宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、投資信託を選んだあとの投資との向き合い方をテーマに、積立投資を続けるためのポイントについて考えます。

積立投資が苦手な人でも続けられる考え方

前回は、初めての資産運用で「投資信託」を選ぶ手順として、自身のリスク度合いを「レーティング」とマッチングさせながら選んでいく方法を話してきました。
リスク度合い、つまり「ここまで損してもあきらめられる範囲」に、実際の投資信託が過去にどんな値動きをしたかを示すレーティング(リスクレベル)をマッチングさせることで、増えても減っても「自己責任」という気持ちを持って投資に向き合うことができます。この「自己責任」を理解したうえで、その次の「売る」「買い足す(増やす)」、あるいは決算次第ですが「分配金の配分」などをやっていくのです。この流れを理解しましょう。それができれば、あなたも立派な個人投資家の仲間入りです。

それでは次のステップとして、一生懸命選んで、意を決して購入した投資信託とどう付き合っていけばいいのか? 投資信託をどう活用すればいいのか? その考え方を提案していきます。

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【質問】
投資信託で積立を昨年から始めています。始めたのはいいのですが、口座から毎月引き落とされるのを眺めるだけでは不安があります。貯まったら少しくらいは使いたいのですが、お金を増やすためには、使いたいのを我慢するしかないのでしょうか?

このような質問をされる方は男性に多いようです。私を含めて、男性はあまり「積立」が好きではないのかもしれません。嫌いというより、貯まったらつい使ってしまう。これではお金は全然増えていきませんし、貯まる分より使う分の方が多ければ、減っていくしかありません。せっかく投資信託を始めたのに、お金が増えたそばから使っていては、積立投資は意味をなさないことになります。

投資信託は預金ではありません。長い目で見れば預貯金の利息よりお金が増えることが期待できる、将来の安心のためにお金を貯める手段です。もちろん投資にはリスク(価格変動)があり、大切なお金が減るかもしれないのは心配ですが、少しでも気持ちが楽になれるように、メンタルの面から「楽しめる積立法」を提案したいと思います。

① 「積立投資は時間が必要」と暗示をかける

マイナス金利の時代に、銀行預金だけではお金は増えません。かといって投資信託の積立でも、増えていくお金は1年で平均数%くらいです。資産を大きく増やすには、ある程度の期間が必要なのです。
そこで、投資信託を買い始めたらある程度の期間(少なくとも5年間)預けるんだと、自身に暗示をかけてください。

長期投資
投資には時間が必要だと信じること、思い込むことが大切

② 積立投資でお金が増えたら、一度売ってみる

暗示にかかったら、投資信託を購入した日から1年以内に、購入した時の価格よりも少しでも増えることがあったら、一度売ってみましょう。
投資信託を売って少額でも利益を確定すると、その経験が「投資でお金を増やせた」といういいイメージとして心に残ります。結果、投資を長く続けられます。
逆に安くなった場合は、絶対に売ってはいけません。投資信託を売って損を確定することによって心のダメージが強くなり、「投資は悪だ」という暗示がかかってしまうため、長続きできません。
状況によっては売ることも大事。売りすぎ・使いすぎは良くありませんが、決して我慢は必要ありません。

「換金しにくさ」も長続きのポイント

投資信託を売るときに気をつけたいのは、手続きの時期と実際に売却が行われる時期、さらには売った分のお金が振り込まれる時期が少しずつ異なることです。
投資信託の時価である「基準価額」は1日1回、銀行などの窓口業務が終わった後に算出されます。したがって、売ろうと申し込む時点では「前日の基準価額」を参考にするしかなく、いざ売ってみたら当日の基準価額が購入時より下がっていたという可能性もあるので、注意が必要です。
また、投資信託は売ろうと申し込んでから手元に入金されるまでにだいたい4~5日ほどかかるので、すぐにお金が欲しいという方には不便といえます。

逆に考えれば、好きなときにお金を使えるクレジットカードなどとは正反対の「換金しにくさ」が、投資信託の積立を長く続けられる原動力のひとつかもしれません。

投資信託は手数料と税金も重要

値上がりした投資信託を売って利益を確定させるとき、注意しなければならないのが手数料と税金です。
投資信託の運用会社および金融機関に支払わなければならない手数料は、以下の3つです。

① 投資信託を買う時の「購入時手数料」
→購入額に対しておおむね3%以下(消費税を除く。以下同じ)

② 投資信託を保有している間、常に支払う「信託報酬(運用管理費用)」
→投資信託の時価に対して年率0.2%程度~2%以上まで、商品によってさまざま

③ 投資信託を売る・解約する時の「信託財産留保額」
→通常は売却額に対して0.3%程度

ただし、最近では①の購入時手数料が無料の「ノーロード」といわれる投資信託が増えてきましたし、③信託財産留保額も一定の条件のもとでゼロとなる商品もありますので、よく調べてみてください。

そして、絶対に支払わなければならないのが税金です。投資信託では、決算時に受け取る収益分配金と、売った時に発生する取得価額を超えた収益、つまり「投資でもうかったお金」に対して約20%の税金がかかってきます。

ですから私がお勧めするのは、NISA(少額投資非課税制度)です。NISAは、年間120万円までの投資なら、もうかったお金に対する税金が5年間かからないという制度です。これなら投資信託の分配金と売却益にかかる税金がゼロになるので、投資で増えたお金はすべて利益になります。ただし、購入前にNISA口座の開設が必要ですので、ご注意ください。

長く続けることによって、お手持ちのお金を誰でも手軽に「生きたお金」にできるのが投資信託の魅力だと思います。どうか、あきらめずに投資に関心を持ち続けながら、皆さんにとっての「ベスト」の投資信託、「ベスト」の投資手法を見つけてください。

次回は、投資信託の投資対象について考えていきましょう。

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