれにも託せず、黒字なのに会社を畳まざるを得ないケースも少なくないようです。M&Aはそうした問題を解決する手段としても注目されており、成長が期待できる業態と考えられます。コロナショックにより株価が下がりましたが、足元では上場来高値の4000円台に迫るところまで回復してきています。

筆者は4年ほど前に代表取締役社長の三宅卓氏に取材させていただいたことがあります。物腰が柔らかく、丁寧にお話される方で、「今後は海外M&A支援サービスにも一層注力していきます」と意気込んでいたのが印象に残っています。実際に、2019年10月にインドネシア駐在員事務所、2020年2月にベトナム現地法人を開設しており、特にニーズが強い東南アジアへの対応を進めているようです。

トップとの直接面談を徹底し、成長企業を厳選

『グローイング・カバーズ』の運用でも、経営者と直接面談の機会を持つことを重視しています。投資助言を行うエンジェルジャパン・アセットマネジメントは、年間約1000社もの面談を行うとのこと。さらに、投資している会社とは定期的に機会を設け、中長期的な経営方針や目標がブレていないかを確認しているそうです。

経営哲学やビジネスモデル、経営課題などをヒアリングし、トップの考えを常に把握しておく。それが新たな成長への転換点を見極めることにつながります。株式市場はいい局面もあれば、今回のコロナショックのような悪い局面もあります。どんなときも特別なことはせず、変わらずに企業調査を重ねることが好成績の原動力になっているのでしょう。

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