宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回の相談者は、毎月分配型の投資信託を持っていて、その評価額が大きく減ったのがショックとのこと。投資信託で資産運用をする際の注意点についてあらためて考えます。

  • 初心者は投資信託の価格変動に一喜一憂しがち。リスク商品であることを理解する
  • 投資信託の分配金は必ずしも利益から支払われない。元本を減らす特別分配金に注意
  • 資産運用は「入口」と「出口」が大事。長い投資期間に合わせた商品を選ぶ

投資信託のリスクを理解し、値下がりを心配しすぎない

【質問】
約7年前に銀行で言われるままに買ってしまった投資信託。毎月、分配金が出ていたので安心していたっちゃけど、投資信託の価格を見ると、かなりの額減ってしまってショック。夫になんて言えばいいのか……。
窓口の方を専門家だと思って信頼してたのに残念でなりません。何とかなりませんか?
資産運用って怖いですね……。これからやるべきことがあれば教えてください。

今回は、投資信託などの運用商品の「入口」から「出口」までの戦略について考えていきます。

相談者のように、運用資産に含み損を抱えている方は多くいることでしょう。相場は日々動いていて、一本調子に値上がりを続ける商品などあるわけがないので、一日あたりで見ても、当たり前のように損は発生します。
問題なのは、運用資産の含み損が一過性なのか、あるいは持続的なものなのか。そこを判断しなければ、損がさらにふくらむことにもなりかねませんので、注意が必要です。

投資を始めたばかりの方などは、興味本位もあり、買ったばかりの投資信託の価格を毎日のように「どうなっているのか?」と確認することになり、「儲かった」「損した」の一喜一憂になるのが自然の流れです。そして、私のところに相談をいただく案件の大半が、購入して一週間もたたないのに、値下がりを心配するものです。

値下がりを心配する
投資を始めたばかりだと、どうしても毎日の価格変動が気になり、値下がりすると心配になってしまう

資産運用には縁遠かったサラリーマンさんと配偶者などは、金融機関からすれば、窓口に来たときには絶好のお客様になります。今のような金利もつかない時代に「投資信託を買えばお金が増えるかも」となると、聞く耳を持ってくれることでしょう。
金融機関で投資信託を売るときは、窓口の担当者は、元本割れしてしまうかもしれない「リスク商品」であることを説明する義務があります。
ただよくあるのが、「リスクメジャー」の情報として、RR1(ローリスク)~RR5(ハイリスク)だけ簡単に説明して終わりにしてしまうことです。

私でしたら、たとえば担当者の説明の中に、「この投資信託は、毎日価格が変動する商品です。一日一日、得をすることも損をすることもありますから、あまり気にしないでください。ある程度長い目で見ていきましょうね」などの言葉を添えていける担当者だったらいいのになあと思っています。そうすれば、初めて投資をした方が値下がりを心配しすぎてしまうことも減るでしょう。

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元本を減らしてしまう「特別分配金」に注意

さて、今回の相談者が投資した商品は「毎月分配型バランスファンド」であったので、評価額が減っているのもうなずけます。
毎月分配型投資信託については連載第9回で触れていますので、参照ください。

毎月分配型の投資信託ってどうなの?

相談者のケースでは、基準価額が購入時に比べて40%以上値下がりしていました。これでは評価額が減るのは当然のこと。
投資信託の運用報告書を見ると、基準価額は下がりましたが、「分配金込みの基準価額」は値上がりしていて、これは投資初心者には紛らわしいものです。
なぜこのようなことが起きるかというと、この投資信託の分配金が、すべて運用益から出ていないからです。毎月支払われる分配金が、元本を取り崩しているのです。

投資信託の分配金には、運用益から支払う「普通分配金」と、元本の一部を支払う「特別分配金」の2種類があります。問題は、この「特別分配金」がどれだけ元本を取り崩しているのか?
それを計る指標に、QUICK資産運用研究所が算出している「分配金健全度」がありますが、これを考察すると愕然とします。過去5年で見るとほとんど儲かってないのに、いかに元本を削られたか、ビックリします。
以下の記事に、銀行で売られている残高上位の投資信託が掲載されていますので参考にしてみて下さい。

分配金、高額・高利回りには近づくな!―楽しく増やす!「北澤式」資産運用術【10】(QUICK MoneyWorld)

相談者の投資信託も評価額が減るのは当たり前です。毎月分配金の投資信託の多くは、運用で儲かっても損をしても、必ず分配金を出すという方針です。このような運用方針が、元本を食いつぶす結果となります。

また、たとえ運用益が出ていたとしても、毎月分配型の投資信託はその利益を分配金として支払うため、複利運用効果がなく、長期の資産運用には向きません。一方で、資産を増やすより活用する段階に入ったシニア年齢層の方には、毎月分配型は合っているのかもしれません。ただあくまでも商品次第であり、なおかつ購入後も基準価額の変動を確認できる方に限定されるでしょう。

「入口」と「出口」を意識して、失敗を繰り返さない

今回の相談者は上記のような条件に当てはまらず、なおかつ毎月分配型バランスファンドは今後も持続的に減る可能性が高いと思われ、受け取った分配金も使ってしまっていたので、毎月分配型商品の解約を含めた検討をお勧めしたところでした。

問題は、このようにして投資の効果を感じられないまま資産運用から退出してしまった方が、「もう二度と運用なんかするものか! 損するだけだ! 運用は金持ちだけしかしたらいかん」などと思い込んでしまうことです。
しかしながら、最初の「入口」さえ間違えなければ、リスクを軽減しながら、安心してじっくり構えてお金を増やすことができます。

一度失敗したあとに、もう一度運用を始める場合には、以下の点を心がけましょう。

①失敗した投資信託には二度と手を出さない
②自分自身で商品を吟味して必要ならば専門家の意見を聞いてみる(専門家とは商品を販売する人ではありません)
③分配金などの甘い話には、一度立ち止まって考える
④基準価額が下がったからといって、安易に買い増さない

そして一番大事なことは、

⑤配偶者には話をしておく。無理のない投資金額。一人で決めない。立ち止まれる勇気。後でもめないように(笑)

あとは出口戦略、つまり投資期間を決めることが大事になります。

株式と違って、投資信託のような運用商品は、「長い期間」と「長い眼」が必要です。短期の運用ならば損を確定させる判断も必要になってきますが、長期であればあわてて売ってしまう必要はありません。自分の年齢に合わせて投資期間を決めて、それに合った商品を選択しましょう。途中解約はなるべく避けたいものです。

世界恐慌、バブル崩壊、リーマン・ショック、新型コロナウイルスと、金融市場の暴落で人類は惑わされてきましたが、人類が存続する限り、金融市場は戻ってくるのを歴史は証明しています。自分を信じて、自身に投資していきましょう。

次回は、コロナ禍での株式投資について考えていきます。