2022年の急激な円安進行で、iDeCoのポートフォリオ(資産配分)が崩れている人もいるかもしれません。円安から転じて円高基調にある現状に対応できるよう、一度、iDeCoのポートフォリオを見直しておくことが必要です。円高に向けてどのように見直すことができるのか、具体的に解説します。

  • 2023年は、為替・株式ともに環境が大きく変化する1年になりそう
  • iDeCoの運用が円安で恩恵を受けやすい資産配分になっている人は見直しもアリ
  • iDeCoの出口が目前に迫っている人は、安定運用に切り替えることを検討

iDeCoは定期的に見直したい

iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、国民年金の被保険者が任意に加入できる私的年金制度の1つです。

iDeCoに加入した人は、将来受け取る年金(もしくは一時金)のために、「掛金」を毎月もしくは毎年支払います。その掛金を、加入者はどの金融商品で運用するか、複数の選択肢の中から自ら選ぶことができます。iDeCoの運用商品は、元本割れのリスクがほとんどない「元本確保型」と、価格が変動し、元本を上回ることも下回ることもある「価格変動型」に分類できます。

新しいNISAの“裏技”教えます! ニッセイアセットマネジメントの情報発信&資産運用アプリ

加入者は掛金を支払いながら、これらの商品を長期的に運用して、貯まったお金を60歳以降に年金もしくは一時金として受け取ります。

iDeCoで保険商品は、ダメ。ゼッタイ。

iDeCoには掛金が全額所得控除になるなどの税制メリットがあり、節税しつつ老後資金を準備することがメリットです。

とはいえ、iDeCoは元本が保証された年金制度ではないことは知っておく必要があります。年金には「確定給付型」と「確定拠出型」の2種類があり、確定拠出型であるiDeCoはその名の通り、確定されているのは掛金をいくら支払ったかという「拠出額」だけです。将来受け取る年金の「給付額」を確定しているわけではありません。したがって、iDeCoは運用次第で利益を増やすことができますが、元本から大きく減らしてしまうこともあるので、運用する際には注意が必要です。

また、iDeCoでは、加入している年金制度によって掛金の上限が決まっています。例えば自営業の方は月6.8万円、会社員で会社の企業年金に加入していない方は月2.3万円、公務員の方は月1.2万円などと決められています。

この上限額の範囲内で、毎月(または毎年)の掛金を、どの運用商品にどれくらいの割合で充てるかを調整できます(配分変更といいます)。また、これまで運用してきた運用商品をほかの商品に変更することもできます(スイッチングといいます)。したがって、運用商品のポートフォリオ(資産配分)を定期的に見直して、最適な状態にしておくことが、将来受け取る年金額を増やすために、とても重要になってきます。

なお、配分変更は回数に制限がなく、手数料も無料で行えます。スイッチングも、少なくとも3カ月に一度は行えるように法令で定められています。こまめに運用成果をチェックして、思うような成果が上がっていないときは、資産配分を変更しましょう。

NISA拡充へ。今のうちに確定拠出年金も再確認

ここでポイントとなるのが、「どんな場合に、どうやって資産配分を変更するか?」ということです。今回は為替が円高方向に動く局面での、資産配分の見直しについて考えます。

円安だった2022年。2023年は円高に?

2022年は円安の流れでした。円安時はドルが強いので、米国株など外貨建ての資産が対象の投資信託で、為替ヘッジをしていなければ、円換算ベースで為替差益が発生していたと思います。例えば、アメリカの株価指数であるS&P500に連動する投資信託なら、円安のピークを迎える2022年10月までは、株価が不調でも円安の恩恵を得られました。

しかし、足元では急激な円安に一服感が出てきました。10月に1ドル=150円台に到達した後は、為替は円高・ドル安に傾いています。2023年になってもこの傾向は続き、1ドル=120~130円台で定着しそうな気配です。さらに米国の金利引き上げのペースも鈍化してきました。もし2022年までに、iDeCoの資産配分を円安・米利上げで恩恵を受けやすいポートフォリオに変更していたら、改めて見直しする必要があるかもしれません。

円売り要因はもはや乏しい、ドル/円は120円台へ

iDeCoの資産配分を見直そう!

2023年は2022年よりも円高に振れる可能性が高いと見ることができます。2022年秋までに大きく利益が出たポートフォリオは、2023年には適さないかもしれません。もし円安仕様、米利上げ仕様にポートフォリオを調整しているのであれば、調整前の元の配分に戻すことも検討できるでしょう。

また、円高時は日本株が冴えないといわれています。円安の2022年は、国内株価はアメリカと比べて底堅く推移しました。円高傾向に推移する可能性が高い2023年の日本株はどうなるでしょうか。

2023年は円高傾向
急激な円安進行から一転、2023年は円高傾向が続きそう

一般的に円高で恩恵を受けやすいのは輸入企業といわれていますが、上場企業に占める割合は、円安で恩恵を受けやすい輸出企業のほうが多くあります。そのため、円高=株価低迷といわれてきました。しかし、その構造も崩れつつあり、一概に円安=株価上昇、円高=株価下落とも言えなくなっています。実際に、2022年の急激な円安は、悪い円安といわれ、企業業績に与える悪影響も顕在化しました。

iDeCo・確定拠出年金で増やすには配分が重要

60歳目前の人なら短期運用に見直すのもアリ!

2023年は為替だけでなく、欧米のリセッション(景気後退)などの影響も受けて海外の株式市場も大きく下落する可能性があります。そのため、為替相場・株式市場ともに2022年よりも先行きの不透明感は高まるでしょう。

iDeCoは原則として60歳以降まで運用する制度です。年金を受け取るときは、運用を終了して利益を確定しなくてはいけません。長きにわたって順調に運用し、含み益を確保してきたにもかかわらず、運用を終了する時期によっては終了時点で株価が大暴落し、含み益が吹き飛んでしまう可能性があります。

iDeCoの出口のイメージ
iDeCoの出口が迫っている人は、ポートフォリオの見直しを検討したほうがいいかも

iDeCoの“出口”が迫ってきている人は、株式型の投資信託を売却し、保険のような元本確保型商品を増やすなど、早めに安定運用のポートフォリオに切り替えて、せっかくの含み益を下落リスクにさらさないほうがいいかもしれません。いまのうちにポートフォリオを見直しておくことを検討してもいいでしょう。

60歳以降もiDeCoの積立を続けた方がいい理由

一方、まだ10年以上の運用期間があり、世界経済の恩恵をバランスよく受けられるようなポートフォリオになっている人は、ジタバタする必要はありません。定期的なポートフォリオの配分変更は必要ですが、運用商品の大幅な入れ替えは、考えなくても良いでしょう。あと10年以上積み立てで運用できるのであれば、下落局面は安値で買うチャンスです。そのまま運用を継続し、資産を育てていきましょう。

せっかくのiDeCo、放置するのはもったいない!

メルマガ会員募集中

ESG特集