「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回も前回までに引き続き、テーマは「為替」。基軸通貨と呼ばれる米ドルが今後も強いとは限らないという想定のもと、ドル以外への分散投資を考えます。

  • 「もはや世界の警察官ではない」と言ったアメリカ、その真意とは
  • 米国社会の分断と中間所得層の生活苦も「アメリカ一強」の終わりを思わせる
  • アメリカ以外の通貨に注目。投資信託ならNISAを活用して分散投資ができる

本稿がUPされる頃は、まさにアメリカ大統領選挙前夜というところでしょうか? おそらく、本稿の読者の多くの方は、誰も投票権を持っていませんよね。でも、2週間前に行われた、選挙権のある衆議院選挙よりも関心が高いのではないでしょうか? それだけ、アメリカ大統領選挙は世界への影響力が大きい、ということなのだと思います。しかし、そんなアメリカの影響力も……。

総理大臣が変わっても円安が続く

アメリカの影響力は小さく?

ウクライナとロシアの戦争、イスラエルによるガザ地区やレバノンへの攻撃は、本稿執筆時点(2024年10月11日)でいまだ止まっていません。間もなく終わりを迎えるアメリカ現政権はアフガニスタンから撤退しています。そのため、アフガニスタンの、特に女性は理不尽な差別に苦しめられています。

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「アメリカはもはや世界の警察官ではない」と断言し、世界を驚かせたのは、今から10年ほど前のオバマ大統領でした。筆者は、この宣言を「アメリカは世界平和に注力する」というメッセージとして受け取りませんでした。むしろ、アメリカには「世界平和を支えるだけの経済力がないのでは?」と思うようになりました。

とは言っても、アメリカに代わりうるような国も、2013年時点では、まだ想像できませんでした。当時は、ただ漠然と、アメリカが世界に冠たる経済大国たり得るのは「10~15年くらいかな」と思っていました。

さて、2013年から10~15年くらいというと、まさに今が、その過渡期ということになります。折しも、アメリカでは、また日本でも「シビル・ウォー アメリカ最後の日」というタイトルの映画が公開されました。これは、いわゆる政治的な分断によって、内戦が勃発するというお話です。ですので、経済状態とは無関係のようにも思えます。しかし、政治的な分断のそもそもは、やはり経済がきっかけなのではないでしょうか?

アメリカの中間所得層(中間層)の65%が生活が苦しく、46%が「貯金ができない」という調査を発表している団体もあります。

トラリピインタビュー

アメリカのGDPは7割が個人消費だといわれています。そして、その個人消費の多くを支えているのが中間層だともいわれています。そのため、大統領選挙の候補者たちは「中間層の復活」を政策に掲げています。政策が功を奏すれば、中間層が復活し、アメリカ経済が力強さを取り戻すかもしれません。

アメリカは「もはや世界の警察官ではない」に始まり、いまだ映画の中に留まってはいますが「分断」、そして中間層の生活苦……これらが「アメリカ一強の時代」が終わりを迎えているのでは、と筆者が想像する理由です。

ひび割れた星条旗
「世界の警察官」と呼ばれた経済大国アメリカの栄華はいつまで続くのか

アメリカだけでは通貨分散にならないかも?

アメリカという国を象徴する投資先、つまり通貨ドルだけで「通貨分散」は図れないのでは、と思っています。ただし、アメリカの上場企業の中でも、魅力的な投資先はまだまだありますね。まさに分断です。

ですので「通貨だけに投資する」ドル預金やドル建て生命保険だけでは、将来、微妙ではないでしょうか? アメリカ企業の中から厳選して投資をする、あるいは厳選したアメリカ企業だけを集めたファンドなどは良いかもしれません。

ドルだけではない通貨分散を考える

そして、アメリカ以外の国を投資先として検討する必要があるでしょう。いわゆる100均ショップのダイソーは海外にも展開しています。表はダイソーの国内外の「基本となる価格」を比べたものです。いずれも日本より高いのが分かります。また併せて、ビッグマック指数(マクドナルドのビッグマックの価格を比較したもの)も載せておきました。
通貨分散は「アメリカ以外の選択肢」があることがお気づきいただけると思います。

【図表1】ダイソーの商品の基本となる価格の国際比較
①基本価格 ②為替レート ①×②
日本 100円
アメリカ 1.75米ドル 148.73円 260円
インド 99ルピー 1.767円 175円
オーストラリア 3.3豪ドル 100.27円 331円

※為替レートは2024年10月11日時点

【図表2】ビッグマック指数の国際比較(2024年7月)
日本 3.19
アメリカ 5.69
インド 2.75
オーストラリア 5.06

もちろん、お持ちの金融資産の「多く」を日本やアメリカ以外の国に投資する必要はないと思います。やはり、ドルに比べると通貨の流通量が少ないため、ドルに比べて為替レートが安定していませんし、交換手数料(いわゆるTTSとTTBの差額)もドルに比べると大きな額です。

アメリカ以外の通貨分散……ファンドなら

投資信託(ファンド)なら、NISAの成長投資枠やつみたて投資枠の対象になるものもあります。特に株式でしたら企業の成長の果実を得ることもできます。日本やアメリカ以外の国へ投資のご経験のない方は、お持ちの金融資産の3~10%程度を目安に、日本やアメリカ以外の国へ投資を検討されてみてはいかがでしょうか?

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