持続可能な社会の実現に欠かせない「バイオプラスチック」。どんな特徴を持つ原料で、株式投資においてはどのようなポイントに留意するべきか? 具体的な関連銘柄は? 株式アナリストの鈴木一之氏に解説していただきます。

  • 世界全体のごみ焼却によるCO2排出量のうち、44%がプラスチック由来
  • 「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」がある
  • バイオプラスチックの開発や利用を後押しする動きが強まっている

世界で2番目に多く使用されている素材

今回のテーマは「バイオプラスチック」です。前回に続いてプラスチックが話題となりますが、サステイナブル(持続可能)な社会の実現に避けて通れない技術のひとつです。

今の社会でプラスチックは欠かせません。世界中で使用されている基礎的な素材を数量で比べると最も多いのが「紙類」で、次が「プラスチック」、3番目が「鉄」です。

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2016年のデータでは「紙類」が411立方キロメートル(以下同じ)、2番目の「プラスチック」が335、「鉄」が203、となります。有史以来、文明の発展に鉄や紙がいかに貢献してきたかに議論の余地はありませんが、それに匹敵するほどプラスチックも寄与の度合いが大きいことになります。

鉄や紙と比べてプラスチックは成型しやすく、フィルム、シート、ボトルとあらゆるものを成型できます。金型さえ最初に作れば同質のものを大量に、容易に生産することができ、軽量で耐久性もあり長所を数え上げればきりがありません。

プラスチック最大の短所は「ゴミ問題」

20世紀に発明されて以来、その利便性を背景に、世界中でプラスチックの使用が急拡大しました。それに伴ってプラスチックが持つ短所も無視できなくなりました。中でも最大のものがゴミの問題です。

プラスチックの回収システムが確立していない国・地域では、社会の至るところにプラスチックがゴミとして散乱しています。散逸したプラスチックは徐々に劣化してゆき、小さな破片、マイクロプラスチックになります。

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通常のプラスチックは微生物では分解できないので環境中に長期間とどまり、それが生態系に影響を与えます。特に海洋に流れ込むマイクロプラスチックは、世界全体で年間800万トンを超えると推定され、それが生態系に影響を及ぼします。

回収システムが確立した国でも、プラスチックの焼却処分には問題があります。焼却によってもともと原油の中に固定されていたCO2を空気中に放出することになるからです。ごみの焼却によるCO2の排出量は世界全体で年間3000万トンにも達しますが、そのうちの44%がプラスチックから出ていると見られます。

「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」

サステイナブル(持続可能)な社会を実現するためには、気候変動への対処と多様な生態系を守る必要があります。それにはプラスチックの持つ長所を活かし、短所を打ち消してゆかなくてはなりません。そのために注目されているのが「バイオプラスチック」です。

バイオプラスチックには、微生物によって分解される「生分解性プラスチック」と、バイオマス(生物資源)を原料として生成される「バイオマスプラスチック」の両方が含まれます。

生分解性プラスチック

生分解性プラスチックは、1970年代に環境問題の観点から考案され、1990年代に入って各国で研究開発が活発化しました。通常は一般のプラスチックと同じように使用されますが、使用後には微生物の働きによって分解されます。

最終的には二酸化炭素と水に分子レベルまで分解され自然界に還ってゆきます。環境中にゴミとして残らない点が特徴です。

代表的な生分解性プラスチックは「ポリ乳酸」(PLA)です。微生物の発酵によって得られる乳酸を原料として生成されるポリエステルで、透明性があるためフィルム、シート材に用いられます。自動車の内装材、家電製品の筐体、土嚢(どのう)、農業・林業用の資材、生ごみ袋、テイクアウト用食器、漁具、医療用部品などとして広く使用されています。

「ポリグリコール酸」(PGA)も生分解されるプラスチックとして有名です。原料となるグリコール酸はサトウキビやブドウの葉、実から得られますが、現状では化石資源から合成されています。

このように生分解性プラスチックは、「微生物によって分解される」という機能面で特徴づけることができ、原料となる化合物が何であるかは問われません。石油などの化石資源からも生成されます。

バイオマスプラスチック

それに対してバイオマスプラスチックは、原料として再生可能な有機資源由来の物質から化学的、生物学的に合成して得られます。

木材廃材や伐採後の葉など、植物に代表されるバイオマス資源は光合成により空気中の二酸化炭素を吸収して生長します。したがってバイオマスプラスチックを焼却しても、もともと吸収したCO2を放出するだけなので、差し引きはゼロです。

カーボンニュートラル(CO2の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロになること)としてとらえられ、温室効果ガスとしてカウントしないことが国際的に認められています。そのため、1回の利用で廃棄され焼却処分されるような用途に向いています。食品や飲料の包装容器、ゴミ袋、レジ袋、日用品、衣料品などに用いられます。

これまでバイオマスプラスチックの研究は、①すでに存在するプラスチックをバイオマス資源で生成する、②バイオマス資源から新たなプラスチックを創製する、という2つの方向で発展してきました。

これまで利用されていたバイオマス資源は、トウモロコシやサトウキビから取り出したデンプンが中心でした。しかし現在では、新しい原料の発見と新規のバイオマスプラスチックの開発が急速に広がりを見せています

バイオプラスチックの長期的な普及拡大に期待

環境面で優れるバイオプラスチックの開発にはすでに世界中の大手企業が参入しています。米国のデュポン、ネイチャーワークス、フランスのトタル、ドイツのBASF、イタリアのノバモント、ほかにもオランダ、中国、インド、ブラジルの企業がプラントを建設しています。

日本でもカネカ(4118)、三菱ケミカルHD(4188)、ユニチカ(3103)、東洋紡(3101)、ダイセル(4202)が長年にわたって研究開発を手がけています。

カネカ(4118)週足、2016年6月~
カネカの株価チャート
三菱ケミカルHD(4188)週足、2016年6月~
三菱ケミカルHDの株価チャート
ユニチカ(3103)週足、2016年6月~
ユニチカの株価チャート

バイオプラスチックは環境面では優れていますが、製造コストが高いためなかなか利用は進んでいません。日本の年間の使用量は4万トンで、プラスチック使用量の0.4%程度にとどまっています。世界でも1%以下と見られています。

それでもバイオプラスチックの開発や利用を後押しする動きは強まっています。日本はCO2削減の観点からバイオマスプラスチックの研究、普及のための実証実験を政府が支援しています。またグローバルな知名度の高い企業も、ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点から従来からのプラスチックの使用をサステイナブルな材料に切り替えようとしています。

バイオマスプラスチックの技術的なブレイクスルーと、長期的な観点に立った普及拡大に注目しています。