特に周知が必要だと感じている分野はどこでしょうか。

西沖さん まずは年金の分野です。個人年金を売りたいがために「公的年金はあてにならない」といって勧誘する事例を聞くことがあります。それを防ぐためにも公的年金に対する正しい理解が欠かせません。

さらに金融庁の中でも特に関心の高い分野の一つが医療保険です。自己負担限度額を超えた医療費が払い戻される高額療養費制度を知らずに、必要以上に民間の医療保険に加入することは適切ではありません

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改めて公的医療保険のカバー範囲をチェック!

高額療養費制度は大切ですよね。あの制度を利用すれば、必ずしも民間の医療保険に加入しなくても、あとは貯蓄でなんとかなると考える人もいます。

西沖さん とはいえ、高額療養費制度ではカバーしきれない医療費もありますし、公的年金だけでは、望んでいる老後生活に不十分な場合もあるでしょう。民間保険は公的保険を補完するものであり、必要な保障に必要な範囲で加入するためにも公的保険の内容を知ることが肝心です。

過不足なく保険に加入するために活用してほしい

公的保険ポータルの作成に当たって特に力を入れた点はどこですか。

西沖さん 大きく3つあります。まず1ページ目の一覧表です。人生に起こり得るリスクとそれに対応する公的保険、それを補完する民間保険の関係性をわかりやすく表現しました。

トラリピインタビュー

公的保険ポータルの一覧表
出所:金融庁『公的保険ポータル

老後の備えには老齢年金があることは広く知られていると思いますが、死亡に対する遺族年金は意外と知られていないかもしれません。個別のリスクと保障を紐づけて一覧表にしたのが特に力を入れた点です。

その上でそれぞれの解説ページを次ページ以降に設けました。さらに詳しく知りたい方に向けて厚生労働省の該当ページや、相談窓口の連絡先なども掲載することで、ポータルサイトとしての役割を高めました。

公的保険ポータルの中面
厚生労働省の該当ページや相談窓口の連絡先なども掲載することで、ポータルサイトとしての役割を高めている
出所:金融庁『公的保険ポータル

2つ目にプリントアウトすれば、リーフレットとしても活用できる体裁にしたことです。3つ目に公的保険制度を所轄する厚生労働省との連携を重視した点です。役所は縦割りの印象を持たれやすいものですが、このプロジェクトに関しては、頻繁に連絡を取り合いました。厚生労働省からは、正確性の担保などの面で貴重なコメントを数多くもらいました。

厚生労働省は4月末に「公的年金シミュレーター」の試験運用を開始しました。これは働き方・暮らし方の変化に応じて、将来受給可能な年金額を簡単に試算できるツールなのです。これと公的保険ポータルを連携させたいという思いもあり、公的保険ポータルから公的年金シミュレーターへのリンクも貼っています。

それでは私たちは公的保険ポータルをどのように活用すればいいでしょうか。

西沖さん ご自身がどのようなリスクに備えたいか、そしてそれに対応する公的保険と民間保険は何かという順番で一覧表を確認していただけると良いのではないでしょうか。そして、より詳細な情報を知るために、次のステップに進んでいただければと思います。

人生に起こり得るリスクに対し、適切に備えることが将来の安心につながります。その意味で、保険の果たす役割は重要です。ご自身のリスクを認識していただき、過不足なく保険に加入することが大切です。公的保険ポータルがそれをサポートします。

金融庁の金融経済教育の一環として、今後とも保険教育には力を入れていきたいと考えています。また公的保険制度は、制度変更もありますので引き続き厚生労働省とも連携し、情報をアップデートしながらより良いサイトにしていきますので、ぜひご活用ください。

これを機に公的保険制度への関心が高まることを期待します。本日はありがとうございました。

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