宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。第3回は、iDeCoやつみたてNISAなどでお金を運用するための財源をどうすべきか、住宅ローンという観点から考えていきたいと思います。

「お金に働いてもらう」ための財源をどうするか?

前回までの記事では、投資初心者には、趣味などに使ってしまうお金について「長くお金に働いてもらう」ことを意識しながら、自分自身でも「使いながら増やす」ことを楽しむための環境作りとして、個人型確定拠出年金(iDeCo)、NISA、つみたてNISAなどの活用法をアドバイスさせていただきました。

そもそも、お金を動かして働かせる方法はさまざまで、金融機関へ行くとたくさんのメニューがあります。例を挙げると、株式、債券、投資信託、iDeCo、NISA、つみたてNISA、そして忘れてはならない商品として生命保険もあります。ただ、どの方法を選んだとしても、財源となるお金が必要になってきます。
そのお金は簡単に湧き出るものではありませんが、身の回りの節約に始まり、生命保険や住宅ローンの見直しなど、今すぐにやれることは決して少なくありません。皆さまが将来のために運用するお金を少しでも捻出するヒントとして、今回は住宅ローンに関連してよく寄せられる相談について考えてみました。

【質問】
うちは、家を建ててから10数年になるっちゃけど、金利高いし、もったいねえもん。住宅ローンの借り換えや早めに返済をしたのがいいちゃろうか? 子供もいるしね。

低金利なので住宅ローンを借り換えるメリットは大きい

景気を支えるための日銀の低金利政策の影響もあって、最近は住宅関連の相談を受けることが増えています。その中でも多いのが、住宅ローンの「借り換え」の話です。複数の金融機関から借り換えの話を持ち掛けられる例など多く見受けられました。もちろん、相談者の年齢や融資を受けた時期、金利条件などはバラバラなので、お話をよく聞いたうえでアドバイスをさせていただいています。

今回ご紹介する例は、49歳の男性会社員のⒶさん。奥様とお子様がお一人(小学6年生)という家族構成で、16年前の33歳のときに借入額2800万円で「フラット35」(35年間固定金利のローン)で住宅ローンを組み、68歳で完済予定ということでしたが、「ムムム? これは? 話ししちょったのが、いいかないと!」ということで、相談に至りました。

住宅ローンの金利住宅ローンは金利が重荷。毎月の支払額を少しでも減らしたい

多くの人が借り換えを行う目的であり、借り換えの最大のメリットでもあるのが「金利の負担軽減」です。
Ⓐさんがフラット35を組んだときの金利は、全期間固定金利で約3%でした。今から同じ条件でフラット35を組むと金利は約1.5%ですから、なんと1.5%もの差があるのです。しかも、Ⓐさんは借入残高もまだまだ残っていたため、フラット20(15年~20年以下の借入期間)を選択すればさらに低い金利も使える可能性もあり、借り換えを行うメリットは盛りだくさんでした。すぐに銀行に直行して相談を! ということで、Ⓐさんと話をしました。

繰り上げ返済は慎重に。貯蓄を減らさない努力も必要

Ⓐさんには住宅ローンの借り換えを進めたのですが、後々のためにと、繰り上げ返済についても話をしました。
繰り上げ返済をすれば、借金を減らして完済予定時期を早めることができるため、老後が楽になります。しかし、繰り上げ返済をした分だけ手元のお金はなくなります。Ⓐさんには、当面は繰り上げ返済を行わないことを勧めました。

それは、Ⓐさんの住宅ローンの完済予定が68歳であり、お子さまがまだ小さいことが理由でした。お子さまは6年生、これから教育にお金がかかります。今の年齢なら、早めの返済はせずに、教育費を準備することが優先だと思います。教育費のための貯蓄がなければ、場合によっては住宅ローンよりも高い金利の教育ローンを利用する必要が生じるかもしれません。それに、お子様自身が奨学金を国から借りることにもなります。
「これくらいの貯蓄があれば大丈夫」と思っていても、お子さまの進路によっては予想よりもお金がかかってくることもありますので、貯蓄を減らさない努力も必要です。

あとは返済期間の問題です。できれば返済期間を60歳までとして、老後の安心につなげたいところですが、それでは毎月の返済額に無理が出てしまいます。理想としては、長くても65歳、つまり年金支給開始年齢までには終わらせたいところです。「老後資金2000万円不足問題」から分かるように、65歳以降も返済があれば、毎月約5万円の赤字がのしかかってきます。老後の赤字拡大は目に見えています。

金融機関で相談今は住宅ローンの金利が低いので借り換えが有利。気になった方は金融機関などで相談を

私は60歳を一つの鬼門と考えています。退職金の使い道にしてもそうです。たとえ60歳時点で目先のお金があっても、住宅ローンを完済した後の老後資金を充分に確保するために、早めの一括返済は慎重にしなければならない。方向を見誤ると「長生き難民」になりかねないからです。
ここで皆さまへのアドバイスとして、今の住宅ローンは「私たちが最も安く借りられる融資」であり、将来のための貴重な財源になるということをお伝えしたいと思います。「借金はできる限り減らすべきだ! 早めの完済が一番いい方法だ!」とも言われますが、手元のお金を住宅ローンの返済に費やして余裕がなくなってしまい、目先のお金が足りないからと、住宅ローンより高い金利で新たな借り入れをするのはとても無駄なことです。

住宅ローンの返済額が減った分をNISAなどで運用する

以上を踏まえた上で、私からはⒶさんにさらに1点アドバイスさせていただきました。
私はⒶさんにこんな逆質問をしました。

「住宅ローンを借り換えたら、だいぶ返済額が減るけど、減った分どうすると?」

Ⓐさんは、

「ん~特に考えてないなあ! 安くなったら考えるわ? 月に1万5000円くらいじゃろ」

というお答えでした。
ほかの多くの相談者も、同じように尋ねると同じようなお答えが返ってきます。
「お金が減ることに重点を置き、満足してしまう。後のことはめんどくさい」、これが問題なのです。

何もしなければ、お金は消えて無くなるもの。もともと住宅ローンの金利として払っていたお金が、借り換えで月に約1万5000円も浮くのですから、そのお金をNISAや生命保険などで活用すれば、お金を働かせて、将来のためにお金を増やすことができます。それが私からⒶさんへのアドバイスでした。

これこそ、いつも私が言い続けている「面倒は最初だけ! 結果が出たらお金を動かしましょう! そしてほったらかして、本当に必要なときには使いましょう」に当てはまるのです。せっかく自由に使えるお金ができたのに、面倒だからといって何もしないのはもったいないことです。ぜひ、「もう一歩踏み込んでみる」を実践していきましょう。Ⓐさんのように住宅ローンを抱えるご家庭ならば、お子さまの教育資金のために貯蓄を減らさず、できるだけ増やしていくことを念頭に置きながら、お金の働かせ方を考えてみましょう。