2023年度の税制改正に向けて、2022年8月に金融庁がNISAに関して制度改正の要望を発表しました。今回の記事では、その要望内容の確認と、制度改正後のNISAから投資を始めるのがいいか、制度改正前の現行NISAから始めるのがいいのかを考えていきます。
- 現行NISAを活用して投資を始めるか、2024年の新NISAスタートを待つか
- 現在の市場環境と今後の見通しを参考にNISAを始めるタイミングを考える
- 2022年、2023年の経済見通しはネガティブ。割安で購入できるチャンスかも
金融庁が要望しているNISAの制度改正
金融庁が取りまとめた「令和5(2023)年度 税制改正要望について」 の中で、NISAの抜本的拡充が要望されています。
要望のポイントは、
- 制度の恒久化
- 非課税保有期間の無期限化
- 年間投資枠を拡大し、弾力的な積立を可能に
- 非課税限度額の拡大(簿価残高に限度額を設定)
などです。
また、金融庁が描いている2024年1月以降の「つみたてNISA」のイメージは、以下の通りです。
- 年間投資枠を現行の年間40万円から拡大
- 非課税限度を現行の800万円(40万円×20年)から拡大
- 成長投資枠(仮称)の設定
- 成長投資枠では、上場株式や一定の商品性を持った株式投資信託などへの投資が可能
上記の金融庁が描いているイメージから考えますと、令和2(2020)年度税制改正で「一般NISA」を引き継ぐかたちで作られた「新NISA」に近い形になるように思われます。
新NISA | 要望案のイメージ |
---|---|
2階 102万円 上場株式・株式投資信託等 |
成長投資枠 上場株式・株式投資信託等 |
1階 20万円 つみたてNISA対象商品 |
つみたてNISA つみたてNISA対象商品 |
ただし、恒久化や非課税保有期間、年間投資枠などについて期間や金額などが要望段階で提示されませんでした。今後の動向を注視しておく必要があります。
2024年の制度改正前に利用できるNISA
2024年の制度改正前に利用できるNISAのうち、日本に住む20歳以上(2023年1月からは18歳以上)の方が現在利用できるものは「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類になります。
「一般NISA」は、非課税投資枠年間120万円、非課税保有期間最長5年。
「つみたてNISA」は、非課税投資枠年間40万円、非課税保有期間最長20年です。
それぞれの投資可能期間は、「一般NISA」が2023年12月末まで*1、「つみたてNISA」が2042年12月までです。
*1 一般NISAを引き継ぐ「新NISA」は令和5年の税制改正で刷新要望が出ているため一般NISAの投資可能期間を明記
また、それぞれのNISAで投資できる商品は、「一般NISA」は上場株式や株式投資信託など、「つみたてNISA」は金融庁が定めた要件(手数料や分配金の回数など)を満たした株式投資信託(2022年8月18日現在215本)になります。投資できる商品の数では「一般NISA」の方が多くなります。
一般NISA | つみたてNISA | |
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非課税投資枠(年間) | 120万円 | 40万円 |
非課税保有期間(最長) | 5年 | 20年 |
投資可能期間 | 2023年12月末まで | 2042年12月末まで |
投資できる商品 | 上場株式、株式投資信託など | 金融庁が定めた要件を満たした株式投資信託 |
どちらのNISAを選ぶかは、ご自身が投資したい商品がどちらのNISAにあるか、によります。
個別の株に投資したい場合は、選択肢が「一般NISA」になります。手数料などコストを抑えたい場合の選択肢は「つみたてNISA」になります。また、現時点での投資可能期間で比べますと「つみたてNISA」の方が安心して利用できるかと思われます。
NISAを始めるタイミングはいつがいい?
これからNISAによる投資を考えられている方の中には、現行制度の「一般NISA」「つみたてNISA」(併用は不可)を活用して投資を始めるか、2024年まで待って新制度になってから投資を始めるか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。
そのような方は、現在の市場環境と今後の見通しを参考にNISAを始めるタイミングを考えられたらよろしいかと考えます。
現在の市場環境は、インフレ対策を景気に優先するFRBやECBによる連続利上げにより、流動性のある(お金を借りやすい)市場から金利を意識した(お金を借りにくい)市場へ移行しています。このような市場環境になりますと、成長を期待する企業よりも足元の業績がしっかりしている企業が選好されます。
また、今後の見通しはIMF(国際通貨基金)が発表する「世界経済見通し」やOECD(経済協力開発機構)が発表する「経済見通し」が参考になります。
下表が直近発表された両機関の成長率予測です。
IMF世界経済見通し(2022年10月) | OECD経済見通し(2022年9月) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2021 | 2022 (予測) |
2023 (予測) |
2021 | 2022 (予測) |
2023 (予測) |
||
世界GDP | 6.0 | 3.2 | 2.7 | 5.8 | 3.0 | 2.2 | |
米国 | 5.7 | 1.6 | 1.0 | 5.7 | 1.5 | 0.5 | |
ユーロ圏 | 5.2 | 3.1 | 0.5 | 5.2 | 3.1 | 0.3 | |
日本 | 1.7 | 1.7 | 1.6 | 1.7 | 1.6 | 1.4 | |
英国 | 7.4 | 3.6 | 0.3 | 7.4 | 3.4 | 0.0 | |
中国 | 8.1 | 3.2 | 4.4 | 8.1 | 3.2 | 4.7 | |
インド | 8.7 | 6.8 | 6.1 | 8.7 | 6.9 | 5.7 |
予測では2022年、2023年にかけて下降していますので、来年も株価が調整される市場展開になるかと考えられます。
現在、投資信託を含めて株式投資をしている方にとっては厳しい市場環境になるかも知れませんが、これから投資を始める方にとっては、割安な価格で購入できるチャンスになるかも知れません。
以上、NISAを始めるタイミングに悩まれている方の参考になれば幸いです。