宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、積立投資やつみたてNISAを始めるか迷っている方に対して、一歩踏み出すための心構えなどをアドバイスします。

  • 宮崎などの地方で不利なのは「情報量の差」。投資の情報を得られる機会が少ない
  • 実際に投資している人「生の声」を参考にしながら、資産運用に興味を持つのが大切
  • 筆者の積立投資はプラス運用。つみたてNISAにチャレンジしない手はない

身近な人の助言など「良い運用環境」を作る

【質問】
積立預金の代わりに、流行の「つみたてNISA」を始めてみようと思ってます。でも、「お金が減るよ! 地道が一番! ふるさと納税だけで十分」と言う友人もいて、怖くて手が出せないでいます。投資に詳しい相談者でも近くにいればいいんですが……トホホと困っています。どうしたものでしょうか?

今回からは「積み立て」の大本命とも言える、「NISA」の長期版の「つみたてNISA」について、始めるときのとっかかりや気持ち(感覚)に絞って話をしていきます。

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宮崎発マネー相談室【第2回】でも少し触れさせてもらいましたが、2018年にスタートしたつみたてNISAについて簡単に説明すると、最大で年間40万円の投資について、本来ならば投資で儲けた利益にかかる約20%の税金を、約20年間ゼロにする制度です。

普段はほったらかして、必要なときはすぐ換金できるつみたてNISA

要は、つみたてNISAは「儲かっても税金はいりませんよ」という制度です(一般NISAもそうです)。日本は「国民皆税金」の国であり、実際に国民が平等に税金を納めているかはわかりませんが、何かと言えばすぐ税金を取られる国の仕組みと逆行して、個人の投資に対しては税金の免除が国主導で推し進められているのが、NISAやつみたてNISAの最大の特徴になります。

今回の相談者のように、最初から「投資はお金が減る」と思い込んでしまうと、なかなか自分から行動に移すことはないでしょう。実際に私の身近にも、前進できない高所得者がいます。先だっても、「NISAを始めたいっちゃけど? 口座を作るのに、どこの証券会社がいいっちゃろうか? ここならカードにポイントも貯まるから……」などと相談を受けたところです。最初から「ポイントありき」では、元本割れの可能性がある投資信託などの運用商品に踏み込むのは難しい気がします。

ポイントもいいですが、たとえばホームページの使いやすさ、お客さまのサポートなど、証券会社のトータルサービスを勘案していかないと、証券会社で本格的に資産運用を始めるのは無理でしょう。本人も、給与明細の総額から健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険、所得税、市県民税と約30%も差し引かれ、年々手取り額が減っていることに自覚はあるのですが、それでも損はしたくない……ときています。ハタハタ困ったもんです。

トラリピインタビュー

さて、宮崎県のような地方で資産運用にチャレンジするのに不利なこととして、「情報量の差」があります。運用会社の勉強会、セミナーなど、資産運用のきっかけとなりえるような機会が、地方では圧倒的に少ない。そもそも証券会社や資産運用会社の拠点は地方には少なく、近くにあるのはそれ以外の金融機関です。その多くは、もともと本業であった融資が不調で、投資信託などの「手数料商売」に頼る傾向が強くなっているようです。金融機関が儲けるために、手数料が高く、お客さんには合わないような商品を売ってしまい、その結果、損をしている人が多い。これがいまだにある現実です。

そんな地方でも、ぜひ参考にしたいのは「生の声」です。実際に投資に関わっている人の儲けた話だけでなく、損をしたときの話は非常に参考になると思います。「投資でこれだけはしてはいけない」という教えがあればなお、最高ですね。
情報が少ない地方で、つみたてNISAなどで資産運用を続けるためには、運用環境をどれだけ自力で作れるかにかかってくるはずです。

対話
投資の成功や失敗、注意点など実体験をもとに教えてくれる人が身近にいると心強い

興味を持つことで投資を知り、未来が開けた

さてここからは、私の積立投資法を話していきます。きっかけはFP(ファイナンシャルプランナー)の資格取得で、資産を増やす方法を学び、1つの投資信託を購入したのが始まりになります。

当時、証券会社は怖いイメージもありましたが、直販で購入できる日本株式の投資信託があったので、買ってみることにしました。これが私の運用の始まりになりました。
その後、何を思ったのか、投資信託の運用会社に直接電話をかけて相談したり、運用会社の人に直接、宮崎に来ていただき勉強会を開催してもらったりして、運用への興味をどんどん深めていきました。そして、毎月の積立投資も始めていきました。

また、投資信託に興味を持ちすぎたせいか、当時の投資信託評価専門誌から宮崎市で取材を受けたり、宮崎放送の番組に出演したこともありました。もう20年前になりますが(笑)。

後に、証券会社に口座を持って株式投資も行うようになりました。長期運用の積立とは別に、個別株式は短期中心での運用です。
今思えば、いろいろな偶然によって、私が「資産運用に興味を持って、“自分に投資”(=勉強)できた」環境を得たことが、自身にとってはプラスに転じるきっかけになったのかもしれません。

その結果、現在はどうなっているのか?
複数の日本株式中心の投資信託は全てプラス運用になっていますが、償還の期限(5年)がある投資信託は全てマイナス。そして個別株式投資は、悲しいことに、半数以上がマイナス運用で、塩漬けです。
言い替えると、長期運用(投資信託の積み立て)はプラスで、短期運用(期限付きの投資信託と個別株式)はマイナスとなっています。

この「長期運用のプラス」こそが、今回の相談者のように投資で損したくない方が実践してほしい「長期ほったらかし運用」の極意です。
実際には、投資信託を約20年間、完全にほったらかしにしていたわけはなく、その間に3回ほど解約して、使わせていただきました。それでも、ゆったりとプラス運用ができています。

投資信託の積立。途中で売ってもいいの?

資産運用に興味を持つことで、未来が開けると思います。
「あせらず、どっしり、たまにはご褒美を」
これこそがまさに、長期運用の醍醐味です。
積立投資をするなら、金融庁が厳選した投資信託やETFの中から商品を選べて、投資の利益が非課税になる「つみたてNISA」にチャレンジしない手はないと思うのです。

今回の相談者のように、「どうしたものか?」と考え中の方の後押しとなることができればいいのですが……。

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