「資産運用に債券はいらない」……そう断言する専門家も一部にいますが、それは一部の局面だけを切り取った判断にすぎません。実際は金融市場にもライフステージにもさまざまな局面があり、その状況に合わせて、うまく債券などを取り入れていくことも必要となります。本記事では、どんな時に債券を取り入れたらいいのか具体例を紹介していきます。

  • 債券の金利が下がったために、海外債券の投資信託のパフォーマンスが低くなった
  • 債券は株式と反対の値動きを示す傾向があり、株価下落のダメージの緩和が可能
  • 近くまとまった資金が必要な場合などの「出口戦略」を考えるときに債券が有効

ゼロ金利・マイナス金利政策で債券の金利も低迷

十数年前から投資をしている方は、過去に比べると債券のパフォーマンスが落ちてきていることを実感しているのではないでしょうか。

以前は先進国の国債などでも年数%の金利がつき、海外債券に投資する投資信託は債券の格付けもファンドのパフォーマンスも良いと人気を集めていました。しかし、リーマン・ショック後は世界的に金利が下がり、国債だけでなく社債などの債券も金利が下がったため、以前のような資産の成長が望めなくなっています。

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世界的な経済情勢を鑑みても、債券型の資産だけでは資産を増やしづらい状況であることは間違いないでしょう。

欧州
ヨーロッパの政府機関が発行する債券を中心に投資する投資信託は、リーマン・ショック前は絶大な人気を集めたが、低金利の現在では高い収益を得るのは難しい

長い時間をかけて資産を増やすなら、やはり株式

債券は株式と比べて値動きが小さいものの、「ハイイールド債」と呼ばれる信用格付けが低い債券を除けば金利がほとんどつかないため、積極的に資産を増やしたい場面ではその力を発揮できません。また、債券価格は株式と逆の動きをしやすい傾向があり、インフレに弱いという特性もあります。

債券は額面上の利息は保証されますが、インフレが起こっても額面は変わらないため、物価が上昇する局面では、債券のリターンは実質的に下がってしまうのです。これに対して株式は、インフレも株価上昇要因として取り込んで成長していくので、インフレ不安をあまり心配する必要がありません。

お金を大きく増やす目的で資産運用をする場合は、長期的な経済成長を基盤に値上がりが期待できる株式を中心にポートフォリオを組みましょう。一般的に株式は債券に比べると値動きが大きく、タイミングによっては元本割れすることもあります。ただし、株価は短期的な上下を繰り返しながら基本的には成長していくものだと考えられています。こうした理由から、増やすための投資には株式を組み入れていくことが欠かせないのです。

債券の効果は「資産全体の値動きを小さくする」

債券は金利が低いからといって、まったく持つ意味がないかというとそうではありません。債券は値動きが比較的小さく、株式と反対の値動きを示す傾向があるので、運用資産に組み入れることで資産全体の値動きを小さくする効果が期待できます。

債券は世の中の金利が下がると値上がりする性質があり、金利上昇局面で値上がりしやすい株価とは真逆の性質を持っています。このように真逆の性質をもつ商品を組み合わせると、株価がもし暴落したとしても債券は連動して値下がりせず、ダメージの緩和が可能です。

株式だけだと値動きが激しすぎると感じる場合には、債券も一部取り入れて全体の値動きが小さくなるように調整するのも有効でしょう。

資産運用の「出口」を意識するときに債券が役立つ

長期投資には債券は向かないという話をしましたが、債券が役立つタイミングもあります。それは「出口戦略を考える必要がある」タイミングです。

例えば、結婚や住宅購入、教育資金などまとまったお金が必要なとき、リタイアが近づき老後資金が必要になるときなど、運用の出口が近い時に値動きが比較的大きい株式ばかりの資産だと、タイミングが悪ければ大事な資産を目減りさせてしまう危険性があります。

もう数か月で現金化するというタイミングに、運悪くリーマン・ショック級の大不況が起こる可能性もないわけではありませんが、こうした時に出口戦略を考えて資産のうち一定の割合を債券にしておけばダメージの軽減が可能になるのです。

お金が必要になるタイミングが近づいてきたら、運用資産の一部を株式から債券に振り替えて、徐々にリスクを軽減させていきましょう。

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