銀行業は自己資本比率が極端に低い

銀行業は、著名なメガバンクも、地元でおなじみの銀行も、自己資本比率が低い傾向にあります。そもそも、銀行業は預金というカタチで集めたお金を、融資やローンという姿でお金を貸し付けることを生業としています。

立場を変えてみると、皆さまのお給料が振り込まれている銀行の預金は「預けているお金」にあらず。皆さまが、預金という名前の「銀行に貸し付けている」お金なのです。立場を銀行に戻すと、銀行は「預金」という名前で、皆さまからお金を借りているのです。つまり、融資やローンといった銀行の生業のほとんどは、借りたお金、すなわち他人資本で成り立っているのです。だから、銀行業は自己資本比率が低いのです。

銀行
「安定企業」の筆頭とも言われていた大銀行の自己資本比率は低い

自己資本比率が低い企業が有利だったのは

リーマン・ショックと並んで、未来の歴史の教科書に載せてほしいのは、日本銀行の「マイナス金利」発表です。

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驚いたのは、日本銀行のマイナス金利の発表そのものではなく、発表直後、自己資本比率が低い企業の株価が、ぐんぐん上がったことです。自己資本比率が10%以下の、(筆者に言わせると)借金まみれの企業の株価が上がったのです。

自己資本比率にこだわる筆者も、この時ばかりは、唸りましたね。

自己資本と他人資本を組み合わせてこそ

資金調達を自己資本だけで賄おうとすると、企業の成長に限りがあるのではないでしょうか? むしろ、自己資本に他人資本を組み合わせることで、事業の飛躍が実現できるかも知れません。自己資本と他人資本、いずれも資金調達の選択肢にしか過ぎないのですから。

筆者がかつて勤めていた企業の親会社の、その財務の健全性の高さ、すなわち自己資本比率の高さは社会的にも評価されているようです。しかし、それゆえ、企業としての成長や伸びしろについては疑問を持つ方も、また多かったようです。「安定志向以上の強みがないね」という言葉を、何度、聞いたことでしょう。

しかし、株式投資のそもそもを振り返ると、事業の飛躍に伴う企業の成長に期待してこそ、ではないでしょうか?

先行きの不透明な今こそ

結局のところ、自己資本比率は何パーセントが望ましいのか、筆者には結論が出ません。先述の銀行業のように、業種による特有の傾向もあるでしょう。

ところで、自己資本ではなく他人資本、なかんずく「負債」とは、「借金」のことですよね。日本人は、よほど借金が嫌いなのか? 「負う」に、「人偏+責める」ですよ。あらためて、負債とは恐ろしい言葉のようにも感じてしまいます。

さて、この先、どうなるか分からないコロナ禍の今。恐ろしい負債が少なく、自己資本が充実している方が良いのでしょうか?

個別の株式に投資されている方で、自己資本比率に注目されていらっしゃる方は少ないと思われますが、良い機会ですので、企業の自己資本比率を確認しておきましょう。

例えばヤフーファイナンスでしたら、上場している各企業の「企業情報」のタブをクリックすると、会社情報のページに飛びます。会社情報のページの左側にある「連結決算」、もしくは「単独決算」をクリックすると、直近3期分の決算情報が載っています。
その決算情報の、やや下の欄に自己資本比率が載っています。

投資先企業
の業種
自己資本比率
陸運業 37.7%
化学 47.4%
食料品 36.4%
情報通信 58.7%
情報通信 55.5%
繊維製品 90.8%
卸売 26.2%
卸売 26.9%
建設 71.1%
空運 31.4%
サービス業 78.4%

上の表は、筆者の持っている株式の自己資本比率です。「たくさん持っているな」……そこですか?
全く意識していなかったのですが、意外と業種の分散が図れているのと、自己資本比率の分散も図れていますね(←皮肉)。
投資時に比べ、自己資本比率が下がっている企業も複数ありますが、逆に、自己資本比率が大きく伸びた企業はないですね。

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