本連載は、日興アセットマネジメントの研修機関「日興AMファンドアカデミー」による、銀行や証券会社などで働く投資信託の販売担当者に向けたセミナー講義の内容を採録したものです。
〈記事提供:日興アセットマネジメント ※毎週火・金曜日更新

資産運用は100%自分のため、でいい

株式投資や資産運用の本質の話ついでに、少し脱線していいですか。資産運用の、特に株式投資の話でたまに出てくる考え方に「あなたの投資で企業を応援、社会に貢献」といったフレーズがありますが、私すごく気になるんです。例えば、ある企業の株式を買うということは、その企業を応援することであり、投資は社会を良くする素晴らしい行為なんだ、といったフレーズです。

大きな意味では間違っていないのですが、一般のお客様に聞くと、自分が投資したそのお金がその企業にそのまま振り込まれているかのように思っている人が大半なんです。でもそれは間違いです。株式市場でどこかの企業の株を買ったところで、あなたのその投資資金はその会社には行きません。売った人に行くだけです。


証券会社を介した発行済み株式の売買(流通市場)では、投資家が投じた資金を受け取るのは株式を発行した企業ではなく、「その株式を売った別の投資家」である

この点を明らかに誤解させるような、あるいは誤解したまましゃべったり書いたりしているものが世の中に多く見られます。確かに「あなたの投資資金がその企業を応援し育てることになる」というのは共感を得やすい話です。しかし事実はこうです。株式市場には毎日取引が行なわれる「流通市場」と呼ばれるもの以外に、新規の株式発行や株式公開が行なわれる「発行市場」と呼ばれる概念としてのマーケットが存在しています。

ある企業が新工場を建設するために資金が必要で、銀行から借り入れるのが利息がもったいないから自力で資金調達したいと考えた場合に、その企業は新株発行(増資)に踏み切る、それが発行市場です。「ウチの株を新たに発行するから誰かこの値段で買ってくれないかね?」というわけです。あるいは、新しく若い企業が、事業を大きくするためにそれまでの身内だけの出資者のお金だけでは足りないから、広く不特定多数の株主を募っていわゆる上場(じょうじょう)、株式公開をするという場合です。こうした、既上場企業の新株発行や、若い企業の新規公開に応じて株式を買う場合の振込み金額は、そのまま企業に届きます。

しかし私は、そうした「自分のお金が何かの役に立つから投資する」という考え方は違うのではないかと思います。自分の将来設計のために、資本市場を賢く利用してやるというエゴイズムでいいんです。だって自分のお金だし、自分の人生設計なんですから。

「企業を応援」でなくていい

社会の役に立つとPRしている企業だからといって、その株式を買うことが、自分自身の人生設計に役立ってくれるかは分かりません。特に「途中のストレスを無視して最後に笑う」資産運用をしようという場合、個々の企業に必要以上に深入りする必要は、必ずしもないと考えています。

第18回 投資資産を分散して、市場に居続ける
第16回 頑張って利益を上げる企業がいるから、株は上がる