宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は「定期預金でお金が増えない」と悩む相談者に対するアドバイスの番外編として、iDeCoに代表される確定拠出年金、外貨建て終身保険と金(ゴールド)の使い方を考えます。
- iDeCoは節税効果が高く、「利回り」の面で有利
- 外貨建て終身保険は為替の影響が大きく、手数料を含めた為替差益が重要
- 経済情勢が悪化しても信用力が失われない金は「全資産の利回りを守る投資商品」
積立額に対して利回り15%も可能なiDeCo
【質問】
銀行に預けていた100万円定期預金! 1年後に満期になるけど、金利を見て愕然……。利息がたったの100円。これじゃ自動販売機のコーヒーも買えん。しかも、そこから税金も取られる。100万円預けて利息が100円って、何かのミス? ありえんわ! 窓口で頼まれたから預金したのに。いまの時代、もうちょっとましな商品はないですか?
現在、100万円を銀行の定期預金(年利0.002%。令和2年8月末現在の利率)に1年間預けると、わずか20円の金利にしかなりません。これを基準としたときに、ほかの運用商品ではどれだけお金を増やせるか?
私が独断で作成した下記の運用商品別利回りランキングに沿って、過去3回の連載で①債券~⑤株式投資について書いてきました。今回は「番外編」として、⑥確定拠出年金、⑦外貨建て終身保険、⑧金について考えていきます。
【予想利回りが低い順のランキング】
①債券=500円~(0.05%~)
②外貨預金=500円~1,500円(0.05%~0.15%)
③投資信託=1,000円~50,000円(0.1%~5%)
④不動産投資=30,000円~70,000円(3%~7%)
⑤株式投資=30,000円~(3%以上)
⑥確定拠出年金=30,000円~(3%~)
⑦外貨建て終身保険
⑧金
※元本100万円。2020年8月末現在の利率・市場動向に基づき筆者作成
「利回り」に当てはめるのはこじつけになりますが、まずは⑥確定拠出年金=30,000円~(利回り3%~)について説明していきます。今、最も身近な確定拠出年金といえば、国の制度として定着してきた個人型確定拠出年金(iDeCo)でしょう。
iDeCoが何で運用商品?と思われる方も多いでしょう。iDeCoは、決まった金額を毎月コツコツと60歳まで積み立てる個人年金だから、株式の配当や不動産投資の家賃のような「利回り」など発生しないのでは、と感じるかもしれません。
iDeCoや、勤務先で加入する企業型確定拠出年金(DC)は、所得税と住民税の節税を得られます。この「節税金」を「利回り」と置き換えてください。所得税については年末調整で戻ってきます。住民税については、翌年5月から給与天引きで安くなります。
年収と属性によって、戻ってくるお金も違うので少々ややっこしいのですが、一例を挙げると、年収400万円、共働きで子供が高校生1人という人が月2万円積み立てると、節税できる金額は年36,200円になります。このうち、年末調整で戻るのは所得税の約18,000円で、住民税の方は給与の天引き額が毎月約1,500円少なくなります。(注:住民税率は都道府県・市町村で異なります)
手元に戻るのは約18,000円ですが、トータルの節税額が36,200円ですので、年間240,000円の積立で、1年の積立額に対する利回りは約15%にもなります(これまで積み立ててきた元本に対する利回りではないのでご注意ください)。
もちろんiDeCo自体の積立は別にありますから、美味しい話だと思いませんか? 年収400万円・独身で月1万円積み立てても、節税額は年18,000円。住民税の減税分は、放っておくといつのまにか使って消えていきますので、月1,500円、年18,000円を足して貯めておきましょう。
最初のケースですと、節税額は年36,200円で、例えば30歳から60歳まで貯めると、30年間で1,086,000円にもなります。将来の年金に上乗せできますね。「ほったらかしたら増えてた」という運用を確実に実践できます。
もちろんこの試算は現時点での収入をベースにしていますので、収入が増えれば節税効果はさらに上がることとなります。ご自身の収入とiDeCoの掛け金を照らしながら、節税がいくらぐらいできるのか? ネットで調べてみるといいと思います。
このように、iDeCoは「早くやったもん勝ち、やらなきゃ損」の典型的な商品です。
為替変動の影響を受ける外貨建て終身保険、リスクヘッジのための金
次が最後になりますが、⑦外貨建て終身保険と、⑧金について。この2つに関しては、「利回り」という考え方にはなかなか合致しません。そういう意味では本当の番外編になります。
外貨建て終身保険は、超低金利の国内では商品化できなくなった保険を、日本より金利が高い国の通貨で運用するタイプの死亡保険商品になります(実際は主に外国債券で運用されます)。米ドル建ての場合はドルで保険料を支払い、受け取る保険金、年金、満期保険金、解約返戻金などもドルになります。通貨は米ドル以外にもありますが、ドル建て終身保険が代表的な商品となります。
ただこの外貨建て終身保険、為替リスクを伴うのは避けられません。円安か円高かで、保険の価値が大きく動いてしまいます。株式や投資信託には不安がある一方で、海外通貨を持ってみたい人、資金にゆとりがある人が外貨建て終身保険に適しているといえるでしょう。ただし、最近は米ドルも金利低下による積立予定利率の引き下げで、その分だけ保険料も高くなっており、魅力は半減しているといえます。
外貨建て保険の鉄則は、円高(ドル安)で加入して円安(ドル高)で解約することですが、仮に円安での解約がうまくいったとしても、保険金や満期保険金、解約返戻金を受け取る時に、ドルを円に戻す為替手数料が別途かかるので注意が必要です。
このように、外貨建て終身保険は為替の変動で利益(または損失)が出る可能性がある商品なので、「利回り」を考えるなら、支払った保険料と、解約時点の為替差益の儲け(または損)で見る必要があります。
ちなみに、保険会社は保険を中途で解約などされてもいいように、最近では保険料を下げる代わりに10年以内の解約は返戻金をダウンして、10年を超えると返戻金をアップする商品も出てきています。外貨建て終身保険は死亡保険付きで比較的安く加入でき、お金の積み立てもできる商品ですので、理解のうえ加入すればいい商品でしょう。ただ、今後円安が進行することを前提にした商品設計である点は、個人的に気になるところではありますが……。
最後に⑧金について。金は預貯金、債券、株式などとは全く異なる資産です。金自体が「現物資産」であり、株式などのように信用度によって価値が左右されることはありません。また、金は債券のように誰かの債務でもなく、いわゆる信用リスクがない資産になります。よって、世界の政治や経済情勢が悪化し、株式や通貨の信用度が低下したときにも一定の価値が認められてきました。
つまり、金は危機的な状況が起きた時のリスクヘッジの役割と、資産全体の価値を保全する保険の役割を果たしてくれるといえます。したがって、基本は世界経済の情勢が安定しているときに購入して、危機的な状況で売るということになります。ただ、保有しているだけでは利子や配当はありません。あくまで資産全体をリスクヘッジするのが目的だと思って購入するのがベストでしょう。
金は「全資産の利回りを守る投資商品」と位置付けてください。
(次回は11月20日を予定しています)