宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、銀行に勧められるまま投資信託を買い、含み損が出てしまっている方からの相談。不安を抱える資産運用の初心者に向けて、どんな投資信託なら買ってもいいかをアドバイスします。
- 金利を上げてインフレを抑えようとする米国。日本も含めて株価の下落に注意
- 投資初心者が今買っておきたい投資信託の種類と、その買い方とは?
- 買ってはいけないのは高コストの商品。同じ時期でのまとめ買いも避ける
勧められるまま高コストな投資信託を3本も買った初心者
【質問】
2年前、銀行に言われて投資信託を買っちゃいました。そんとき、商品を分けた方がいいからと言われて3つまとめて買ったんだけど。そしたら今回はつみたてをやりませんか?と、また3商品です。2年前に買ったのが全部悪くて損ばっかりで、夜も寝られなくなり、何も手付かずになってしまいました。どんげかして儲からんと旦那に怒られるとよ。どうすればいいちゃろか?
今回の相談で、いまだに行われている現実にあっけにとられてしまいました。「こんなことをやっていたら長期投資が根づくわけがない」と、まざまざと思い知らされました。何もわからないところから初めて運用の世界に入ろうとしている初心者に、何でもかんでも商品を勧めていく金融機関の姿勢を改めない限り、日本のタンス預金が増え続けるのを防ぐのは困難でしょう。
ノルマノルマで追いかけられて金融機関が商品を勧めるのは、短期運用にはいいスタイルかもしれませんが、個人投資家が長い目でお金のことを考えられるようにならない限り、日本の資産運用に未来はないように思えます。
今回のケースでは、銀行に「分散投資」と言われたのに、なんと同じような世界株式型のコストが高い投資信託を、同じ日に3商品も購入させられてしまいました。全く分散できていない、同じような商品を買ってしまい、リスクを増大させる結果となりました。それなのに、今度は日本株式、世界株式、米国株式のつみたて? 勧めた銀行は何が行いたいのかわかりません。
当然、運用の初心者である相談者はリスクを理解しているはずがないのに、投資信託6本のお買い上げと、私が保有する商品よりも多い(笑)。なんか腹立ってきます。これでは金融リテラシーどころではありません。
日米の株安に備えた投資信託の選び方
そこで今回は、インフレに突入した今の日本で、買っておきたい投資信託と買ってはいけない投資信託を、独断と偏見で考えていきます。
相談者は、米国株式中心のファンド(投資信託)をメインに買っています。コロナショック前ぐらいから米国株の人気はうなぎのぼり、新規ファンドも次々と発売されていきました。米国は2007~2008年のサブプライムローン問題、リーマン・ショックと大打撃を受け経済は低迷期に入りましたが、2009年のオバマ大統領就任からインフレに向かい、緩やかな成長を刻んでいくこととなります。
日本とは言うと、米国から3年ほど遅れてアベノミクス相場が始まり、デフレ脱却のためにマイナス金利政策導入して経済成長を目指します。ここで米国と大きな差が生じます。日米の株価を見ると、日経平均株価は上昇しているようにみえますが、未だに1989年12月の最高値を抜けることができていません。米国のダウ平均は、同じ時期から約13倍も成長しています。特に2009年からの米国株の急成長は著しく、ここにきてのハイパー景気・ハイパーインフレへとつながっていきました。
米国では物価の高騰を利上げで抑えながら、景気が冷えないような政策をしています。当分は利上げを続けていくと思われますので、日米の金利差はますます広がるしかありません。円が安くなるのは避けられないので、日銀はその結果、緩やかに利上げに動くことになるでしょう。ということは、日本の株価も調整(下落)が必要だということです。米国株も、ここまで急成長した結果、調整(下落)になると思います。
それを踏まえていくと、投資初心者が買っておきたいファンドは、順番を付けるとすると
① 日本株式型のつみたて
② 世界株式型(米国株)のつみたて
③ バランス型(債券を多く含む)のつみたて
にしました。
①と②のつみたては、調整が入る相場では毎月の購入はうってつけであり、リスクも最低限ですみます。いずれ来る上昇相場で恩恵を得ることもできるでしょう。大幅に下落した時には、スポット買いも効果があります。①②で日本株式型を先にしたのは、日本株が割安だと思われることと、米国株は急成長からの反動がどうなるのか見えないところであり、それだけリスクも存在するからです。
③のバランス型は、日米の株価調整が続けば、今は安値圏にある債券価格の上昇も見えてきますので、リスクヘッジになります。
今「買ってはいけない」投資信託とは?
忘れてはいけないのは、コストがかからないものを選ぶこと、そして同じ種類のファンドは買わないことです。そして「買ってはいけない」とは、①②③を含むファンドを、一度のお金で買わないということです。先ほど①と②のスポット買いについて言いましたが、あくまでも積立投資をやりながら、下落時に買うということです。まとめ買いするほどリスクは高まります。絶対やめてください。「初心者はつみたての長期投資」が鉄則だということを忘れないでください。そして、できれば長期(10~20年以上)の実績があるファンドを選びましょう。
最後になりますが、相談者に対しては、つみたて自体はそのまま続けて大丈夫ですが、ファンドはコストが割安な1商品(日本株式型)だけにすることを勧めました。2年前にまとめて買った3商品(世界株式型)については、今は利上げによる株価のマイナスが大きいですが、長い目でみて、そのまま放置して上がるまで待っておくか? もしくは、お金を使う予定があれば一部解約もあるのか? 本人に任せることとしました。
とにかく、投資初心者はいきなり大きく儲けようとせず、長い期間を通じて儲けようと考えて運用しましょう。一攫千金は夢物語ですから。