元始、投資信託はアクティブであった……。市場平均への連動を目指すインデックスファンドが全盛の今、人の手で投資先を選ぶアクティブファンドにあえて注目する短期集中連載。第1回は、アクティブファンドの運用の仕組みや特徴について解説します。
株式投資の原則は「いかに良い企業を見つけるか」
いわゆるアクティブファンドをめぐって、さまざまな言説が飛び交っています。「個人の資産運用にアクティブファンドはいらない」とまで言い切る人もいます。
もちろん考え方は人それぞれですが、実際に投資するかどうかを判断するのは、アクティブファンドのことを知ってからでも遅くありません。
アクティブファンドの話をする前に、「そもそも投資って何だろう?」という投資の原点に立ち返ってみたいと思います。
皆さまが今から株式に投資するとしたら、どのような基準で銘柄を選ぶでしょうか?
・「将来、株価が上がりそう」=業績が上がる企業
・「毎年安定した配当をもらえそう」=安定した業績が続く企業
いろいろな基準が考えられますが、突き詰めれば、この2つのいずれかに行き着くと思います。
「将来、株価が下がりそうな銘柄=業績が下がる企業」をあえて選ぶ方は少ないでしょう。「今は一時的に業績が悪く、株価が下がっているけれど、業績が回復すれば株価も上がるはずなので、株価が安いうちに買っておく」という考え方もありますが、それはあくまで「将来、株価が上がりそう」という期待があってこそ。
業績が上向く見込みがなさそうな企業の株式は、誰も買いたいとは思いません。
したがって、株式投資でお金を増やしたいと思えば、いかに「業績が上がる企業」や「安定した業績が続く企業」を見つけられるか、そこにかかっているのです。
でも、実際にそうした企業を見つけ出すことは簡単ではありません。今は業績が良い企業でも、ライバル企業に先を越されてしまったり、商品やサービスが時代の流れに取り残されてしまったりして業績が落ち、株価が下がってしまうことはよくあります。
どの企業の業績が上がりそうか、あるいは下がりそうかを見極めるためには、業界のトレンドを常にチェックし、商品やサービスなど各企業の動向に注目し、経営者の理念を知り、決算書などの企業業績に目を通すなどして、それぞれの株価や配当の先行きを予測する必要があります。
企業の動向や株価の値動きを常にチェックし続けるのは、一般の人にとっては難しいもの
こんなたいへんなことを、投資を始めたばかりの人がひとりでやるのは難しいですよね。
投資に慣れないうちは雰囲気で株を買って、上がるか下がるかは運次第、というのが普通だと思います。
市場平均を上回り続ける投資信託もある
投資において最も重要で、なおかつ最も難しい銘柄選択を、個人に代わって専門の業者が行う仕組みの金融商品が、「アクティブファンド」と呼ばれる投資信託です。
この「アクティブファンド」という言葉は、「インデックスファンド」と対比するために使われます。
インデックスファンドとは、日経平均株価のような市場平均に価格が連動するように作られた投資信託のことです。
アクティブファンドとインデックスファンドの仕組みの違いは以下のとおりです。
アクティブファンド | インデックスファンド | |
---|---|---|
どうやって 運用するか |
投資する対象(株式、債券など)を人の手で選ぶ | 市場平均への連動を目指して運用するため、投資する対象はあらかじめ決まっている(選別を行わない) |
値動きの 傾向 |
市場平均(日経平均株価など)と異なる値動き。市場平均を上回ることも、下回ることもある | 市場平均とほとんど同じ値動き |
運用コスト (信託報酬) |
高い傾向 | 低い傾向 |
アクティブファンドのみに期待できる点を挙げてみましょう。
・日経平均株価は下がることもあるけれど、アクティブファンドは日経平均が下がる場面でも価格が上がるかもしれない。
・日経平均株価に採用されている225社の中には、今後業績が悪化する企業が何社か含まれているかもしれないけれど、アクティブファンドなら業績が悪化する企業に投資せずにすむかもしれない。
いずれも「……かもしれない」というあいまいな言い方になっているところがポイントです。
というのも、アクティブファンドの中には「日経平均が下がる場面で、それ以上に価格が下がってしまう」「業績が悪化する企業ばかりを選んでしまう」という失敗例もあるからです。
アクティブファンドにおいて、投資対象となる株式などを選別するのは、資産運用会社で働くプロの投資家です。アクティブファンドがどれだけ利益を上げられるかは、プロの「目利き」にかかっています。
しかし実際には、成功しているプロと、そうでないプロがいるのが現実です。アクティブファンドの中には、市場平均を下回る成績しか挙げられないものも少なくありません。
一方で、長年にわたって市場平均に勝ち続け、ロングセラーとなっているアクティブファンドもあります。
次回は、アクティブファンドの特徴をさらに詳しく掘り下げていくとともに、アクティブファンドを語るうえで避けては通れない信託報酬(運用管理費用)について考えていきたいと思います。