長期で安定的な資産形成を実現するためには、複数の投資対象に分散することが重要です。伝統的な分散投資の選択肢としては、株式や債券、不動産などが挙げられるでしょう。それらとは異なる値動きをする資産として人気があるのが「金」です。今回は、金投資にはどのようなメリットがあるのか解説します。
- 地政学リスクとインフレで注目集まる金。希少性があり、無価値にならないメリット
- 一方、金利や配当収入がないのが金のデメリット
- 金地金や純金積み立て、投資信託、金ETFなど金投資の選択肢は意外と広い
金投資とは? メリット・デメリット
金(ゴールド)の魅力は、なんといってもその希少性です。金は人工的に作り出せないため、地球の中に埋まっている分しかありません。その希少性から、金が発見されてから6,000年の間、その価値を失ったことがないといわれています。
株式や債券は企業などの発行体が倒産してしまった場合、無価値になる可能性があります。しかし、金にはその心配はないといっていいでしょう。金には発行体がないため、信用力の低下によって価値がなくなることはありません。価値がなくならないというのが最大のメリットとして挙げられます。
一方、デメリットとしては、金利や配当などの収入がない点が挙げられます。投資で得られる主な利益には、値上がりで得る「キャピタルゲイン」と金利や配当などで得る「インカムゲイン」の2つがあります。
株式なら配当、債券なら金利、不動産であれば家賃など、いずれもインカムゲインが得られますので、長期で持てば持つほど、利益が積みあがる可能性が高くなります。利回りが高い商品であれば、多少価格が値下がりしても、利回りの部分でカバーできる可能性もあります。
しかし、金は金利や配当が出ないので、価格が下がってしまうと損失に直結します。インカムゲインがないということは、値上がりしない限り、長期で持つメリットが得られにくいといえるかもしれません。
現在、日本は低金利の状態が続いていますが、米国を筆頭に海外では金利が上昇する傾向にあります。金利が上昇すれば、値動きのリスクをとって金を持つより、キャッシュで持っていた方がいい、と考える投資家もいるでしょう。相対的に金のデメリットが際立つことにもなるため、金価格の下落の要因となり得ます。
ウクライナ危機、インフレ「有事の金」の存在感高まる
とはいえ、2022年に入り、金価格は上昇傾向にありました。その理由の一つが、緊迫化したウクライナ情勢といえるでしょう。
「有事の金」といわれるほど、有事の際、金価格は上昇する傾向があります。地政学的リスクが高まったり、政治・経済の先行きが不透明になったりすると、安全資産としての金の価値が高まり、多くの資金が金に逃げ込むわけです。その結果、金価格は上昇するというわけです。実際に3月上旬に金価格は、過去最高値に迫る1トロイオンス=2050ドル台に達しました(1トロイオンスは約31.1グラム)。
アメリカが段階的に利上げをするなど、足元は金利上昇局面でもあります。教書的な解釈ですと、金利上昇局面では、金利の付かない金は相対的に下落するといわれます。3月よりは下げたものの、それでも金価格は高値圏に留まっています。
一般的に金はドル建てになるので、日本円で買う場合はドル・円の為替動向に左右されます。足元では30年ぶりの円安が進んでいることもあり、その分、円建ての金価格は高値更新が続いています。
アメリカは利上げによってインフレの抑制を目指していますが、いまのところインフレの退治には成功していません。一方で米国の株式市場は、大きな調整局面を迎えています。このまま景気後退とインフレが同時に起こるスタグフレーションになると、金投資の魅力は再び高まることが予想されます。
とはいえ、あくまでも金は、株式や債券、不動産とは値動きの異なる分散投資の対象として検討すべき資産であり、資産の多くを金に投資するべきではありません。ポートフォリオにおける金投資の割合は、ぜいぜい5~10%程度に留めておいたほうが無難でしょう。
金に投資するには?
実際に金投資をする際にはどのように投資をすればよいのでしょうか。金投資の方法について紹介していきましょう。
①金地金・金貨
金の現物を購入し、資産として保有する方法です。日本では、トロイオンスではなくグラム単位で購入します。比較的少額からで購入することも可能ですが、一括購入となると、それでもある程度まとまった資金は必要です。購入後は、自分で保管する必要があるため、盗難・紛失のリスクがあります。貸金庫などで保管する場合、保管コストが発生する点がデメリットといえるでしょう。
②純金積み立て
純金積み立てとは、毎月一定額を積み立てて金を購入していく方法です。積み立てを行っている企業が、金を保管してくれます。少額で投資できることや、保管の手間暇がかからない点がメリットだといえるでしょう。
また、純金積み立ては購入するタイミングを分散するので、一度に高値で購入してしまうリスクを防ぐことが可能です。
③投資信託
金に投資する投資信託もあります。投資信託の基準価額が金価格に連動するため、実質的に金に投資をしている場合と同じです。投資信託は銀行や証券会社で購入できますので、他に投資をしている株や債券と同じように管理できます。ただし、購入には手数料が必要です。
④金ETF
金ETFとは金価格に連動する上場投資信託のことです。証券会社で購入できます。購入手数料がなく、信託報酬も安いため、低コストで手間なく金を購入することが可能です。上場しているため、株式のようにタイムリーな売買も可能です。中には投資資金を金の現物に交換できる金ETFもあります。