現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第58回は、ソフトウェアのテストや品質保証、各種コンサルティングサービスなどを通じて企業のIT業務を支援するSHIFT(3697)をご紹介します。

  • SHIFTにはテストに特化したエンジニアが多く在席し、高品質・短納期を実現
  • SHIFTはM&Aで事業を拡大。売上高は上場後40倍、従業員数は73倍に成長
  • 株価は上場来高値圏で推移。今後はコンサルティング業務の需要拡大に期待

SHIFT(3697)はどんな会社?

SHIFTはソフトウェアの品質保証やテストを軸に、コンサルやマーケティングを手がけています。そのほか、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関するサービスなども手がけています。

社名のSHIFTは、「世の中の価値観をシフトさせていきたい」との思いが込められています。
同社は2005年、丹下大社長によって創業されました。丹下氏は、創業前に製造業向けのコンサルティング企業で働いていた経験を活かし、企業のソフトウェアの不具合のテスト事業の効率化を実現し、祖業として大きく成長させました。

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ソフトウェア業界では、開発したエンジニアがソフトのテストを行うことも多いのですが、コストも高く時間もかかります。SHIFTは独自の検定を突破したテストに特化したプロのテストエンジニアを多く抱えていることもあり、より高い品質かつ短納期でテストなどを行うことができる点を強みに、企業から受注を拡大させました。

また、現在ではテストを入り口に、デザインやマーケティングなどさまざまな分野のエンジニアによるサービスで、企業の事業そのものをコンサルティングするスタイルに業容を変貌させ、事業成長を続けています。

人を集めて育てる力で急成長が続く

SHIFTはM&A(合併・買収)なども用いながら事業成長を続けています。売上高は株式を上場した2014年度の21億円から、2023年8月期の880億円まで約40倍以上に成長しました。上場当時の従業員数は148名でしたが、前期末時点では1万1895人と、73倍になっています。
この間に、高い品質やサービスを顧客企業に評価されたことによるエンジニア単価の拡大や採用強化もあり、実力のあるエンジニアがさらに集まるという好循環が続いています。

未経験の中途採用のエンジニアでも操作の基本から一通り学習し、その後は先輩エンジニアをサポートしながら、現場での訓練(OJT)で戦力となるためのノウハウを私有得するカリキュラムが用意されています。
また、ITスキルと密接に連動した給与体系により、スキルアップに対するモチベーションを高める制度となっています。

2018年にはキーエンスで元社長を務めた佐々木道夫氏を社外取締役とし、組織運営や法人営業のノウハウを提供してもらうなど、元大企業出身者で知見のある人物を多数登用しています。

SHIFT(3697)の業績や株価は?

SHIFTの今期2024年8月期は売上高が前期比30~39%増の1140~1220億円、営業利益が0~26%増の116~146億円を見込んでいます。

顧客企業へのクロスセル・アップセルなどの営業活動の強化もあり、ソフト開発・テストのエンジニア単価の上昇が続いています。
業界別でもほぼすべての業界で売上高が伸びています。特にエンジニアの不足する自動車産業、ニーズの高い保険・証券業向けが大きく成長しています。

【図表】SHIFT(3697)の株価(週足)
SHIFT(3697)の株価

1月5日の終値は33760円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約338万円です。最低投資金額が大きいので投資しづらいという方は、証券会社の単元未満株で取引できるサービスの活用をお勧めします。

株価は中長期で上昇基調が続いています。2023年も8月から10月にかけては下落トレンドが続いていましたが、売り一巡後は上昇の値動きに回帰し、上場来高値圏で推移しています。

主力のソフトウェア関連サービスだけでなく、コンサルティング業務で企業から求められる付加価値がさらに広がりつつあります。上場企業のIR(投資家向け広報)や株式マーケットに対する向き合い方などの、企業価値の向上を目指すコンサルティング業務などのニーズも増えています。また、営業支援、採用コンサルなどについても顧客から要望があるとして、サービスとしてのスタートを検討しています。

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