インフレとインフラはまったく違う言葉ですが、響きが似ていてどちらも経済にかかわりが深い言葉のため、うっかり間違えてしまうこともあります。両者の単純な言葉の意味を確認するだけでなく、経済や投資の世界でインフレとインフラがどう関わってくるのか、簡単にまとめてみました。
- アメリカで「インフラ投資でインフレ懸念」という報道があった
- インフレとは物価の継続的な上昇、インフラとは社会基盤を支える設備のこと
- クリーンエネルギーに投資する「インフラファンド」が注目されている
「インフレ インフラ」で検索してみたら……
インフレとインフラ。似ている言葉ですが、経済について考えるとき、両者の関係はより深いものになります。
最近ではアメリカのバイデン大統領が2兆ドル以上のインフラ投資を公約したことで、「インフラ投資」が注目を集めています。「インフラ」の言葉の意味はあとで詳しく説明するとして、「インフレ インフラ」で検索すると、アメリカの金融調査会社ブルームバーグの記事がヒットします。
バイデン氏のインフラ・社会保障計画、インフレ懸念理由に共和が攻撃
こちらの記事では「思いきったインフラ投資が過剰なインフレにつながるのではないか」という点が懸念されています。これを受けてバイデン大統領は、一部の上院議員に対してインフラ投資の規模を1.2兆ドルに縮小することに合意しています。
高速道路や電気自動車などを対象としたインフラ投資は国民にとっては有益なものですが、公共事業は投資金額の規模が巨大になるため経済への影響も軽視できません。投資の仕方によっては、経済にとってプラスにもマイナスにも働くものがインフラ投資です。
巨大なインフラ投資をおこなえば景気の回復は期待できますが、投資の規模が大きすぎたり速度が急すぎたりすると必要以上の物価上昇につながり、インフレを引き起こす可能性があります。インフレが過熱すると、バブル景気のようになる危険性があるため注意が必要です。
インフレとは? インフラとは?
インフレとインフラの言葉の意味を尋ねられたとき、正確に分かる人は案外少ないと思います。改めてそれぞれの定義を確認してみましょう。
インフレ(inflation)
インフレとはインフレーションの略語で、モノやサービスの値段が継続的に上昇することです。
「値段が上がる」と聞くとネガティブな印象を受けるかもしれませんが、経済にとっては悪いことばかりではありません。値段が上がることで企業の利益が増え、賃金が上昇します。そして、将来的に給与が増えるという安心感からモノの購入やサービスの利用が促進され、さらに企業が潤うサイクルになれば、それは「良いインフレ」といえるでしょう。
一方で、賃金が上がらないにもかかわらず、仕入れ価格や製造コストが高騰して商品価格だけが上がるのは「悪いインフレ」といわれています。
インフラ(infrastructure)
インフラとはインフラストラクチャーの略語で、産業基盤や社会基盤を支える設備のことです。道路や鉄道、上下水道、発電施設や送電網、ダムや高速道路、通信設備などはすべてインフラに含まれます。より広い意味では学校や病院、福祉施設などもインフラと呼ばれますが、政府が行うような「インフラ投資」は、多額の投資が必要になるダムや高速道路、発電施設や送電網を対象とする場合が多いでしょう。
経済や社会を支えるインフラは個人の投資対象としても注目
米国では、バイデン大統領の公約をきっかけにインフラ投資が活発化しています。バイデン大統領はインフラ投資のなかでもクリーンエネルギーを含む分野(電気自動車など)に注力することを明確にしているため、環境への配慮にもつながると考えられています。
これを受けて、日本でも一部でインフラ投資に注目する人が増え始めています。2021年7月現在、東証では7つのインフラファンドが上場しており、個人投資家も株式やJ-REITと同じように手軽に投資できます。2020年4月からは上場インフラファンドを対象とした「東証インフラファンド指数」の算出も始まりました。
日本のインフラファンドの主な投資先は太陽光発電といったクリーンエネルギーであることから、環境に優しく安定した収益が期待できる投資先として期待されています。東証インフラファンド指数自体に連動するETFや投資信託は今のところありませんが、指数の対象になるファンドの個別売買は誰でも可能です。
インフレが進むと預貯金の価値が目減りしてしまうため、投資でお金を増やすことが大切な資産を守ることにつながります。いつか起きるかもしれないインフレに備える資産運用に、インフラファンドを取り入れてみるのはいかがでしょうか。