東京オリンピック・パラリンピックは、コロナ禍でほとんどの競技が無観客で開催されたものの、たくさんの日本人選手が活躍した印象深い大会となりました。その一方で、たとえオリンピックのメダリストであっても、必ずしもその競技と関わりのある仕事を続けられるとは限らない、厳しい現実もあります。
トップアスリートの卓越した技術や考え方を、社会を豊かにするためにもっと役立てられるのではないか──。自らも柔道の選手や指導者であった株式会社スポリー代表取締役の丸山和也さんは、自社で開発したアプリ「SPORY」などを通じて、アスリートが持つ価値をビジネスとして成り立たせるべく、挑戦を続けています。

トップアスリートによるトレーニングを動画で配信

「SPORY」はオンラインフィットネスアプリということですが、このアプリでどんなことができるのか、どういったサービスかを簡単に説明していただけますでしょうか。

丸山さん さまざまな競技の世界チャンピオンやメダリスト、有名なトップアスリートが、トレーニングやフィットネスの動画を配信することが、現時点での主なコンテンツです。アスリートの経験やノウハウを、ユーザーが自宅で簡単に体験できるサービスです。

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SPORY「SPORY」はiOS、Android版ともに公開中

家にいながらにして、一流アスリートのトレーニングに触れられるんですね。新型コロナのせいで気軽に外出できず、なおかつ運動不足になりがちな今は、ありがたいサービスだと思います。

丸山さん 今はフィットネスが中心ですが、今後はボディメイクやメンタルトレーニング、あるいは競技技術に関する情報も発信していく予定です。さらには、アスリートによるオンラインでのグループレッスンやパーソナルレッスンもできるようにしていきたいと考えています。

どのようなアスリートの方が参加しているのでしょうか?

丸山さん 柔道の世界チャンピオン、水泳やバレーボールのメダリスト、総合格闘技団体で活躍していた選手もいます。

トレーナー
SPORYにトレーナーとして参加するアスリートの一部(2021年9月10日時点)

「SPORY」のアプリ無料ダウンロード・詳細はこちらから

アスリートのセカンドキャリアは長年の課題

アスリートによるフィットネス動画を配信するサービスを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

丸山和也さん

丸山さん もともと僕自身も柔道の選手や指導者でした。日本代表チームの監督を務めた、金メダリストの井上康生さんも過去に在籍していた柔道部にいました。新卒1年目にはオーストラリアで柔道の代表チームのコーチを務めたこともありました。

帰国後、独立したあとは人材紹介事業を営みながら、並行してトップアスリートのキャリア支援を行っていました。スポーツ界により深く関わるために、東京都のレスリング連盟の理事や、フットサルのFリーグでチームのアドバイザーを務めました。

こうした活動を通じて、たくさんのトップアスリートたちと関わってきましたが、中にはセカンドキャリアの形成に苦しむ人もいました。アスリートにとって、スポンサーが撤退するリスクや引退後のセカンドキャリアの難しさは長年の課題として、僕もずっと問題意識を抱えていました。

「アスリートは立派な実績を持つすばらしい人だから、みんなで支えなきゃいけない」というだけでは、根本的な課題解決は難しいと思います。アスリートが社会に還元できる価値を明確にして、それを継続的なビジネスに落とし込んでいかなければ、アスリートの活動が一時的なお金もうけや社会貢献だけで終わってしまいます。

アスリートが自らの価値を社会還元できて、なおかつビジネスになりうる市場を僕はずっと探していました。それで、このビジネスモデルであれば勝負できるということで、まずは「SPORY」というサービスを立ち上げました。

ありがたいことに、僕の思いやビジネスモデルに共感してくれた多くの方々に出資していただき、トレーニングメニューの監修やアプリなどのクリエイティブなどでも、業界の第一線で活躍している方たちに協力していただいています。

ちょうど東京オリンピック・パラリンピックが開催されるタイミングとはいえ、コロナ禍でのビジネスの立ち上げとなりましたが、こういう世の中だから、という意識はあったのでしょうか。

丸山さん たまたまコロナが広がるタイミングに重なってしまいましたが、その前から準備を続けていました。僕としてはコロナだからという意識は全くないのですが、客観的に見れば、自宅でもできるオンラインフィットネスは今のご時世に合っているのかもしれませんね。

ただ、今後コロナがおさまったとしても、僕たちのサービスを通じてアスリートが提供する価値は変わりようがないものだと思っています。

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