「変動金利型債券の利率って、どうやって決まるの?」「個人向け国債って、リスクはないの?」「国債を満期前に売ることはできるの?」債券に関するギモンを、ファイナンシャル・プランナーの恩田さんに解説していただきます。

  • 変動金利型債券は購入時に満期までの収益を計算できない
  • 個人向け国債には、0.05%(年率)の最低金利保障が設定されている
  • 個人向け国債を途中で売却する場合は、額面金額で国が買い取ってくれる

債券には変動金利型と固定金利型がある

前回に引き続き、債券の特徴やメリット、リスクについて見ていきます。債券とは、国や企業などが資金を集める目的で、投資家からお金を借りるために発行する有価証券のことです。

債券は定期的に利子を支払うものと、利子の支払いがないものに分けられます。このうち、定期的に利子が支払われる「利付債(りつきさい)」には、発行から満期まで利率が一定の「固定金利型債券」と、半年ごとにその時点の基準金利に合わせて利率が変動する「変動金利型債券」があります

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変動金利型債券の代表例には、「個人向け国債変動10年」があります。今回は変動金利型債券と、個人向け国債の特徴について見ていきます。

変動金利型債券は購入時に満期までの収益を計算できない

前回取り上げた固定金利型債券では、利率が満期まで固定されていることに加え、額面金額が発行時点で決まっています。そのため、その債券を発行した国や企業が倒産しない限り、購入した時点で満期までの収益を計算することができます

一方、変動金利型債券の場合は、半年ごとにその時点の金利水準により利率の見直しを行います。利率が変動すれば、受け取れる利子も変化します。

変動金利型債券の額面金額は、固定金利型債券と同様に発行前に決まっており、満期時に変動することはありません。しかし、満期までに受け取る利子が変動する可能性があるため、購入時に満期までの収益を計算することはできません。

今後、世の中の金利が上昇していくならば、同時期に発行された固定金利の債券よりも変動金利の債券の方が、利子の増額により高い収益が期待できます。逆に今後、金利が下降していくと、同時期に発行された固定金利の債券よりも利子の減額により低い収益に甘んじなければなりません。

将来の金利変動により、収益が変化するのが変動金利型債券の特徴です。今後の金利変動を予想するのはプロの投資家でも難しいため、安定運用を求めて債券投資を行う場合は、固定金利型債券をおすすめします。

個人向け国債の2つの特殊性

個人向け国債には、企業が発行する社債など一般の債券にはない2つの特徴があります。

  • 0.05%(年率)の最低金利保障が設定されている
  • 途中売却の場合でも額面金額で売却できる

0.05%(年率)の最低金利保障が設定されている

個人向け国債は、固定金利3年、5年、変動金利10年の3種類が毎月販売されます。3年、5年、10年は、満期までの期間を表します。

個人向け国債では、3種類とも最低金利保障が0.05%に設定されています。最低金利保障の設定は、他の債券にない個人向け国債の特徴です。

現在(2021年1月時点)は、基準にする国債の金利が低いため、3種類とも最低金利保障の0.05%で発行されています。

期間3年、5年のものは固定金利なので、満期まで0.05%の利率が継続します。期間10年ものは変動金利なので、今後世の中の金利が上昇すれば、0.05%以上の利率が期待できます。

現在、個人向け国債は最低金利で発行されているので、これ以上利率が下がるリスクがなく、利率が上がるリスク(期待)がある債券と言えるでしょう。

また、個人向け国債の適用利率の算出方法は以下のようになります。

個人向け国債の商品名 適用利率の算出方法
固定金利 3年 3年物国債の利率-0.03%または0.05%の高い方
固定金利 5年 5年物国債の利率-0.05%または0.05%の高い方
変動金利 10年 10年物国債の利率×0.66または0.05%の高い方

※表中の「○年物国債」は、個人向けではない(プロ向けの)国債

途中売却の場合でも額面金額で売却できる

個人向け国債も他の債券と同じように、途中で売却することができます。ただし、他の債券のように債券市場で取引を行うのではなく、額面金額で国が買い取ります

また、国が買い取った国債を既発債(既に発行された債券のこと。対義語は新発債)のようにして再度販売することはありません。

国が額面金額で買い取るということは、他の債券とは異なり、価格変動リスクを考えずに売却できるということです。ただし個人向け国債では、途中売却に際して以下の制限とペナルティを設けています。

  • 購入から1年間は原則売却ができない
  • 売却金額から直近2回分の税引き後の利子が引かれて支払いが行われる

定期預金よりも高い利子を求める人に

債券投資のリスクには価格変動リスク、金利リスク、信用リスクがありますが、個人向け国債の場合、額面金額による買い取りなので価格変動リスクがなく、最低金利保障をしているので現状では利率が下振れする金利リスクもありません。ただし信用リスク、つまり国の財政が破たんして金利や元本が支払われなくなる可能性は残ります。

信用リスクに問題がないと考えるのであれば、国債への投資は定期預金(大手行:0.002%)より高い利子を求める方の選択肢の1つになるでしょう。

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