ESG投資に興味がある人であれば「グリーンボンド」という名前を聞いたことがあるかもしれません。日本では、2014年に初めて発行された債券です。ESG投資に注目が集まる中、グリーンボンドを投資対象とした個人向けの投資信託も登場し、にわかに注目を集めています。今回は、グリーンボンドの基本的な知識についてまとめます。
- グリーンボンドとは、環境保護に資する事業に限定された資金調達手段
- 資金使途が明確で、プロジェクトの進捗状況が把握できる点がメリット
- 個人でグリーンボンドに投資する場合は、投資信託を活用するのが現実的
グリーンボンドとは
グリーンボンドとは、企業や自治体がグリーンプロジェクト(環境保護のための活動)に必要な資金を調達するために発行する債券のことです。日本国内で先駆けとなったのは、2014年に発行された日本政策投資銀行によるグリーンボンドです。その後、都市銀行や東京都が相次いでグリーンボンドによる資金調達を行い、さらに環境省が「グリーンボンドガイドライン」を発表したことで、仕組みとしても確かなものになりました。
2020年には、国内企業のグリーンボンド発行額が1兆円を突破しました。企業の社会的責任が問われる昨今の社会情勢において、新たな資金調達手段として注目を集めています。
グリーンボンドに投資するメリット
グリーンボンドは、ESG投資の一種といえるでしょう。ESG投資とは環境・社会・ガバナンス(企業統治)に配慮した企業などに投資することで、その注目度の高さはご存知の人も多いでしょう。世界持続的投資連合(GSIA)は、2020年の世界のESG投資額が35.3兆ドル(約3900兆円)だったと発表しました。ESGは長期的に成長が期待できる投資対象を見極めるうえで有効な考え方とされており、投資家にとっては安心して長期投資を実践できる点がメリットといえるでしょう。
グリーンボンドに投資することは、社会に対しても多くのメリットをもたらします。企業がグリーンボンドで調達した資金はグリーンプロジェクトに使われ、プロジェクトの遂行状況は透明性をもって管理・公表されます。プロジェクトがうまく回っていけば、環境保護やSDGs(持続的な開発目標)への貢献が継続性をもって行われるだけでなく、企業体質もよりエコフレンドリーなものに変わることが期待できるのです。
グリーンボンドの発行事例
グリーンボンドの中から、最近発行された事例をいくつか紹介します。
発行体 | 九州電力 | 安川電機 | 九州旅客鉄道 | NTT都市開発 リート投資法人 |
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カテゴリー | エネルギー | 製造業 | 交通・運輸 | 不動産・金融 | |
発行時期 | 2021年6月 | 2021年5月 | 2021年4月 | 2021年4月 | |
発行金額 | 150億円 | 100億円 | 200億円 | 20億円・32億円 | |
資金使途 |
新竹田水力発電所、軸 丸水力発電所及び大岳 地熱発電所に係る新規 投資及び既存投資のリ ファイナンス |
太陽光発電設備の導入 した安川テクノロジー センタの建設 |
新型車両・鉄道関連設 備及び社員研修センタ ー改築等の施策に充当 |
グリーン適格資産に該 当する短期借入金の期 限前弁済の資金の一部 に充当 |
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利率 | 0.31% | 0.13% | 0.27% | 0.06%・0.50% | |
償還期限 | 10年 | 5年 | 10年 | 3年・10年 |
水力発電、太陽光発電の活用、環境配慮型の新型車両導入など、いずれも巨額の投資が必要になるグリーンプロジェクトを、グリーンボンドを有効活用することで実現しています。資金使途が明確で、プロジェクトの進捗状況の報告を受けられる点がグリーンボンドの特徴であるため、お金の使い道をしっかり確認したい人にも合った投資方法だといえます。
ここで紹介したのはグリーンプロジェクトのごく一部です。興味のある人は下記リンクからその他の事例も確認してみてください。
個人が投資するにはどうすればよい?
とはいえ、国内で発行されるグリーンボンドの多くは、券面1億円以上のものがほとんどで、個人投資家が手を出せる金額ではありません。しかし、投資信託を活用すれば、個人でも簡単にグリーンボンドへの投資が可能です。
投資対象にグリーンボンドを含む投資信託には、次のようなものがあります。
『グリーン世銀債ファンド』(日興アセットマネジメント)
・グリーンボンドをはじめ、各国通貨建ての世界銀行債券(世銀債)が主な投資対象(グリーンボンドの組入比率は、原則として30%以上を目指す)。
『クリーンテック株式&グリーンボンド・ファンド(資産成長型)(愛称:みらいEarth成長型)』(大和アセットマネジメント)
・日本を含む世界のクリーンテック関連企業の株式およびグリーンボンドに投資。
グリーボンドに興味を持った方は、上記のような投資信託を活用するというのも有効な手段ですので、ぜひ検討してはいかがでしょうか。