2024年1月4日から新NISAがスタートします。今回は主に「つみたて投資枠」と「成長投資枠」のそれぞれの枠で投資できる金融商品はどのように選ばれるのか、その対象となる基準と、成長投資枠を利用する際の注意点について見ていきます。
- つみたて投資枠の商品の基準は「長期・積立・分散に適したもの」
- 成長投資枠では、債券やREITのみで運用する投資信託も対象になる
- 成長投資枠で投資信託を選ぶ際には、償還の時期に気をつける
新NISAのつみたて投資枠は、現行のNISA(2023年末まで)におけるつみたてNISAと同じ商品(ファンド)が対象商品とされています。261本(2023年11月22日現在*1)の投資信託・ETFが対象となります。
また、成長投資枠の対象商品のうち、ETFを含まない投資信託の数は1722本(2023年11月1日現在*2)です。なお、成長投資枠の対象商品には、つみたて投資枠のファンドもすべて含まれています。
*1 金融庁「つみたてNISA対象商品届出一覧」
*2 投資信託協会「NISA成長投資枠の対象商品」
つみたて投資枠の対象商品の基準は?
新NISAのつみたて投資枠は、現行のつみたてNISAと同様の対象基準です。以下、つみたてNISAの対象基準について見ていきます。
つみたてNISAの対象基準は、
長期・積立・分散に適したものとして、一定の要件を満たす株式投資信託やETF
となっています。
この「一定の要件」は、①株式投資信託(一般的な公募投資信託)とETF(証券会社で取り扱う上場投資信託)の共通要件、②株式投資信託(インデックス型、アクティブ型)、③ETFと、それぞれに個別の要件があります。
①の共通要件は、以下の3つです。
- 信託契約期間が無期限または20年以上であること
- 分配頻度が毎月でないこと
- ヘッジ目的の場合などを除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと
②のうち、インデックス型の個別要件としては、
- 指定されたインデックス(株価指数など、市場全体の動きを表す指標)に連動していること
- 主たる投資対象に株式を含むこと
- 販売手数料はノーロード(無料)
- 決められた信託報酬以下であること(国内資産対象0.5%以下、海外資産対象0.75%以下)
などがあります。
ちなみに、つみたてNISAで指定されたインデックスには、米国を代表する株価指数である「NYダウ」や「ナスダック100」は入っていません。つみたてNISAでは、上記のインデックスに連動するファンドは、アクティブ型の対象ファンドとして扱われています。
米国株でつみたてNISAの対象として指定されたインデックスは、米国の主要500社を対象とした「S&P500」と、米国株式市場の投資可能銘柄のほぼ100%をカバーしている「CRSP U.S. Total Market Index」の2つです。
そして、上記②のアクティブ型の要件としては、
- 純資産総額50億円以上
- 信託設定(ファンドの運用開始)以降5年経過
- 主たる対象資産に株式を含むこと
- 販売手数料はノーロード
- 決められた信託報酬以下であること(国内資産対象1.0%、海外資産対象1.5%以下)
などです。
最後に、③ETFの要件は、
- 指定されたインデックスに連動していること
- 投資対象資産が株式であること
- 最低販売単位1,000円以下
- 販売手数料は1.25%以下
などがあります。
また、②のインデックス型とアクティブ型の要件に「3. 主たる対象資産に株式を含むこと」とありますように、株式に投資するファンドや、株・債券・REIT(不動産投資信託)などに分散して投資をするバランス型ファンドはつみたてNISAの対象となりますが、それ以外の株式に投資しないファンドはつみたてNISAでは投資できません。これは、新NISAのつみたて投資枠でも同様です。
成長投資枠の対象商品の基準は?
投資信託に関する新NISAの成長投資枠の対象基準は、つみたて投資枠の共通要件である
- 信託契約期間が無期限または20年以上であること
- 分配頻度が毎月でないこと
- ヘッジ目的の場合などを除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと
が対象基準です。また、個別株では、整理・監理銘柄への投資は成長投資枠の対象外になります。
成長投資枠の特徴として挙げられるのは、投資信託の要件では「主たる投資資産に株式を含むこと」がない点です。国債などの債券やREITのみで運用するファンドも、成長投資枠の対象になります。
新NISAで、株式が含まれるバランス型ファンドではなく、株式以外の資産(債券やREIT)へ投資をしたい場合は、成長投資枠の対象商品での運用を検討するといいでしょう。
成長投資枠で投資信託(ETF除く)に投資する場合の注意点は?
最後に、新NISAの成長投資枠で、ETFを除く投資信託に投資する場合の注意点について見ていきます。
投資信託協会が公開している「NISA成長投資枠の対象商品」を確認しますと、対象商品1722本のうち、1392本が信託期間無期限となっており、信託期間の設定のある商品は330本です。
この330本のファンドについて、それぞれの償還年(信託期間終了年)を集計したのが下のグラフです。
償還期間ありのファンドのほとんどが、2024年に新NISAがスタートしてから30年程度で償還を迎えます。若い方で長期運用を考えている方は償還年(日)にも注意を払いましょう。
また、成長投資枠の要件に合わせるように、信託約款で信託期間を延長(2044年以降または無期限)に変更しているファンドも見受けられます。投資信託での運用を考える際はファンドのホームページで確認することをお勧めします。
以上、新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の対象商品となる要件の違いと、成長投資枠で投資をする場合の注意点について見てきました。