2020年2月の“コロナショック”以降、株式市場は比較的堅調に推移してきました。エコノミストのエミン・ユルマズさんは、「この秋は政治色の強い相場になる」と見ています。今後の見通しとともに、株式投資との付き合い方についてお話を聞きました。(取材:2020年9月16日)

日本の解散総選挙は相場にポジティブ

今秋以降、株式市場はどのように動くと見ていますか?

エミンさん 11月3日にアメリカの大統領選挙があり、日本でも衆議院解散総選挙が行われる可能性が高まってきました。これまでと少し風向きが変わり、政治を意識した相場の動きになると見ています。

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日本で解散総選挙が実施されれば、相場にポジティブに作用しそうです。現在の自由民主党の議席は安倍晋三前首相に対する支持の表れですから、菅義偉新首相への信を改めて問う必要があります。今なら自民党が勝てる可能性が高く、長期政権ができる期待感が相場を下支えするでしょう。米国と同時期に政治イベントを片付けて、日米ともに新たな体制でスタートするのは良いことです。日本の政治についてはあまり心配していません。

アメリカの大統領総選挙が接戦なら要警戒

アメリカでは、ドナルド・トランプ現大統領とジョー・バイデン候補のどちらかが勝つか、予想が分かれていますね。

エミンさん 大統領選挙では、いくつかのシナリオが想定されます。トランプが再選すれば、強力な減税政策と中国に対する追加関税措置が続くでしょう。一方、バイデンが勝てば対中国の姿勢が変化する可能性があります。

米中の新冷戦は経済的覇権をめぐる争いですから、国家戦略の根底が変わることはありません。しかし、バイデン勝利なら中国に対する強硬姿勢は若干ソフトになると見ています。トランプの大型減税がなくなることは景気面でマイナスですが、中国への関税措置が緩和されたり、同盟国を大事にする姿勢が打ち出されたりすれば、グローバル経済にはむしろ追い風が吹くかもしれません。

いずれにしても、両者の政策には一長一短があり、トランプ敗戦は株価にそれほどネガティブではないでしょう。大統領選挙というビッグイベントを無事に終えることさえできれば、どちらが勝っても再び上を目指していくと予想しています。

選挙の行方はあまり気にしなくていいということでしょうか?

エミンさん そうとも言い切れません。問題は、選挙がスムーズに終わらない場合です。例えば、2000年の米国大統領選挙はアル・ゴアとジョージ・W・ブッシュが争い、再集計と法廷論争が行われるほどの大接戦となりました。結果としてブッシュ大統領が選出されましたが、最終結論に至るまでに1カ月以上を要したのです。

今回も、接戦になった場合は負けた方が不正を訴える可能性があります。特にトランプが接戦の末に負けた場合、あれこれ理由をつけて揉めるシナリオは大いに考えられます。どちらかが圧勝すれば問題ありませんが、大統領がなかなか決まらない事態になれば米国の二極化が加速し、社会不安が高まることが懸念されます。そうなれば投資家の不安も募り、相場にはマイナスの影響を与えるでしょう。この秋は政治関連のニュースに注目しておくといいと思います。

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