資産形成の近道は小型株にあり──。「小型株集中投資」を実践する気鋭の投資家・遠藤洋さんに、今からでも始められる小型株投資の極意を教えていただく連載。第12回は、かつて一世を風靡した「いきなり!ステーキ」の事例から、小型株を買うタイミングについて学びます。
- 行列を見つけた直後に買ったペッパーフードサービスの株はしばらく横ばいを続けた
- いい会社でも、ほかの投資家に買われなければ株価は上がらない
- 投資家に気付かれていない会社は、株価が上がり始めてから買ってもいい
世の中が付いてこないと株価は上がらない
僕はこれまでたくさんの小型株に投資してきましたが、うまくいかなかったことや、失敗したこともたくさんありました。
買うタイミングの大切さを学んだのが、「いきなり!ステーキ」のペッパーフードサービス(3053)です。
僕がいきなり!ステーキを見つけたきっかけは、街を歩いていたときに見かけた行列です。ステーキといえば席に座ってナイフとフォークで食べるものでしたが、このお店は立ち食いのカジュアルスタイルで、価格も1000円くらいという、今まであまりなかった業態でした。
行列を見てからわりとすぐに、「これは近いうちに株価が上がるはず」と思って、ペッパーフードサービスの株を買ったのは2016年2月のことでした。ところが、そこから株価はほとんど上がらず、1年以上横ばいが続きました。
その後、決算発表や店舗数の増加などをきっかけに株価は一気に上がって、1年間で10倍以上になったのですが、僕にとってはちょっと遅すぎるタイミングでした。
今振り返ると、買った時期が早すぎました。
たとえ良い会社だとしても、世の中が付いてこなければ株価が上がらないことを学んだ典型的な例でした。
中身が伴っていない会社の株価も上がることがある
ペッパーフードサービスは、少なくとも2016年当時は人気も実力も備えた、しっかりとした実態を伴った会社でした。それでも株価が上がり始めるまで1年ほど要しました。
一方で、中身がないのにも関わらず、株価が大きく上がることもあります。
その典型例が、2020年10月に上場廃止になったNuts(7612)という会社です。Nutsは2017年12月にコロンビア大学との業務提携を発表して、富裕層向けの先端医療の会員制クリニックに関するコンサルティング業務を行うと発表していましたが、実際は何の実態もなく、2020年には虚偽の情報開示を行ったとして、証券取引等監視委員会が同社の代表などに対して強制捜査をしました。
たとえ中身のない会社でも、IR(投資家向け広報)の内容によって株価が上がることもあります。最後には倒産にまで至ってしまったNutsはあまりいい例ではないかもしれませんが、「投資家に認知されれば株価が動く」という事実を示したともいえます。
もちろん、期待先行で中身がない会社には暴落や上場廃止のリスクがあるので、投資するなら商品やサービス、経営方針などをきちんと調べて、中身が伴った会社を選びましょう。
世の中の「半歩先」が投資に適したタイミング
どんなに会社の業績がよくても、安定して利益を上げていたとしても、株を買ってくれる投資家がいなければ株価は上がりません。株価が上昇するためには、買ってくれる投資家の存在が必要なのです。
気になった会社の商品やサービス、社長のことを調べて、この会社は本当にいいと思っても、それだけですぐに株価が上がるとは限りません。何かのきっかけがあって初めて株価は上がります。
具体的なきっかけとしては決算発表やIRが多いですね。業績が良かった、利益を上方修正した、新商品を発表したなどのわかりやすいニュースが火付け役になり、そこから株価が急激に上がっていくのを何度も見ました。あとは株式分割も上昇のきっかけになることがあります。
もちろん株価が上がりきったあとに買うと遅すぎるのですが、注目される前に買っても株価はなかなか動きません。世の中の「一歩先」ではなく「半歩先」くらいの、実際に株価が上がり始めたところが、投資するにはちょうどいいタイミングだと思います。