テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第34回は、「ザ・ベストワン」「人志松本のすべらない話」「ネプリーグ」などのバラエティ番組などを手掛ける、放送作家の小笠原英樹さん。

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「自分の価値」は言いにくい

小笠原英樹さんの写真
小笠原英樹
放送作家協会会員 
テレビ番組やネット配信番組の企画構成。「ザ・ベストワン」「人志松本のすべらない話」「ネプリーグ」などのバラエティ番組、子ども番組もやらせてもらっております。

「お金に関する文章を何か書いてくれませんか?」──。そんなメールが放送作家仲間のMさんから届きました。
ちょうどその時、子ども向け配信動画でお金のことについて調べ、台本を書いている最中で、その勢いで何か書けるかなと思い、「2、3日考えさせてください」と返事をして、ちょっと書いてみることにしました。

いざ書き始めるとこれが進みません。「違うか、これも違うか!」。あっと言う間に2、3日が過ぎ、いよいよ本格的に困っているところに、Mさんから「ご負担をおかけしてませんか?」と気遣いのメール。あちゃー、すみません。私の方がご迷惑をおかけしております。せっかくのご依頼なのでなんとかしたいと……。いつも安請け合いしてかえってご迷惑をおかけしてしまうのです。なぜ、簡単に書けると思ったのに書けないのか。一言、言わせてください。

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お金に関する文章を書くという依頼に、2、3日考えさせてと返事をして、ちょっと書いてみることにしました

書き始めて気づいたのですが、私への注文ってことは、放送業界に関するお金の話~ってことだろうと。タレントさんのギャラとか? 人に語れるほど正確な知識がありません。セットの値段? これまた正確には知りません。番組のお金と企画の管理はプロデューサーの仕事です。放送作家は、少なくとも私は「これで……」と言われたギャラで、ずっとやってきました。

「今回のギャラはいかほどにしましょうか?」と聞かれ、「おまかせします」。これで30年以上やってきたのです。ギャラが「私の価値」なんですが、なんか言いにくい。いや「自分の価値」だから言いにくいんでしょうね、高すぎても低すぎても困りますしね。言わなきゃダメなんでしょうね、でも、言えないんですね、これが。

ありがたい仕事

若い頃から、好きなことやらせてもらうんだから「お金をもらう」なんて考えてもいませんでした。先輩の構成の手伝いをして少しお金もらったり、ギャラの代わりに週に2度ごはんを食べさせてもらったり、我ながらお金なしで良く生きてたな~と思います。

放送作家の仕事は、こんなこと出来たらおもしろいな、ウケるだろうなという妄想を企画書にしてテレビ局に渡す。それが採用され番組になればギャラをもらえる。そんな仕事です。
テレビ局からこの番組やりませんか、と誘われて参加することもあります。これが一番ありがたい、深謝。その時も「ギャラは、だいたいこれくらいで……」「ありがとうございます」で終わりです。みなさん優しいので、それなりの常識的な金額を出してくれます。深謝。

感謝のイメージ画像
放送作家の仕事は、「ギャラは、だいたいこれくらいで……」「ありがとうございます」で終わり

ちなみに構成作家のギャラは番組制作費から出されます。番組制作費と言えば、先日、驚いたことがあります。2019年の民放キー5局(日テレ、テレ朝、TBS、フジ、テレ東)を合わせた番組制作費は3500億円!(その中のほんの一部を頂戴しております)。そして2019年、Netflixの番組制作費が1兆5千億円! 驚きでしょ!?
なんとか、Netflixでお仕事させていただきたいと思う今日このごろなのでありました。

次回は脚本家の渡辺麻実さんにバトンタッチ!

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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