宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマは、生命保険の中でも近年利用者が増えている「変額保険」。もしもの自体に備えながらお金を増やすこともできる、資産形成の選択肢のひとつです。

  • 変額保険は「資産を増やせる死亡保険」だが、運用によっては減ってしまう場合も
  • 変額保険の最大のリスクは、増やす努力を自分でする必要があること
  • iDeCoと比較して、変額保険は選べる投資信託の種類が少ない傾向

変額保険は「資産を増やせる死亡保険」

【質問】
保険ショップに生命保険の相談に行ってきました。家内のために、自分が死んだときに少しでも多く保険金を残そうと思い相談に行ったのですが、「今だったら、資産を増やすのに変額保険がお勧めですよ」と言われました。死亡保障がほしいのに、変額保険って何なんですか?

今回は、生命保険の「死亡保険」にスポットをあてて考えていきます。
人生100年時代と言われるようになった人生にあって、逝く年齢はそれぞれ違います。若くして亡くなることもあるかもしれません。もし自分が亡くなったら、保険金はいくら必要なの? 必要な保険金などをもとに、生命保険の保障を決めることになります。

新しいNISAの“裏技”教えます! ニッセイアセットマネジメントの情報発信&資産運用アプリ

たとえば独身者と家族では必要な保険金も保障内容も違うので、保険の種類もさまざまなのは当たり前のこと。中でも若い人たちは、生きるだけでも精一杯なのに、死んだ後のことまでとても考えられないのが現状でしょうが、最近では死亡保険に加えて、資産を増やす機能がある保険商品がラインアップされてきています。それが「変額保険」といわれる商品です。

ここでおさらいですが、死亡保険は、自身が亡くなったときに、残された人に保険金を残すための保険です。死亡保険の中には、掛け捨ての「定期保険」「収入保障保険」と、掛け捨てではなく、「もしも」の時には解約してお金を確保できる「終身保険」とザックリですが分けることができます。分類するとすれば、終身保険の中に「変額保険」が入ってきます。

変額保険とは、読んで字のごとく保険金の金額が増減する商品です。保険金は毎日変動するので、一般的な終身保険のように、同額保障が一生涯続くのとは違ってきます。「貯蓄型」とも言われ積立貯蓄も兼ねている終身保険は、長年の低金利政策によって解約返戻金も低迷していますが、変額保険はうまく運用してナンボ、運用実績によって保険金の総額が変わってきます。減ることもあります。要は「資産を増やせる死亡保険」と考えてください。

変動
保険金の金額が運用実績によって変動するから「変額保険」と呼ばれる

変額保険の3つのリスク

変額保険はリスク商品ですから当然、自己責任で利用しなければなりません。安易に契約をしないよう、商品に対する理解がそれなりに必要です。中でも外貨で運用する終身保険など、2~3年前からいくつか新しい商品も出てきていますが、今回は変額保険の全体的な特徴について理解を深めていただきます。

まずは変額保険を利用する基本的な流れを、例をあげながら頭に入れていきましょう。

死亡保障が1000万円欲しいのであれば、保険金額を1000万円とします。期間は、終身保険なので一生涯(注意……有期型、満期期間が決められたものもあります)です。次に、保険料の払込終了までの期間を決めます(注意……有期型の場合。満期があれば満期まで)。

今回は払込終了を65歳とします。死亡保障は、保険料の払込終了までなら1000万円以上は確保されますが、払込終了後の65歳以降は、最低保障はありません。そして、65歳までの積立金の運用が好調かどうかで、死亡保障金額(満期時点の積立金額)が決まります。
要は65歳までに亡くなれば1000万円は保険金を確保できるが、それ以降はわからないということです。ここが変額保険の第一のリスクです。

次に第二のリスクです。加入契約してから5~10年間は、解約したら別途控除金がかかり、返戻金が減額され、損が確定されてしまいます。変額保険は、長期運用前提の生命保険と考えるべきです。

そして最大のリスクは、増やす努力は自分自身でしなければならないことです。変額保険が初めて発売されたのは20数年前のことでした。当時は確定拠出年金制度を確立させ普及させていこうとしていた時期で、まだまだ国民に資産運用など皆無に等しい時代です。発売されていた商品も、保険会社任せの運用でしかありませんでした。自己責任というよりは保険会社任せの運用で、安価な死亡保険と思われていたと記憶しています。私も契約していましたが、短期(6年)で解約していました。

変額保険の3つのリスク

  1. 保険金の最低保障は払込終了後になくなってしまう
  2. 早期解約の場合は返戻金が減額されてしまう
  3. 積立金の運用は自分自身でしなければならない

今の変額保険は、保険会社が提携先としている運用会社の商品(特別勘定として区分)を選び、アセットアロケーション(運用商品の配分)を自分で構築しなければいけないことになっています。iDeCoをやられている方はわかると思いますが、商品などのメンテナンスを、必要に応じてしていかなければならないかもしれません。

変額保険は運用が大切。努力次第で大きく増える

iDeCoのアセットアロケーション構築と、変額保険との違いは、変額保険では商品となる投資信託が8~9種類しかなく、リスク区分につき1~2商品ずつしかないので、よく言えば配分を決めやすいことです。商品をあえて少なくしているのは、保険外交員の質(売りやすさ)にも関係あるかもしれませんが……。今後は増えていくでしょう。

各社とも変額保険の運用実績は年3~6%を目安にしていますが、これを自分自身でやらなければいけません。逆に、努力すればそれ以上増やせるかもしれないことになります。保険外交員の方の知識やサポートがいかに大切になってくるか、おわかりになるかと思います。

近年、外貨建て保険の販売で苦情が相次ぎ、これを受けて金融庁がコンプライアンス強化に動いていることもあり、外交員の質は向上していくことだと思いますが、売りっぱなしの営業だけは勘弁です。保険料も以前と違って、生命保険会社の特徴(三大疾病、介護、保険料免除などの特約)もあり、安価とは言えないので、それだけ運用が大切になってきます。

お金を効率的に増やすためにある制度や商品として、NISA、つみたてNISAiDeCo、そして変額保険と、それぞれの運用法を理解して、自分に合ったものを選んで活用してください。

iDeCo・確定拠出年金で増やすには配分が重要

次回は、各社の変額保険の違いなどを考えていきます。

メルマガ会員募集中

ESG特集