豊かな人生とは何をもって言うか、その指標はお金だけでしょうか? ビジネスを成功させた人に聞くと「人に恵まれた」エピソードが必ず語られます。コロナ禍を体験し、先が見えない世の中だからこそ「人と繋がる」ことの大切さが身に沁みます。“人”という字が支え合っているように、人と出会って何を学んでいくかは、人生において大切な自己投資になります。この連載では、専門知識や経験に秀でたスペシャリストの視点で、豊かな生き方の極意を語ってもらいます。第20回のテーマは「SNSを駆使して誰もがコンテンツ発信ができる時代にするべき戦略」。今回はグローバルサイズでミレニアム世代のアーチストにさまざまなサポートを提供している新鞍トシヤさんにお話を伺いました。(聞き手=さらだたまこ)

新鞍トシヤさんの写真

新鞍 トシヤ(にいくら としや)さん
CHET Group 取締役CCO。

米国シアトルに留学後、ショートフィルムコンテストにて初監督作品「AKATSUKI」で受賞。2012年、起業し、(株)Journal Entertainment Tribute 代表取締役社長に就任。以来、日本ドラマやアニメのアジア販売やアジアドラマのプロデューサーとして、IP事業に通暁。日本側の総合プロデューサーを務めた「きもの秘伝」では九州のタイインバウンドを数倍にした実績から、経産省ブランドランド事業にてプロデューサーを務める。2020年CHET Group創業メンバーに。

ミレニアル世代のインプット&アウトプット

西暦2000年以降に成人した世代は《ミレニアル世代》とも呼ばれています。
彼らの情報源は主にインターネットであり、スマホが一台あれば、情報収集は事足りる!

筆者は、昭和30年代生まれの、コテコテのテレビっ子として育ち、ラジオの深夜放送のパーソナリティーに憧れ、マンガとファッション雑誌を読み、輸入盤のLPをステレオで聴きながら、休日は映画館に足を運ぶ……。そんな生活をしながら大人になった世代。

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そして、選んだ職業は、放送作家。
憧れだったメディアに関わって、情報を発信する仕事を続けて40年が過ぎました。

けれども、筆者の普段の生活はどうだろう?
執筆の締め切りに追われるときは、案外、好きなテレビ番組を見る暇も、ラジオを聴く暇も、雑誌をじっくり読む時間さえない。
それでも、情報に取り残されずにいるのは、スマホ一台を肌身離さず持っているから。
忙しいときの情報収集はもっぱらネット。
息抜きに時折見に行くSNSで、バズってるキーワードを見つけたりしながら、世の中の新しい動向をチェックしてれば、置いてきぼりにされた感もないし、知らないことも検索すれば、数分後には立派なにわか知識が身についてしまう。
筆者も知らず知らずのうちに今どきの若者化しているのです。

では、テレビやラジオなど昭和のマスメディアが発信するコンテンツに誰も触れていないかというと、そうではありません。
ネットから受け取るコンテンツの中のひとつとして、存続しているわけで。
ただ、あまりにも選択肢が多くなり、淘汰されて選ばれたものだけ残っていくので、昭和的なマスメディアの在り方だけでは、埋もれて、やがて消えて行くだろうと思われます。

そうした中で、「ミレニアル世代が中心となるメディア変革」の動向をつかんで、コンテンツプロデューサーとして活躍している新鞍トシヤさんにお話を伺っていきます。

「好きな時に好きな人と好きな場所で……これはエンタメ業界にも言えることで、好きなコンテンツは好きな時に、好きな場所で好きなデバイスで消費することが常識になりますよ」
と、早くから言ってきた新鞍さんは有言実行の人。

ミレニアル世代のイメージ
好きなコンテンツを、好きな時に好きな場所で、好きなデバイスで消費するのがこれからの常識

「スマホは、情報収集のガジェットだけではなく、気軽に情報発信できるツールですから、誰もがインフルエンサーになる時代に向かっています。しかも、ボーダレスにグローバルに!」と。

新鞍さんは得意の英会話も活かして、日本国内に留まらずに、東南アジア圏のポテンシャルに注目して、フットワーク良く活躍の場を広げてきました。

誰もがネクストアーティストになる時代へ

2019年までは、日本のコンテンツ業界も、アジアマーケットへの進出を目指して活気づいていました。

筆者も「アジアドラマカンファレンス(日中韓とアジア諸国のドラマ作家&制作者の国際会議)」に毎年参加してきましたが、新鞍さんも常連の一人。中国で開かれた国際コンテンツ見本市にご同行願ったこともあります。

しかし、世の中がコロナ禍になって、新鞍さんも海外にでかけるよりも日本にいる時間が長くなったと言います。
「でも、決してマイナスにはなってないです。むしろ、大きな変革をもたらした時間といえるでしょうね」と、新鞍さんの捉え方はとてもプラス思考です。

