中仏印露英日、6カ国で民生用プルトニウムを分離

乾式貯蔵以外に、少数ですが使用済み燃料を再処理工場に送り再処理を行う国もあります。フランスと日本です。

再処理とは、使用済み核燃料の中にある1.2%のプルトニウムを分離する作業を指します。使用済み核燃料の組成は、ウランが93.4%を占めており、5.2%が核分裂生成物、1.2%がプルトニウム、0.2%がマイナー超ウラン元素(ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム)となっています。

再処理工場では使用済み燃料を濃硝酸で溶かして、強力な放射性の核分裂生成物からプルトニウムとウランを分離・回収します。この過程で高レベル放射性廃棄物、およびその他の廃棄物が生じます。

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今日、世界に存在する分離済みのプルトニウムは500トンあります。そのうちの半分が民生用で、フランス、日本、ロシア、イギリスが分離したものです。核爆弾の原料とされるきわめて危険なプルトニウムがこれほどの量、地上に存在します。

これは1960年代、原子力の平和利用が黎明期であった頃、プルトニウムを燃料とした「増殖炉」の商業化が間近に迫っているという考えがまだ主流をなしており、使用済み核燃料を再処理することで、燃料として使った以上のプルトニウムを生み出すことを世界中の科学者が目指しました。

しかしそれから50年が経過して、フランス、ドイツ、日本、イギリスが増殖炉の原型炉を建設したものの、すべて失敗に終わりました。米国も原型炉建設に着手しましたが、建設費が5倍に高騰したため計画は放棄されました。技術的な難しさから日本の「もんじゅ」を除くすべての計画が放棄されたのです。

現在、原発を稼働している31か国のうち、民生用プルトニウムを分離しているのは6か国だけです。中国、フランス、インド、ロシア、イギリスの5つの核保有国と日本です。この中でフランスと日本だけは、今もって使用済み核燃料をすべて再処理すると計画しています。分離したプルトニウムは、MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物)にして通常の軽水炉に装荷するということですが、しかし天然ウランの価格が下落したこともありこれはコスト的に非常に割高となります。

再処理のコストや処分場問題をどうクリアするか

再処理をしない国では、水冷用の貯蔵プールが満杯になると、古い使用済み核燃料から取り出され、原発の敷地内で乾式キャスク貯蔵に移されます。世界最大の原発大国である米国では、運転中の37の原発と休止された10の原発で、敷地内での乾式貯蔵が行われています。

その理由は、プルトニウムを持たないという安全面と同時に、コストが安いというメリットがあるためです。

乾式キャスク貯蔵の場合、重金属1キログラムの処理コストは100~200ドルです。発電によって生み出された電力1キロワット時あたりで計算すると0.025~0.05セントでしかありません。それに対して再処理のコストは、重金属1キログラムあたり1000ドル以上にもなります。

使用済み燃料の最終的な解決方法は再処理である、と説明されることが多いのですが、実際には再処理でも高レベル放射性廃棄物とプルトニウムは地上に残ります。コストも高くつくことから、ほとんどの国で再処理よりも地上での乾式貯蔵、そして地中深くに埋める地層処分が主流となっています。

それでも地層処分場を見つけるのは政治的にきわめて難しいことであって、どの国も度重なる失敗とたいへんな努力をしています。福島第一原発事故の処理を抱える日本は言うまでもなく、各国とも大きな岐路に立っている原発問題ですが、2022年を境に世の中は大きく動き出そうとしているように見えます。

原発関連銘柄としてかつて株式市場の注目を一身に集めた三菱重工業(7011)東芝(6502)が、かつての輝きを取り戻すことができるのか。注目に値すると思います。

(参考文献)
篠田航一、宮川裕章(2016)『独仏「原発」二つの選択』筑摩書房
ジェレミー・バーンシュタイン(2008)『プルトニウム』産業図書
フランク・フォンヒッペル(2014)『徹底検証・使用済み核燃料』合同出版

三菱重工業(7011)月足、1999年~
東芝(6502)月足、1999年~

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