宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、「使えるお金が減っている」と嘆く男性会社員を対象に、税金や社会保険料を引かれる毎月の給与の中で「将来のために残せるお金」を増やす方法を考察します。

  • 年末調整の保険料控除は活用したいが、保険にたくさん入ればいいわけではない
  • サラリーマンが「残せるお金」を増やす主な方法は、医療費控除とふるさと納税
  • 医療費控除もふるさと納税も「使ったお金を取り戻す」制度といえる

保険料を払いすぎると、お金を残すのが難しくなる

【質問】
毎年じゃけど、新年度になるたびに給与明細を見るのが怖くなります。使えるお金が減っている気がするわ。お昼はワンコインで済ましています。お金が減ってると思うのは僕の錯覚なんでしょうか?

前回は、給与所得者の年末調整による「使えるお金」の増減を考察していきました。結果、普通に給料を稼ぎながら使えるお金を増やすには、生活の基盤を守るための保険(生命保険料、地震保険料)を基軸として、個人型確定拠出年金(iDeCo)を活用していくしかないと結論付けしました。

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「給料の中で使えるお金」をiDeCoで増やす

年末調整の保険料控除では、生命保険料控除(最大12万円)と地震保険料控除(最大5万円)の最大17万円、所得から差し引ける金額が減るだけです。ただ、最大の控除を使うことが決していいこととは限りません。そもそも論として「保険にたくさん入れば安心だ」はあまりにも短絡的な、保険好きといわれる日本人の悪いところの現れです。必要最低限で安心を得るように、保険のリストラは必要なはずです。

これからの「生きていくためのお金」を考えるとすれば、「今の生活基盤を守る」ことから、「将来の生活基盤を守る」ことを重視することになり、そのためには運用をiDeCoをメインにシフトしていくことが当たり前のことになっていくはずです。今、保険料を払いすぎると、将来は間違いなく生活自体ができなくなりますので。

「残せるお金」を増やす医療費控除とふるさと納税

このように、サラリーマンは基本的にやれることは限られてきます。しかし、サラリーマンでも確定申告をすることを前提にして考えると、「残せるお金」を増やせる方法も見えてきます。その代表格として、2つの方法があります。①医療費控除は、1年を通して支払った医療費の合計が一定の金額を超えたときに、確定申告をすることによって支払う税金を少なくして、還付金で返してもらうことができる制度です。そして②寄付金控除(ふるさと納税)は、自分が納税したい自治体に寄付をして、さらに自治体から返礼品を受け取れる制度です。

カニ鍋
ふるさと納税は納税者にとってメリットが大きい制度であり、利用者も件数も伸び続けている。2021年度の受入額は約8302億円にのぼった(写真はイメージです)

今回は、この2つの方法について考えていきます。そして次回は、累進課税の仕組みを利用した総所得の税金対策について触れていきます。税金対策は面倒なものであり、思い切り、そして勉強が必要になってきますが、「残せるお金」を増やすために求められるのは少しの知識と、そして「やるか?やらないか?」であろうと思っています。

①医療費控除(最大200万円)

医療費控除は、かかりたくない病気や怪我などを患った際に、必要になったお金と理解していけばいいです。通院や入院時の交通費(タクシー代など)、入院中の食事代や差額ベッド代も含まれます。

医療費控除は、医療費が年間で10万円を超えるケースしか使えないと思われがちですが、所得が200万円未満の方は、10万円を超えていなくても、総所得の5%より医療費が高ければ医療費控除が適用されます。ただし、保険金が出ているとその分を差し引かないといけませんから、保険好きの方にはあまり恩恵はないかもしれません。

そして、「セルフメディケーション税制」として、税制の対象となる医薬品を1.2万円以上購入した場合には、控除の対象になります。(最大8.8万円)。こちらも医療費控除の一つになりますが、2つは併用できないので、医療費控除と比較して控除額が大きい方を選択する必要があります。

家族で住まれている方は、一緒に住まれている家族の1年間に支払った医療費が控除の対象になりますが、この計算は結構めんどくさいもの。家族の医療費までこまめに管理できるか? 家計の代表者である、所得が多い方ががんばって申告するようにしましょう。

病院でけがを治療
けがで通院するなどして医療費の出費が増えたら、確定申告をして医療費控除を活用したい

②ふるさと納税(寄付金控除)

ふるさと納税は、自分が住んでいる自治体に納めるはずの税金を任意の自治体に寄付することで、住民税や所得税が控除される仕組みです。

通常、会社員は「ふるさと納税ワンストップ特例制度」で年末調整をしている方が大半です(所得税からの控除は行われず、その分も含めた控除額の全額が、翌年度の住民税から控除される)。確定申告をすることによって、所得税と住民税の控除がそれぞれ決まり、所得税分はその年の所得税から還付され、住民税は翌年分の住民税から減額されます。ワンストップ制度を活用した方は、年末調整で戻ってくるお金はないことを理解しておきましょう。また、6つ以上の自治体に寄付した場合や、医療費控除や住宅ローン控除(最初の年度)がある場合には確定申告が必須です。

全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安は、総務省のふるさと納税ポータルサイトで確認できます。

控除の上限は納税額によっても異なりますが、控除される金額は寄付金から2000円を引いた金額と決められています。勘違いしてはいけないのは、ふるさと納税では、あくまでも返礼品という「物を買っている」という事実です。自治体に寄付して、代わりに寄付金の3割以内で返礼品を受け取っています。仮に6万円寄付した場合、58,000円の税額控除と18,000円の返礼品をもらえます。自治体にとっては、お金を物に交換して税収不足を補う手段ともいえます。ふるさと納税は余裕資金で行うことは当たり前のことです。

「残せるお金」を増やす医療費控除とふるさと納税

医療費控除もふるさと納税も、注意点としてはどちらも「使えるお金」が増えるというよりも、「使ったお金」を取り戻す制度であることは知っておきましょう。結論として、今と将来の「使えるお金」を増やせるのは、iDeCoのみになってきます。

次回は「使えるお金を増やす」シリーズの完結編。お金を増やすための「究極のステップ」です。

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