分散投資は投資の王道といわれています。さまざまな資産に分けて投資をすることで、一つの資産が下落する局面でも、値動きの異なる他の資産が値上がりしていれば、損失をカバーしてくれるというわけです。しかし、分散投資をしているからといって、必ずうまくいくわけではありません。そこで今回は、分散投資の失敗例を解説します。

  • 安定的な資産形成のためには分散投資が有効
  • ただし、分散投資のやり方が間違っていると、分散効果を期待できないことも
  • 分散投資をしても頻繁に売り買いをしたり、短期で考えているとうまくいかない

「分散投資で安定運用」のはずなのに……

分散投資は投資の王道です。資産全体で値動きのリスクを抑えながら、安定的に運用することが期待できます。

理由は、値動きの異なるさまざまな資産を組み合わせることで、一方的な下落を避けられる可能性があるからです。もし一つの株式や金融商品に全額投資していると、その金融商品が下落したときに大きな損失を抱えてしまいます。

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資産を分散する方法としては、株式投資をする場合でも複数の銘柄を同時に保有したり、株式だけでなく債券や不動産(REIT)など異なる資産クラスにも投資対象を広げるなど、銘柄の分散が代表的です。

他にも地域を分散するという考え方もあります。日本だけでなく世界中に投資をすることで、日本の景気動向に左右される値動きのリスクを軽減したり、日本よりも高い成長力が期待できる国や地域に投資することで、魅力的なリターンを期待することができます。

しかし、分散投資の方法のやり方が間違っていると、思うような効果は得られないでしょう。分散投資に失敗している人は、どのような失敗をしているのでしょうか。具体的にみていきましょう。

分散投資の失敗その1 分散になっていない

分散投資の1つめの失敗例は、そもそも分散投資になっていないという例です。これは複数の投資信託に分散投資する際に陥りがちな失敗例です。というのも、投資信託にはさまざまな種類の投資信託がありますが、名前が違っても、中身は同じような銘柄に投資をしていることが多々あるのです。

似ているイメージ
名前は違っても、中身は似たような投資信託は少なくない

例えば、米国株に投資をする投資信託と世界株に投資をする投資信託で分けていたとします。しかし、世界株に投資をする投資信託がほとんど米国企業であれば、分散投資にならないことが多いでしょう。例えば投資初心者からの人気が高い『eMAXIS全世界株式インデックス』と『eMAXIS S&P500インデックス』を併せ持っても、それほど高い分散効果は期待できないかもしれません。

■eMAXIS 全世界株式インデックスの組入上位銘柄(2022年2月28日現在)
  【先進国】会社名 比率(%)
1 アップル 米国 4.4
2 マイクロソフト 米国 3.4
3 アマゾン・ドット・コム 米国 2.2
4 アルファベット(グーグル)A 米国 1.3
5 アルファベット(グーグル)C 米国 1.2
  【新興国】会社名 比率(%)
1 台湾セミコンダクター 台湾 0.8
2 テンセント 中国 0.5
3 サムスン・エレクトロニクス 韓国 0.4
4 アリババ・グループ 中国 0.3
5 美団 中国 0.1
■eMAXIS S&P500インデックスの組入上位10銘柄(2022年2月28日現在)
  会社名 比率(%)
1 アップル 6.6
2 マイクロソフト 5.8
3 アマゾン・ドット・コム 3.5
4 アルファベットA 2.1
5 アルファベットC 1.9
6 テスラ 1.7
7 エヌビディア 1.6
8 バークシャーハサウェイ 1.5
9 メタ・プラットフォームズ 1.3
10 ユナイテッドヘルス・グループ 1.2

『eMAXIS 全世界株式インデックス』の国別投資対象比率は6割以上が米国。組入上位銘柄を確認してみると、『eMAXIS S&P500インデックス』とかなり重複していることがわかる。両ファンドを併せ持っても、それほど高い分散効果は期待できない可能性もある。

その分散投資、本当に意味ある?

他にも、アメリカの企業に投資をする投資信託で数本に分けていたとしても、組入銘柄が、アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、など、アメリカの代表的な銘柄に投資をしているファンドであれば、投資信託を複数持つことによる分散効果は期待しにくでしょう。

別の投資信託を購入していても、その中身が似たような組入銘柄で構成されていれば、銘柄が入っていれば、当然同じような値動きになってしまいます。そのため、本当に分散投資になっているかについて、しっかり中身を確認してから投資をしましょう。

分散投資の失敗その2 やたら売り買いをする

分散投資の失敗例の2つめは、やたら売り買いをすることです。投資信託の売買には手数料がかかる場合があります。そのため、売買を繰り返すとその都度コストがかかり、リターンが減ってしまうのです。

分散投資をすることで、長期的にリスクを抑えることが期待できます。しかし、頻繁に売り買いを繰り返していると、将来の利益が期待できる局面でその資産を手放してしまっている可能性もあります。分散投資でポートフォリオを組んで運用する場合は、どっしりと構えて運用をしたほうがいいかもしれません。

特に、下落した資産を我慢できずにすぐに売却してしまうのはもったいないかもしれません。単に一時的な値下がりかもしれませんし、有効な分散投資をしていれば、他の資産で利益を得られ、損失を相殺できるかもしれません。納得して投資した銘柄であれば、多少下落しても慌てずにいたいところです。

慌てている女性
納得して投資した銘柄であれば、多少下落しても慌てずに

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とはいえ、全くメンテナンスをしなくてよいわけではありません。例えば、株式、債券、不動産に3分の1ずつ投資していたとしましょう。株式が大きく上昇した一方で債券が下落したとしましょう。3分の1ずつという配分を崩したくなければ、株式の一部を売却し、債券を購入することもできます。このようにポートフォリオを元の資産配分比率に戻すことを「リバランス」と呼びます。

リバランスは日本の年金を運用するGPIFなどの機関投資家も行う手法で、長期分散投資を実践する投資家にとっては、知っておいて損はない手法の1つといえるでしょう。

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分散投資の失敗その3 短期で考えている

分散投資はさまざまな資産に投資をします。すべての資産が同時に値上がりすることはあまりないため、短期間で大きな利益を期待することは難しいでしょう。

しかし、短期で儲からないからといってやめてしまっては、投資をしている意味がありません。分散投資は長期でじっくりと資産を成長させるようなイメージで行うといいでしょう。

また、分散の手法の一つとして購入するタイミングを分散するという考え方もあります。購入するタイミングを分散することで、高値掴みを避けられます。

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効果的な分散投資、4つのポイント

分散投資は効果的な投資手法です。しかし、分散投資をすれば必ず成功するものではありません。分散投資をする際は「資産」「時間」「地域」「通貨」という4つのポイントを抑えて分散するとよいでしょう。

投資初心者が注意すべき、分散投資の誤解

分散投資をすることで、大きな損失を抱えるリスクを避けられる可能性がぐんと上がります。ただし、分散しているつもりで、分散になっていない場合もあるので要注意!また、長期目線で考えないと分散投資の効果が出にくいので、どっしりと構えて運用することが肝心です。

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