公的年金制度には、65歳以降に受け取れる老齢年金のほかに、現役世代のセーフティネットとなる「障害年金」や「遺族年金」が用意されています。なかでも今回は、障害年金の基本的な仕組みや受け取れる金額、給付の条件について解説。公的年金の基本的な仕組みについては、「知っておきたい投資のキホン【第23回】公的年金(国民年金・厚生年金)制度を徹底解説! どんな種類があるの? 保険料はいくら?」をご参照ください。
- 障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」がある
- 障害基礎年金は障害等級1・2級、障害厚生年金は1~3級+αの人が対象
- 受け取れる年金額は障害等級によって異なる
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」がある
日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する、国民年金。国民年金に加入している人が病気やケガにより一定の障害状態になった場合、国に請求することで「障害基礎年金」を受けとることができます。
国民年金に加え厚生年金に加入している人(企業のサラリーマンなど)は、障害基礎年金にプラスして「障害厚生年金」も受給できます。
障害基礎年金を受け取るための条件
まずは障害基礎年金からご説明しましょう。障害基礎年金を受け取るためには、①障害に認定されること②公的年金の納付要件を満たしていること、の2つの条件があります。
障害等級1・2級までが「障害基礎年金」の対象
①の障害に認定されるためには、「初診日(障害の原因となった病気やケガについて医師または歯科医師に初めて診療を受けた日)から1年6カ月が経過した日に、法令に定めてある障害の状態(1級、2級)に該当」する必要があります。
1級 |
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2級 |
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出所:日本年金機構のHPを基に編集部作成
障害厚生年金における障害等級は3級までありますが、障害基礎年金の対象は2級までです。
公的年金加入期間の2/3以上、保険料を納付している必要あり
②の納付要件を満たすには、「初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること」が必要です。
ただし2026年3月まので特例措置として、「初診日が65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと」の条件を満たしている場合でも、納付要件をクリアできます。
納付猶予と学生納付特例期間も、障害基礎年金の受給期間として算入されます。ですから、公的年保険料未納状態は絶対に避けましょう。
また、20歳未満の方や60歳以上65歳未満の老齢年金を受給していない方も受給資格があります。20歳未満の方には国民年金保険料の納付要件がなく、20歳に達した日に障害があれば20歳から受給できます。
障害基礎年金で受け取れる金額は?
障害基礎年金では、障害等級によって受け取れる年金額に違いがあります(年金額は2020年度現在)。
【受け取れる年金額】
1級:「975,125円(781,700円×1.25)+子の加算」
2級:「781,700円+子の加算」
【子の加算額】
第1子と第2子:各224,900円
第3子以降 :各75,000円
障害基礎年金として受け取れる781,700円は、国民年金を40年間納付した場合の老齢基礎年金と同額です。
また子とは、「18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子」または、「20歳未満で障害等級1級または2級の障害者」です。子がこの年齢を超えると、加算額の支給がなくなります。
障害厚生年金で受け取れる金額・条件は?
障害厚生年金は、障害の状態により1級、2級、3級と障害手当金(一時金)に分かれます。
障害基礎年金と障害厚生年金の1級、2級の障害状態の基準は同一。3級は2級より軽い障害、障害手当金(一時金)は3級より軽い障害の方が該当します。なお、障害手当金の認定は初診日から5年を経過した日、または5年以内で症状が固定した日になります。
それぞれ受け取れる年金額は以下の表の通りです。
障害等級 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
---|---|---|
1級 | 781,700円×1.25+子の加算 | 報酬比例の年金額×1.25 +配偶者加給年金 |
2級 | 781,700円+子の加算 | 報酬比例年金額 +配偶者加給年金額 |
3級 | ― | 報酬比例年金額 (586,300円を最低保障) |
障害手当金(一時金) | ― | 報酬比例の年金額×2 (1,172,600円を最低保障) |
出所:日本年金機構「障害年金ガイド」を基に筆者作成
障害厚生年金に子の加算はなく、配偶者加給年金(224,900円)が用意されています。配偶者加給年金は、1級、2級の障害厚生年金を受給されている人に、生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合に支給されます。
ただし、年収が850万円以上の配偶者は加算の対象外。それ以外にも、配偶者が20年以上の厚生年金加入による老齢厚生年金、または障害年金を受け取っている間は支給停止といった制限があります。
厚生年金加入期間が短い時に障害認定を受けたら
障害厚生年金では、被保険者期間が300か月(25年)に満たない場合、300か月として報酬比例年金額を計算することになっています。これにより、厚生年金加入期間が短い方が障害認定を受けた場合も、手厚い保障が受けられるようになっています。
また、障害厚生年金の3級と障害手当金(一時金)には、障害基礎年金との合算がありません。そのため、上記の表にあるように最低保障額をそれぞれ設定しています。
障害年金受給後は「障害状態確認届」が届く
障害年金の受給後に、障害の状態が良くなったり悪くなったりする場合があります。障害の状態を確認するために、「障害状態確認届」を日本年金機構が受給者に送付します。
確認届を受け取った受給者は提出期限3カ月以内の障害の状態を記入して日本年金機構あてに郵送または近くの年金事務所への提出が必要です。もし、提出遅れや記入不備があった場合、年金が一時止まる場合がありますので注意しましょう。
まとめ
障害基礎年金は子供のいる方に手厚い制度です。一方、障害厚生年金は障害基礎年金に比べて保障の範囲が広くなっているほか、配偶者のいる方に手厚い制度と言えます。
これは、障害年金と同様に公的年金の一つとして用意されている遺族年金でも同様です。次回では、遺族年金について詳しく見ていきます。
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