定期預金の金利がほとんど付かない今、「年利10%」は夢のような話ですが、世の中には高金利をうたう投資の情報もあふれています。本記事では、投資で年利10%は現実的なのか、いくつかの投資商品を比較しつつ解説します。また長期の資産形成では、具体的にどの程度の年利を目標としたらよいかについても考えます。
- 年利10%を長期間続けるのは難しい。高金利をうたう投資の勧誘は警戒すべき
- 年利10%は投資信託・ETF、株式、不動産、ヘッジファンドで実現できるか?
- 長期の資産形成なら「インフレ率+3~5%」を目指した投資が現実的
年利10%の運用を長く続けるのは難しい
ネットを検索すると「年利10%を10年継続!」といった景気のよい話は見つかりますが、現実的に考えると、どうやら年利10%の運用を長く続けるのは難しそうです。
年利10%を10年継続するということは、複利運用だった場合、10年で元金がおよそ2.6倍に増える計算になります。例えば、100万円の資金を年利10%で10年間複利で運用したとすると、1年で110万円、2年で121万円、3年で133.1万円、4年で146.4万円……といった感じで、10年後にはおよそ260万円になる見込みです。
米国の株価指数に連動する投資信託やETFを買った場合、2012年1月から2022年1月までの10年間では年利13%でした。しかし、その前の10年間では年利が平均1.5%程度となっているため、通常の投資手法で継続的に年利10%を目指すのは、あまり現実的とはいえないでしょう。高金利をうたう投資を勧誘されたら、最初から疑ってかかるのが賢明といえます。
それでは、米国株式の投資信託やETF以外の方法はどうでしょうか? 個人投資家が継続的に年利10%を目指せるかどうか、具体的な投資手法について検討していきます。
投資信託・ETF
投資信託やETFは、ファンドマネージャーが投資家の代わりに株式や債券などで資産運用を行い、運用に成功すれば利益が獲得できる金融商品です。投資信託だけでも6,000本近い商品が運用されており、その投資対象や運用手法はさまざまです。中でも新興国の株式や、国内株式でもテーマを絞って投資するアクティブファンドであれば、短期的には年利10%以上を狙うことも可能でしょう。
しかし、これは長続きする可能性は低く、保有する期間によっては利益がマイナスになってしまうこともありえます。したがって買い時と売り時を正しく見極める必要があり、投資初心者の方にはやや難しい投資といえるでしょう。
大きな収益を目指す投資信託は短期的な値動きが大きくなりやすいため、大きく値下がりしてしまうリスクを許容する必要があります。マーケットの状況によっては、期待に反して基準価額が下落した場合、ある程度下がったところで売却して、それ以上の損失を食い止める「損切り」も必要になるかもしれません。
株式投資
株式投資は、企業が発行する株式を購入することで、売却益や配当金を得る投資の手法です。大きく値上がりが見込める株式を安いうちに購入することによって、年利10%以上の収益を狙うことも可能です。10%どころか、数年で株価が10倍に上がる「テンバガー」も決して夢ではありません。
しかし、適切な銘柄を見つけられればハイリターンも可能ですが、購入した銘柄が暴落して1日で10%以上の損失が発生したり、会社が倒産して株が無価値になったりすることもあるため、注意しましょう。
株式の個別銘柄は投資信託以上に買い時と売り時の判断が難しく、銘柄選定だけでなく投資のタイミングも重要だといえます。株式投資で継続的に年利10%を得るためには、銘柄選定のために情報収集が欠かせませんし、値下がりしたら損切りするなど適切なリスク管理が必要です。
不動産投資
不動産投資は、アパートやマンションなどの建物を購入したり、分譲マンションの一室を購入したりすることで、賃貸として家賃収入を得る資産運用の方法です。購入した物件の地価が高騰すれば、物件を売却することで売却益を得ることも可能です。
不動産投資の利回りは購入する物件ごとにまちまちですが、地価が安い地域の物件では、年利10%以上を狙えるでしょう。ただし、不動産投資で年利10%以上を狙うには立地条件が特に重要となります。住み心地や最寄り駅からのアクセスなど、空室が発生しにくい優良物件をいかに安く開拓できるかがポイントです。
不動産投資には専門的な知識が求められるうえ、不動産を購入するためのまとまった資金が必要となります。また、空室が増えると、ローンの支払いや諸経費が賃料を上回って、収支がマイナスになることもありえます。物件を売却したくても、買い手が見つからなければ売れません。不動産投資には特有のリスクがあり、初心者には難しい手法といえます。
ヘッジファンド
ヘッジファンドとは、市場動向に関わらず常に収益を目指す運用手法です。投資信託と同じように、投資のプロであるファンドマネージャーが投資家に代わって資産運用を行い、運用がうまくいけば利益が得られる金融商品です。
ただし元本保証は無いため、確実に100%利益が得られるわけではありません。中にはヘッジファンドを名乗る詐欺ファンドも存在するため、リスクが大きく、損失を出す可能性も小さくありません。なにより運用手法が複雑なため、一般の投資家が適切なファンドを選び、買い時や売り時を見極めるのは難しいでしょう。
長期の資産形成なら「インフレ率+3~5%」が現実的
過去30年の米国S&P500指数は、年率8.5%程度の成長です。この間のアメリカのインフレ率は年平均2~3%程度なので、差し引きすると、実質的な成長率は約6%です。株式だけでの運用は値動きが大きいため、株式を中心に債券などと組み合わせて運用を行うことで、インフレ率+3~5%の運用が期待できます。
リスクの高い商品に投資すると、継続的に大きく増やすのは難しく、むしろ大きな損失を出してしまう可能性もあります。リスクを分散した無理のない投資で堅実な資産形成を目指していきましょう。