現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第54回は、オンライン講座などを通じた社会人教育を手がけ、年間で3万件近い研修を実施しているインソース(6200)をご紹介します。

  • インソースは現場の社員を対象とした研修を通じて、顧客企業の業務改善を促す
  • インソースの研修は講師ではなく専門スタッフが開発するため、迅速な対応も可能
  • 政府のリスキリング支援を追い風に、インソースの株価は戻り余地に期待

インソース(6200)はどんな会社?

インソース講師の派遣や公開講座、オンライン講座などを通じた社会人教育を手がける会社です。「人」と「人が使う仕組み」の「変革を支援する」ための研修、コンサルティングを提供しています。

2003年に舟橋孝之代表取締役社長が、社会人教育を手がけるベンチャー企業として会社を立ち上げました。創業時は戦略コンサルティングの会社でしたが、その仕事の中で、業務改善や変革をトップマネジメント主導で促すよりも、現場の社員一人ひとりに働きかけて、意識や行動を変えていく方が改善や変革が早く進むという気付きを得たことが現在につながっています。

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インソースという社名は、“Inside”(内側)と“Source”(源)を組み合わせています。日本企業では、業務効率化や人員削減のために業務のアウトソーシング化が進んでいます。しかし、行き過ぎたアウトソーシング化は社内の人材育成を困難にする可能性があります。こうしたことから顧客の組織の活性化を使命とするため、社名を「アウトソース」の反対の「インソース」としています。

オンライン研修
インソースはオンライン研修を通じた社会人向けの人材教育を手がけている(写真はイメージです)

インソース(6200)の強みは?

インソースの強みは、多くの良質な研修コンテンツです。

インソースでは、研修コンテンツを講師ではなく、自社の専門スタッフが開発しています。 研修の受注から実施までの期間は年々短くなっており、その短期間でカスタマイズを行い提供するためには、講師が日中に登壇している場合は、講師はコンテンツの開発に十分な時間を取ることができず、対応することができません。

インソースでは140人(2023年6月末時点)の熟練した専門スタッフが、過去の研修などをベースに迅速に研修を開発することができます。そのため、低コストで最適な内容の研修を提供することが可能となりました。

トラリピインタビュー

これにより、2022年7月~23年6月までの1年間で、364名の講師により、年間で28800回の研修を実施し、約70万人が研修を受講しました。

インソース(6200)の業績や株価は?

インソースの今期2024年9月期は売上高が前期比16%増の125億円、営業利益が17%増の45億円と、増収増益かつともに過去最高を見込んでいます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)のための人材研修のニーズにあわせて、引き続き年間300本以上のコンテンツIP(知的財産権)の開発を進めます。また、多言語対応も進めていき、人事の教育部門以外にもターゲットを広げていく予定です。

11月10日の終値は1037円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約11万円、予想配当利回りは1.45%です。

政府は構造的賃上げや人手不足の解消のほか、「人への投資」が日本経済再生のカギを握るとして、リスキリング(学び直し)支援に5年間で1兆円を投じる方針を掲げています。また企業主導の研修だけでなく、個人の自発的な学習にも支援を拡大する方向です。2024年度には、非正規従業員向けに対面とオンラインを組み合わせた新たな職業訓練も試験的に開始します。

こうした中でインソースの多様かつ良質な研修コンテンツや研修ノウハウは、引き続き企業や自治体などに向け需要が高まるとみられます。

インソースが厚生労働省「能力開発基本調査」および総務省「労働力調査」から算出したデータによると、社会人教育の市場規模は2025年に約4000億円に達すると予想されますが、現状のインソースの市場シェアは約2%に過ぎないことから、研修事業の伸びしろは大きいと考えられます。

【図表】インソース(6200)の株価(2022年10月~直近、週足)
【図表】インソース(6200)の株価(2022年10月~直近、週足)

株価は2022年11月の上場来高値1845円からは下落トレンドが続いており、10月24日に年初来安値824円を付けています。しかし決算発表以降は、業績の拡大期待で株価は戻り基調となり、中期の75日移動平均線を抜けてきました。株価は10月の年初来安値でいったん底入れしたとみられ、株価の戻り余地は大きいとみています。

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