宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマは生命保険の見直し。物価の上昇で家計が圧迫される中で、保険料の支払いと保障内容の適切なバランスを、ある主婦の事例をもとに考えてみます。

  • 節約のための家計の見直しは携帯電話代→生命保険→住居費の順番
  • 医療保険は目先の入院リスクだけでなく、老後資金も考えて保障と保険料を見直す
  • 死亡保険の保障は遺族基礎年金・遺族厚生年金とあわせて考える

家計の節約には固定費の削減が有効

【質問】
30歳の主婦です。ここにきて食料品と電気代などの値上げで、主人とは小遣い紛争にもなりかねず、家計が深刻になっています。節約でよく聞くのが携帯電話と生命保険の見直しですが、どちらも見直しは必要ですか? 節約の優先順位と、いい見直し方があれば教えてください。

今回は、最近の物価上昇で苦しい家計をいかに安定させられるか?という相談です。物価は上がるが給与は上がらない日本、忍耐戦が始まりました。ご主人と小遣い紛争ということで、物価上昇が暮らしに与える影響はいよいよ大きなものになりつつあります。

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節約ですが、細かく考えると、やっぱり毎月固定で支払いをしている費用(固定費)の削減が手っ取り早いです。生活費の中で節約ないし削減の順位をつけるとするならば、代表格として①携帯電話の料金があるのは間違いありません。今では割安の携帯電話が乱立していますので、お店に足を運ぶだけで携帯電話の料金を半額以下まで削減できるかもしれません。実行あるのみですね。

電気代なども節約しようと思えばできますが、エネルギー価格が高騰しているうえ、ここにきての猛暑で熱中症対策も必要になるので、無理のない範囲で粛々とやるしかありません。それよりも、②保険の見直しを忘れてはいけません。

保険も大きく分けると損害保険、生命保険とありますが、特に生命保険は、保険に対する自身の考え方と実際の保障が妥当かどうかを吟味する必要があります。人生の3大支出といわれるのは教育資金、住宅資金、老後資金ですが、その全てにおいて生命保険が関係します。ここは専門家などに相談するのが賢明な判断でしょう。

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最後に③住居費です。住居には賃貸と持家がありますが、持家の方で、住宅ローンの借入残が多くあり(1000万円以上)、長期でローンが残っている(10年以上)場合は、借り換え前よりも借り換え後の金利が1%以上低くなるのなら、まずは銀行に金利交渉をいたしましょう。ただし、ローンを固定金利で借りている場合は、原則として変動金利への変更ができないなどの制約があります。住宅ローンが固定金利の方は借り換えも検討してみましょう。特に長期期間の固定金利で借りている方は、借り換えの効果は大きなものになるでしょう。

そして最後の最後に④お小遣いの交渉を穏やかに行ってください。できれば生活費の中にあらかじめ、預貯金や運用(NISA、iDeCoなど)の分を組み込んでおくのが理想形です。

入院リスク、死亡リスクに備えるために必要な保障は?

さて、今回は相談者の②生命保険の見直しを重点的に考えます。生命保険の保障を死亡リスク、入院リスクと大まかに分けて、それぞれどれだけ必要?と考えていくと、節約の方向性も見えてきます。

入院リスクに対する保障があるのは医療保険ですが、承知の通り日本は公的保険制度が充実しています。公的制度の保障がどのくらいかを正しく知れば、医療保険で必要な保障と、そのために支払う保険料の上限も見えてきます。目先の入院リスクに備えた医療保険の過大な加入よりも、長生きして老後資金がなくなることをリスクとしてとらえて、貯蓄を増やして先の準備をすることにシフトしましょう。

入院リスク
入院リスクに備えることは大切だが、保障を手厚くしすぎて保険料が高い場合は見直しの対象になる

続いて死亡保険ですが、保険に加入するときにいったいどれだけの方が、死亡保障がいくらあったらいいのかをきちんと考えたのでしょうか? 一般的には、勧められるままに加入したのがほとんどだと思います。

死亡保険を見直すために、加入者が今日亡くなったと仮定して、必要なお金を試算することから始めます。サラリーマンの方であれば遺族基礎年金、遺族厚生年金があることも頭に入れてください。

①遺族基礎年金
支給額:年777,800円
加算額:子1人目・2人目……+223,800円、3人目以降……+74,600円

②遺族厚生年金
支給額:老齢厚生年金の規定例により計算した額の75%

目安ですが、厚生年金に25年間加入して、月収が30万円だと、老齢厚生年金は37万円くらいになります。遺族厚生年金は老齢厚生年金の75%になるため、年28万円になります。この数字を覚えておくといいと思います。また、これとは別に中高齢寡婦加算もありますが、今回の例では該当しません。

遺族基礎年金・遺族厚生年金をもとに保障額を考える

今回の相談者に当てはめて、遺族年金の概算金額をはじき出してみました。ご主人が35歳で、平均標準報酬月額は30万円。30歳の妻と1歳の子がいて、生活費は月収の70%で21万円と仮定すると、

  • 子18歳まで、遺族基礎年金・遺族厚生年金は月々12.3万円
  • 遺族厚生年金は、65歳までと仮定して月々8.8万円
  • 奥様が65歳まで同じ生活を維持するためには、最大で4368万円必要

という結果となりました。これを死亡保険の保障額のベースとして、このほかに借金があればその分をプラスしていけばいいのです。しかしながら、実際は奥様も働くことになるでしょうから、死亡保障額を30%ほど削減して、節約できた保険料を生活費や資産運用のための積立投資に回すのもありだと思っています。

また、死亡保険には解約返戻金があり、一生涯保障が続く終身保険も人気がありますが、ここにきての低金利なので、終身保険の解約返戻金は厳しい状況にあります。終身保険はあくまで死亡保険と割り切って、積立型の運用と生命保険を分けて考えることも必要になります。

保険料を安くして、預金や資産運用で老後に備える

このように生命保険全体を見直すことで、毎月の保険料をかなり安くすることができるはずです。これからは65歳くらいまでの死亡保障(収入保障保険、定期保険)と、65歳からの保険は医療保険のみ。そして死後は今までの運用資産の一部をお葬式にあてる(生前準備)という発想もいいのかなと思います。

これからの入院リスクや死亡リスクにどうやって備えるのか? たとえば保険は掛け捨て、積立運用は金融商品(NISA、iDeCoなど)と割り切ってしまい、現預金があれば入院費(雑費)や介護費用だけでなく、長生きリスクの生活費に使えます。保険と現預金のバランスを考えながら、保険の見直しや保険料の節約を実行に移してください。

若い時代(65歳まで)は保険で賄い、老後(65歳から)は蓄えで生き抜く。そのためには、若い時代からお金を資産運用に回して、長期で積立をしておきましょう。

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