投資をしていると、さまざまなリスクに直面することがあります。注目している方は少ないものの、いざというときに重大なリスクになるかもしれないのが流動性リスクです。流動性リスクとはどのようなリスクなのでしょうか。投資をするうえで大きな失敗をしないようにしっかりと学んでおきましょう。
- 売りたい価格やタイミングで売れない流動性リスクは、有事の際に発生しやすい
- 流動性リスクが高くなりやすい金融商品は「中小型株」「現物不動産」
- 流動性リスクを避けるには、売買が成立しやすい金融商品を選ぶ
流動性リスク=売りたい価格やタイミングで売れないリスク
流動性リスクとは、保有している資産を売却する際に、売りたいタイミングで希望の価格で売れないことや、まったく換金することができないリスクのことです。
流動性リスクは、経済的なショックや紛争といった突発的な有事の際に発生しやすくなります。例えば、ウクライナ情勢の緊迫化によって、ロシアの資産に投資をしている商品は解約ができなくなったり、著しく低い価格でしか解約できなくなったりしました。また過去にも、リーマン・ショックのような経済的な危機や、アメリカの同時多発テロなど地政学的リスクが発生したときに流動性リスクが高まったことがありました。
流動性リスクが顕在化し、換金したいときに換金ができなくなると、個人投資家にとっても大きな痛手となる場合があります。すぐに換金できないことで、さらに魅力のある投資対象への投資ができなくなったり、タイミングによっては生活に必要な資金を確保できなくなったりする可能性があるからです。
流動性リスクが高くなりやすい金融商品とは?
流動性リスクが高くなりやすい金融商品にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的に確認していきましょう。
1. 中小型株
中小型株は大型株に比べて取引をしている人の絶対数が少なく、取引が成立しない場合があります。
いくら売りたいと思っても、買いたいと思う人がいなければ取引は成立しません。特に業界に逆風が吹くようなニュースが出た場合や、投資対象の銘柄に不祥事が起こった場合には、中小型株は売りが優勢となり取引が成立しづらくなります。
中小型株は成長力が高い企業も多いため、大幅な値上がりが期待できる一方で、流動性リスクが高いことも認識して投資をする必要があります。
2. 現物不動産
現物不動産は定期的に賃料収入が得られるうえ、株のように価格が短期間で大きく動かないため、安定して高い収益を確保することができます。しかし、不動産は売りたい時に売れるとは限りません。
現物不動産の場合、新生活が始まる前の2〜3月に取引が活発化するなど、季節性もあります。また、株などの金融商品に比べて換金までにかなり時間がかかる点も特徴です。
株式や投資信託の場合は売買が成立してから1週間程度で換金できることが多いですが、不動産の場合は不動産会社と仲介の契約をし、買主が見つかってから契約書を交わし、代金が振り込まれるまで1カ月程度かかることもあります。また、買い手がローンを組む場合には、ローンの審査に通らず、契約が無かったことになる場合もあるでしょう。
不動産は売ろうと思ってから現金化するまでかなり時間がかかるうえ、希望する価格での売却が成立しないこともあります。すぐに生活に使う可能性がある資金では、不動産への投資は避けたほうが賢明でしょう。
流動性リスクへの対策=流動性が高い金融商品を選ぶ
流動性リスクへの対策は、流動性が高い商品、つまり売買が成立しやすい商品を選んで投資するしかないでしょう。
流動性リスクが高くなると感じたら、事前に売却するという方法も考えられますが、流動性リスクが高くなることが予想される段階では、すでに値崩れが始まっていることがほとんどです。ウクライナ情勢の緊迫化やリーマン・ショック、同時多発テロなどの際には、瞬時にして流動性リスクが顕在化しました。
同じ種類の資産でも、なるべく流動性が高い方法で投資すればリスクを避けられます。例えば、不動産に投資をするのであれば、株式市場に上場しているJ-REITのほうが現物不動産より換金性は高くなり、流動性リスクは低くなります。
ただし、J-REITは不動産を金融商品化することによってコストが大きくなっている面もありますので、期待されるリターンは現物不動産と比べて、J-REITのほうが一般的に低くなります。メリットとデメリットをよく比較して検討するようにしましょう。
投資をする際は、利回りや値上がり期待だけでなく、流動性リスクにも注目して投資対象を選ぶことが大切です。