資産運用に興味があっても、初心者にとって株式投資のハードルは高いもの。本連載では、現役の証券アナリストが株式投資の魅力や付き合い方をやさしく伝えます。

  • 企業の持続的な成長のために、ESGに取り組む必要があるとの機運が高まる
  • 株式投資の銘柄選びの要素の一つとして、ESGが定着していく
  • まずは自分が投資したい、あるいは投資している企業のESG情報を見てみる

非財務情報をスコアリングして企業を選別

今回はESG投資についてのお話をしたいと思います。

ESGとは環境(Environment、エンバイロメント)、社会(Social、ソーシャル)、ガバナンス(Governance、企業統治)の英語の頭文字を合わせた言葉です。近年では企業は短期的な業績の拡大を求めるだけではなく、長期的に持続的に成長するためにESGに取り組む必要があるとの機運が高まっています

新しいNISAの“裏技”教えます! ニッセイアセットマネジメントの情報発信&資産運用アプリ

また、資産運用の観点からも、環境・社会・ガバナンスといった数値に表されない非財務情報を項目ごとにスコアリングして企業を選別し、ESGを軽視する企業への投資を見直すといった流れになっています。

項目ごとに詳しく見ていきます。

E・環境

「E・環境」とは、大気汚染や水質汚染など環境に対する悪影響への配慮、持続可能な再生可能エネルギーの活用状況、生物の多様性への対応などの取り組みをスコアリングします。菅首相は、2020年10月に2050年までに温暖化ガスの排出量をゼロにする脱炭素を宣言しました。欧米、中国など各国もこぞって脱炭素社会へのコミットの方針を打ち出しています。

S・社会

「S・社会」とは、女性の活躍の推進、適切な労働環境の改善、事業内容が反社会的でないかなどの社会的な課題に対しての取り組みをスコアリングします。例えば、最近では欧米のアパレル企業などが中国の新疆ウイグル自治区で製造された綿を使用しないと宣言したこともこれに当てはまります。

G・企業統治

「G・企業統治」とは、企業の意思決定がきちんと手続きを踏んだものになっているか、内部通報制度、監査役会などは機能しているかといった観点でスコアリングを行います。

脱炭素社会の構築に関わるESG投資

このようなESGの広がりに伴い、株式市場においてもESGをテーマにした投資信託やETF(上場投資信託)、株価指数が多数設定されています。

東京証券取引所などもESGのセミナーやガイダンスの作成など啓蒙活動に力を入れています。また2022年に予定されている市場の区分改定では、優良企業が属することのできるプライム市場への上場の条件の一つに「国際的な枠組みに基づく気候変動開示の質と量の充実」を挙げています。

ESG投資は、昨今の大きなテーマである脱炭素社会の構築にも関わっています

石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルは化石燃料の事業そのものが温暖化ガスの排出量を増加させるとして、近年では欧米を中心とした機関投資家による株式の売り圧力に直面しています。一方で太陽光や風力、水素などの再生エネルギーに関連する企業への前向きな評価が続いています。

再生可能エネルギーESGに対する関心の高まりに伴い、従来の化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトが進みそう

このような動きはエネルギーを消費する側の企業にも大きな影響を与えています。例えば米アップルは、再生可能エネルギーで全ての自社の電力を賄っているだけでなく、自社に部品を納入するサプライヤーに対しても同様の取り組みを求めています。

欧米企業は早くから環境への意識が高かったこともあり、日本企業に比べて先行していましたが、最近ではトヨタ自動車が取引先の自動車部品メーカーに対して、今年の二酸化炭素(CO2)の排出量を前年よりも3%減らすように求めるなどの動きが出ています。

銘柄選びの要素の一つとしてESGが定着していく

このような背景の中で、個人投資家はどのように対処が必要になるのでしょうか。

最近ではESGに着目、関心のある個人投資家が増えており、ESGをテーマとした投資信託も売れ筋となっています。

個別銘柄への投資についても過度に気にする必要はありませんが、ESGの観点は今後銘柄選びの要素の一つとして定着していくと思われます。とはいえ、ESGのスコアリングなどを個人で参照して投資に活かすというのはややハードルが高いようにも思います。

そこで、まずはご自身が投資したい、投資している企業のESG情報をご覧になることから始めてみてはいかがでしょうか。企業のホームページなどで自社のESGに対する取り組みを丁寧に説明する企業がとても多くなっています。見比べてみると思わぬ発見があるかもしれません。

メルマガ会員募集中

インデックスファンドの次の一手