宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマは「新婚夫婦の生活設計」。生活のためのお金から老後資金まで、毎日の生活を楽しみながら、どのように運用していくのがいいのでしょうか。
- 若い世代の人生設計は「楽しみ」が大切。息抜きのための時間とお金も必要
- 老後資金はiDeCoがベース。大きな買い物の資金はNISAで投資信託を運用
- 夫婦で投資先を分けることでリスク分散ができる。贈与でNISAの有効活用もあり
夫婦で息抜きする機会とお金も大切
【質問】
その節はありがとうございました。いよいよ結婚しました。2人でエンジョイして子供を授かって、家も欲しい~! 夢はふくらむばかりで、これからの生活を楽しみにしています。そのためにはお金もないと困るので、NISAで積み立てを最近始めました。彼女もサラリーマンですけど、何もやっていないみたいです。今ではNISAはマスト、当たり前のことなんで、彼女にもやってもらいたいのですが、良いんですよね、私の考えを押し付けて。
本当にご結婚おめでとうございます。相談者には今年2月(第106回)でも、おめでとうを言っていますので(笑)2回目のお祝いですね。
当時は、「共働き夫婦の生活設計」と題して結婚、子育て、マイホーム購入と、人生20代の転換期について探りました。若い世代の人生設計は、楽しみを入れていかないと続くわけがありません。そうでないと、キャッシュフロー表「未来が見える年表」を作るとわかるように(第115回相談室をご参照ください)、さまざまな困難が待ち受けることが明白です。
毎日働いて忙しい中でも、夫婦での息抜きは夫婦円満の絶対条件だと思って、毎年夫婦でレクリエーションをする機会など作ってくださいね。ただ、息抜きのためにはお金は多少なりともかかってきます。家や車の購入など大きいお金を動かすためには、以前からそれなりに考え、行動に移すことをすでにやっていると思いますが、息抜きのお金は、その時次第で財布から出ていくだけになっているでしょう。
お金を目的別に4つに区分する
大なり小なり夫婦でお金の運用をする時は、大きなお金を使う時期と目的について、よく話し合うことが大切になります。今回は、前回お話ししていない、夫婦でやるNISAなど具体的な運用法について、お金の目的別に説明していきます。
お金を目的別に区分すると、①生活の中での出費、②生活を維持するためのお金、③大きな買い物の資金、そして④老後資金の4つになります。このうち、息抜き出費は①生活の中での出費に該当します。
私の息抜き出費の源でもあるお金の運用は、高いリスクはありましたが以前は1本の投資信託で賄っていました。当時は毎日の損益を考えず「ほったらかし」を実践していましたが、結果的には良かったと思っています。今思えば全部のお金を1本の投資信託に頼っていたとは驚きですが、言ってしまえば、それでもリスクが取れれば(短期的な損失を許容できれば)運用も可能だということです。
そこで今回は、夫婦でお金を貯めるのに、NISAを使ったやり方が良いのか、あるいは別の方法があるのかを、①~④のお金の支出で分類して考えていきます。
老後資金のベースはiDeCo。月5000円でも十分
まずは①~④の資金別に、運用期間とお金の使途が違ってきますので確認しておきます。
①生活の中での出費
日常の生活費がベースになります。1か月の生活費を、お金(現預金)で確保しておきます。
②生活を維持するためのお金
半年から1年間の生活費と、病気、災害などのように、急に必要になるお金のことです。
③大きな買い物の資金
持ち家や車の購入など、大きな買い物の頭金などに準備するお金で、数年間にわたって必要になるお金のことです。
④老後資金
老後のために、長期にわたって準備するお金です。
これらのお金の管理は夫婦でするものですが、優先順位としては、③や④のように長きにわたって準備するお金が一番大事になります。相談者は23歳と若く、ベースとなる長期投資が充分実践できますので、④の老後資金を準備するためにiDeCo(個人型確定拠出年金)で基礎固めをしておきましょう。もちろん夫婦で加入ですが、長期間積立ができるため、掛金は無理なく月5000円で充分です。
iDeCoは月5000円でも、年5%複利運用でしたら60歳時点で約626万円、夫婦で約1252万円にもなります。あとは収入が上がれば掛金を増やしていく感覚でいいと思います。iDeCoは掛金全額に所得控除の恩恵があり、退職時には最大の退職所得控除や公的年金などの非課税枠の控除が2人分使えると言うわけです。
夫婦でNISAを活用してリスクを分散
これでベースは決まったわけですので、次は期間によるNISAを使っての投資信託などの活用法です。
私は全てにおいて自身がベースの投資信託で運用していたわけですが、夫婦でとなると、お互いの投資信託でリスクを分散させることができます。例えば、夫は株式中心、妻は債券中心というような商品構成にしておきます。ただ経験上、ポートフォリオは少しでも株式にウエイトをおく方が良いと思われます。
商品は、まずは夫婦別々に1本の投資信託で運用をし、余裕資金があるのならリスクが違う商品を増やすなどしていきます。使う用途は、①~④全てにおいてNISA商品はあり得るのですが、以下のようにするといいでしょう。
①生活の中での出費
主に現預金がベースになります。
②生活を維持するためのお金
健康、損害、賠償などに対応できる保険商品がベースになります。
③大きな買い物の資金
NISAを使った運用がベースになります。
④老後資金
iDeCoと、NISAでの運用がベースになります。
ただ、③大きな買い物の資金は5、6年の短期間となってきますので、運用商品にも限りがありますが、ここで夫婦の運用商品をリスク別に分けることで分散することが可能となります。夫婦で月5万円、5年間を積み立て運用し、年2%で運用したとすれば約316万円貯めることができるので、このお金を住宅購入、車購入の頭金、子育てのための教育資金に充てるなどするといいと思います。
また、夫婦間でどちらかに余裕があれば、年110万円の非課税枠で贈与しながらNISA枠を使いきることも考えられます。ただ、根拠は残しておくのは忘れずに。
そんなに余裕ないよと言われるかもしれませんが、共働きであるからできる運用なので、お二人の力があってのこと。問題は時期です。現預金は②生活を維持するためのお金を見ながら、ある程度残金を残すことを目標にして、①生活の中での出費のために日々の現預金が余るように計画するといいかもしれません。
新婚夫婦の生活設計で、お金以上のリスクとは?
冒頭で述べましたが、①の出費が一番リスクが高いし、大切にしなければいけないものです。日々の生活の中でいかに普通預金残高を残せるか、実践するのは大変でしょう。それよりも一番のリスクとは「お互いの思いやり」がないがしろになってしまう危険です。夫婦は長きにわたり寄り添える関係です。継続的に使える夫婦のお金が、生活の価値を高めることができます。コツコツと使うことができるお金が夫婦円満の秘訣です。
お金はたくさんあれば幸せとは限りません。お金を使った過程と、使うことができる環境が大切です。そのためにも運用は大事なことです。