どんな場面でも常に高いリターンを上げられる金融商品はありません。どんな金融商品にも必ず「得意な局面」と「苦手な局面」があります。現役証券アナリストの佐々木達也さんが、今人気の金融商品や注目セクターの「とくい」と「にがて」を徹底分析する連載。第2回は、主要資産の中で今年最も大きく値上がりした資産のひとつである金(ゴールド)に迫ります。

  • トランプ関税などの影響で世界経済の不確実性が高まり、安全資産として金が上昇
  • 金投資の方法は実物、ETF、金鉱株など。NISAを活用するならETFが有利
  • 金は経済の不確実性が高まる局面に強い。苦手なのはバブル相場や為替の円高

低コストで全世界の株式に投資できる『オルカン』

金(ゴールド)はどんな商品?

2025年、金(ゴールド)の価格が大きく上昇したこともあり、金投資への注目度が高まっています。テレビでも連日のように金価格上昇のニュースが報道され、関心のある方も多いのではないでしょうか?

「金」は地球上で埋蔵量が限られていることから、長い歴史の中で信頼性の高い安全資産として価値が保たれてきました。金は投資対象としても、有事の際やインフレ局面で通貨の価値が下がる場面で、株式や債券とは値動きの異なる分散投資先として有望視されています。

アート投資を資産形成に!

なぜ金は値上がりしているのか?

2025年はトランプ米大統領による追加関税で、世界の経済の不確実性が高まりました。こうした中、世界中の投資家が米国の国債や米ドルを売って、資金の一部を金に移す動きがみられました。また世界的にインフレが進行したほか、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化も、安全資産としての金の魅力の高まりにつながりました。

さらに米国の政治の不透明感から米ドルの信認が低下し、新興国などの中央銀行が外貨準備の分散先として金を購入しているのも、金の値上がりの背景となっているのです。

【図表1】ドル建て金価格の推移(2020年~2025年11月7日)
ドル建て金価格の推移(2020年~2025年11月7日)

金に投資する方法は?

実際に金に投資する方法は様々で、それぞれメリットやデメリット、税制などが異なります。

実物投資

もっともわかりやすいのは金の実物を購入する方法です。貴金属店やメーカーの直営店などで購入することができます。定額でコツコツ投資する場合は、「純金積立」なども有効です。

実物投資は手元に実物を保管し、自身で管理できる点がメリットです。ただし手数料が他の方法よりも相対的にかかります。有価証券ではないので、NISA(少額投資非課税制度)は利用できません。

金ETF

NISAの非課税メリットを享受したい場合は、証券会社を通じて、金に投資するタイプのETF(上場投資信託)への投資がおすすめです。

金の実物を保有することはできませんが、株式と同じように少額で、希望する価格で証券会社を通じて注文して買えます。手数料も比較的少ないケースが多いため個人投資家に取っては優位な選択肢でしょう。

金のETFも運用会社によって様々で、取引量も多く代表的なETFは『SPDRゴールド・シェア』(1326)です。金の現物に投資するオーソドックスなタイプで、純資産総額は約14兆円と世界で最大規模となっています。

『純金上場信託(現物国内保管型)』(1540)も純資産総額が約1兆円超と規模の大きな金ETFです。一定以上の口数を保有していれば金地金と交換できる点も魅力といえます。

【図表2】『純金上場信託(現物国内保管型)』(1540)の基準価額の推移(2023年4月7日~2025年11月7日、週足)
『純金上場信託(現物国内保管型)』(1540)の基準価額の推移(2023年4月7日~2025年11月7日、週足)

金鉱株

NISAを通じて金に投資する場合、金価格に連動しやすい個別の金鉱株に投資することもできます。

メリットは、金価格の上昇局面では金投資以上に値上がりすることも多く、大きなリターンを狙えることです。デメリットは金価格以外の貴金属価格やその他事業の動向、金利・株式市場のマインドなど、変動リスクがいろいろとある点です。

国内株では、住友金属鉱山(5713)三菱マテリアル(5711)AREホールディングス(5857)松田産業(7456)などが金鉱株としてマーケットで認知されています。

その他、米国市場に上場するニューモント・マイニング(NEM)、バリック・マイニング(B)などは世界的な有名な金鉱株です。

【図表3】住友金属鉱山(5713)の株価の推移(2023年4月7日~2025年11月7日、週足)
住友金属鉱山(5713)の株価の推移(2023年4月7日~2025年11月7日、週足)

金の得意な局面・苦手な局面は?

不確実性が高まり、リスク回避の動きが出る局面に強い

「金」が得意とするのは、地政学的リスクや景気の悪化リスクが高まる局面です。

金は金利を生まないため、景気悪化で金利が下がる場合も相対的に金の魅力が高まります。また、こうした場面ではリスクを回避するため株式も売られることが多く、分散投資先として金の魅力が高まります。

景気が高揚し株式に資金が向かう局面、円高局面には弱い

金はインフレヘッジとしての側面が期待できますが、景気が大きく加速してバブル相場のようになる局面では、資金は株式市場へ向かい、金への投資は抑えられがちになります。

また金はドル建てで取引されているため、円高では円建ての金やETFの価格の下落要因となります。

金(ゴールド)の活用法

  • 有事やインフレ局面において、分散投資先として資産価値を守る
  • NISAを活用するなら金ETFや金鉱株に投資

金(ゴールド)の得意・有利な局面

  • 地政学的リスクや、景気が悪化するリスクが高まるとき
  • 金利が下がるとき

金(ゴールド)の苦手・不利な局面

  • 景気が過熱したバブルのような局面
  • 為替が円高になったとき

次回(11月25日公開予定)は、高市早苗首相の就任で5万円の大台を突破し、世界からも注目を集める日経平均株価への投資と、その得意局面・苦手局面を見ていきます。