毎年約300件の相談を受け、平均して毎月4000円もの携帯代節約に成功している株式会社携帯見直し本舗の鮎原透仁(あゆはらゆきひと)さん。インタビュー後編では、携帯会社・プラン選びのポイントをうかがいました。
携帯会社のジャンルを正しく理解する
携帯会社やプランの見直しでは、何から始めればいいでしょうか?
鮎原さん まずはプランの前に携帯会社を選ぶことが大事です。そのために、携帯会社のジャンルを正しく理解する必要があります。
携帯会社のジャンルは以下の4つに大別されます。
- 大手キャリア………docomo au SoftBank
- サブブランド………UQ mobile Y!mobile
- ウェブブランド………ahamo povo LINEMO
- 格安SIM………OCNモバイル BIGLOBEモバイル など
前回もお話ししましたが、大手キャリアは基本的にヘビーユーザー向けです。3社とも料金プランは大きく分けて二択しかありません。docomoとauは7GB以上、SoftBankは3GB以上なら無制限プラン(docomo 4G端末の場合は60GBプラン)になります。つまり、月々のデータ通信料が10GB程度の人であっても、大手キャリアでは税込7000円くらいの使い放題などの大容量プランを選ぶしかないわけです。Wi-FiにつながずにYouTubeを毎日何時間も観るなど、毎月大量のデータを利用するユーザーに適しています。
最も普及している大手キャリアなのに、一般ユーザーに合うプランがないのですね。
鮎原さん 総務省の法改正や5G通信のスタートなどの様々な影響があり、ここ2年ほどで大きく変化しました。それにもかかわらず、大多数の人が大手キャリアを選んでいる現状があります。毎月1GBくらいしか使わないのに無制限プランを契約している人も少なくありません。「家族割引をきかせているから」という人もいますが、割引のメリットより合っていないプランを選んでいる損失のほうが大きい。見直してみると「こんなに安くなるのか」と驚かれるケースが多いです。
具体的に言うと、毎月のデータ通信量が25GBを下回るなら大手キャリアは合っていません。サブブランドは25GBを上限とするプランがあり、大手キャリアの無制限プランより安く契約できるからです。サブブランドのネットワーク品質やエリアは大手キャリアと変わりなく、つながりにくいなどのデメリットもありません。キャリアメールが使えなくなる点には注意が必要ですが、料金を安くしたいならY!mobileやUQ mobileへの乗り換えを検討したほうがいいでしょう。
サブブランドとウェブブランドはどう違うのでしょうか?
鮎原さん ウェブブランドは申込方法がオンライン限定となっており、メインは安いと話題になった20GBのプランですが、20GBを超えると速度制限がかかる一方で、15GB以下ならサブブランドのほうが安く契約できます。毎月の使用料が15~20GBの範囲で安定している人は一番お得ですが、そうでない人はデータ通信量を気にしながら利用する必要があり、やや使い勝手が悪いかもしれません。
LINEMOは7月に3GBのプランを追加し、povoは9月下旬(予定)から3GBのプランの追加だけでなく7日間で1GBなどの各種トッピングという選択肢も増やし、今後も変化の激しいジャンルと思われます。
大手キャリアは25GB以上、ウェブブランドは15~20GB、サブブランドは15GB以下のユーザー向けというのが大まかな目安です。
安さを追求するなら格安SIMもありですか?
鮎原さん 安くできることは確かですが、私はあまりお勧めしていません。かけ放題にするためには専用アプリの利用が必要なキャリアが多く、混雑時にインターネットの速度が遅くなりやすいなど、デメリットが少なくないからです。速度が遅くなりがちなのは、大手キャリアから通信回線を借りているためです。サブブランドとは違い、格安SIMは余っている車線の一部を借りて走っているようなイメージで、渋滞が起こりやすくなります。Wi-Fiに接続して利用するのがメインの人でないと速度のストレスを感じやすいかもしれません。
何より、格安SIMを使いこなすにはITリテラシーが求められます。ネットで注文して、SIMを差し替えて、各種の設定を自身で行わなければいけません。数百円単位で安さを突き詰めたい人は別ですが、ほかにも安くする方法はありますので、格安SIMをお勧めする機会はあまりないですね。
ジャンル内の差はそこまで大きくない
ここまでお話に出てきていない楽天モバイルはどうでしょうか?
鮎原さん 1GBまでタダ、どれだけ使っても2980円(税別)というワンプランは魅力的に見えるかもしれません。ただし、使い放題なのは「楽天回線エリア接続時のみ」という重要な条件付きです。以前と比べて広範囲をカバーするようになりましたが、電波が飛んでいることとつながることは別問題です。大手キャリアとの大きな違いは、「プラチナバンド」と呼ばれるつながりやすい周波数帯が割り当てられていないこと。現状使用している電波は直進性が強く、建物内や地下で圏外が発生しやすくなっています。
楽天モバイルはプラチナバンドの割り当てを熱望していますが、そう簡単に実現するものではないでしょう。「屋内は圏外でもOK」という人はほとんどいませんので、現状では楽天モバイルをお勧めする機会は限られています。
まずは自身に合うジャンルを知ることが大事だと分かりました。では、ジャンル内での選び方のポイントはありますか?
鮎原さん ジャンル内の差は、そこまで大きくありません。ほかの家族が同じ会社で一人だけ別なら「合わせましょう」とアドバイスしますが、基本的には好みで選べばいいと思います。その前段階のジャンル選びを間違えている人が大半ですので、まずはそこから始めてほしいです。
大手キャリアを何となく契約してずっとそのままという人は多そうです。
鮎原さん 会社を変えることに抵抗感を感じる人は多いですね。長年使っている思い入れもあると思いますが、乗り換えをもっと活性化させようとするのが総務省の方針です。乗換手数料が無料になったり、大手キャリアの「2年縛りの違約金」が減額されたりといった良い面がある一方で、長期利用の割引を規制する動きもあり、同じ会社を使い続けると損することになります。
FP向け携帯料金診断ツール「モバプラPro」をリリース
国の方針に逆らうのは得策ではありませんね。一方で、携帯会社を選んで、プランを決めて、申し込んで、といった一連の手続きが面倒な気持ちはよく分かります。
鮎原さん より多くの人に携帯会社・プランの見直しの機会を届けるために、2021年8月に「モバプラPro」をリリースしました。現状の携帯料金明細書の情報を入力することで最適な会社・プランを提案するツールで、ファイナンシャルプランナーなどの専門家の皆さまに提供しています。
docomo、au、SoftBankの過去10年程度の代表的なプランをデータ化することで現状を分析し、使い方に合わせて13ブランドの中から最適なプランを提案します。リリース後も随時各社から新しいプランが出るたびにアップデートを行っています。電気料金のセット割引や家族割なども網羅し、現在の使い方を踏まえたうえで、今契約するならどの会社のどのプランが良いかが一目で分かります。
携帯料金は毎月の支出項目ですから、見直しの優先度は高いでしょう。家計相談時にぜひ役立ててほしいと思っています。