その変革を具体的にひと言でいうなら「オーディエンスはアーティスト!」だと新鞍さん。
言い換えれば「消費者=クリエーター」の時代に転換されていくということ。

昭和の時代、スターはスクリーン(映画)、あるいはブラウン管(テレビ)の向こうで作られて、雲の上の存在でした。
しかし、今や、自分がなにげなくYouTubeやTikTokに上げた動画がバズったら、たちまち世界に知られるスターになれる可能性が秘められています。

消費者がクリエーターになる
消費者がクリエーターになる時代になった

「ユーザーが作って発信するコンテンツはUGC(User Generated Contents=ユーザー生成コンテンツ)と言いますが、ユーザーが自身の経験を投稿し、リアルな声を集積するメディアの需要に早くから注目していました」と語る新鞍さん。「かつては、コンテンツの流れは上流(放送局、レコード会社、出版社、映画会社など)から消費者(視聴者)に流れてくる一方通行でしたが、インターネット、特にSNSの発達で、誰もが自分からコンテンツを発信でき、流れが双方向になっただけでなく、大手のメディアを介さなくても、ユーザー同士の双方向で市場が成り立つようになってきました。かつての伝統的な大手エンタメ企業を通さなくてもクリエーター市場は育っていくというエコサイクルができあがる方向に動き出しているのです」
といいます。

そして、「特にコロナ禍はおうち時間が増えたので、ものを創造するゆとりが生まれたともいえます。朝早くから会社に行って夜遅く帰宅していた生活スタイルから一変して、増えた在宅時間をクリエイティブな活動の時間に充てられるので、誰もが次代を担う《ネクストアーティスト》になれる可能性があります」と!
確かに、多くの人は、青春時代、なんらかのエンタメアーティストに憧れを抱き、楽器を奏でたり、絵やマンガを描いたり、芝居に熱中した……などという思い出があると思います。

次代を担うアーティスト
コロナ禍で増えた在宅時間を使い、自らコンテンツを発信する人は少なくない

そして、多くの人は夢を封印したままでは?
そんな人にも「ネクストアーティスト」の可能性はあるので諦めないでと新鞍さんは言います。

これからはサラリーマンも副業が奨励される時代。
スマホ一台で、どこまでやれるか?
やりたいことがまだたくさんある筆者も大いに刺激を受けました。

めざせ! SNS時代のわらしべ長者

「UGC(User Generated Contents)の需要の高まりは実感しても、ネットやSNSのスキルや動画を作る技術、また気の利いた文章を書くセンスなどに自信がないと、ちょっと、及び腰になるかもしれません。

でも、わらしべ長者のたとえもあります。最初は、“いいね”もつかない投稿でも、誰かの胸に響き、双方向のコラボから、バスってしまうようなコンテンツに育っていくかもしれません。さまざまなユーザーと出会ってお互いのもてるスキルやツールを駆使する《SNS時代のわらしべ長者》コラボを目指すべき」と新鞍さんはいいます。

たとえば……「これは売れないね」と出版社に蹴られた小説をSNSで投稿し続けていたら、SNSで読んだという無名の役者がライブで朗読したいという。
そのライブを動画配信する際に、やはりSNSで知りあったミュージシャンにBGMを付けてもらったら、ちょっと評判を呼んで、そこそこ活動しているシンガーがBGMに歌詞をつけて歌いたいと言ってきた。

それで、小説と同名のタイトルで主題歌を作って発信したら、なかなかに話題になってきた。
そこに、SNSで繋がったイラストレーターが曲に会わせてイメージ動画を作ってくれたので、朗読ライブをアニメーションに短編にリメイクたら、いきなりバズった……。
この原作者と小説を書いた作家、朗読からアニメの声を担当した役者、曲を作ったミュージシャン、歌った歌手、動画を作ったイラストレーターと皆が有名になった……。
これぞ、SNS的わらしべ長者!

コラボレーションがお金を生む
「SNS時代のわらしべ長者はコラボレーションから生まれる」と新鞍さんは話す

筆者も遅まきながら、このような連鎖の中に身を置いてみたいと思いますね。

「もちろん、バズることも想定して、作品の著作権の管理はとても大切です。IP(知的財産)としてしっかり管理し、クリエーターを守るビジネスも重要になってきます」と新鞍さん。

アフターコロナを見据えて、憧れのエンタメ市場にどう関わっていくか?
それは誰にでもチャンスがあり、アーティストをサルベージする新しいビジネスも創出できそうでワクワクしますね!

新鞍トシヤさんがCCOを勤めるCHET Groupはこちらから
https://chet.com/

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