宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、加入したばかりのiDeCoに関して資産運用の初心者が抱く疑問をもとに、iDeCoの仕組みと「元本確保型」の注意点について説明します。

  • 2022年5月から、iDeCoの加入可能年齢が65歳未満に引き上げられる
  • 初心者がiDeCoの運用商品を決めるのは難しいが、「元本確保型」には注意
  • iDeCoの口座管理料などを考慮し、お金を増やすためのリスク商品も取り入れる

いったん老齢給付金を受け取るとiDeCoに再加入できない

【質問】
職場で確定拠出年金(iDeCo)の説明会があったっちゃが。自分は今年に入ってから、別の金融機関でiDeCo加入済みで関係ないと思っていたら、知人は「何いっちょると? コロナもあったから、やり替えた方がいいよ! 損しちょるよ! 早めに運用会社変えね!」と言われています。そもそも、コロナの影響でiDeCoは損してるんですか? 運用会社で損をすることもあるのですか?

今回は、個人型確定拠出年金(iDeCo)の何で?の質問にお答えしていきます。

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iDeCoが少しずつ普及してきたことによって、勤務先でも組合などを通じてiDeCoの説明会などが見られるようになってきました。退職年齢の上昇によって、まだまだこれからも普及が進むことでしょう。
このように職場での説明会も多くなる中で、「iDeCoって何?」とわけもわからず集められて、何のことかわからないまま聞いている方が大半ではないでしょうか?

ここで少しiDeCoのシステムについて、おさらいをしていきます。
iDeCoは、加入者が60歳になるまでお金を拠出(積み立て)でき、その積み立てたお金を、60歳以降70歳までの間で加入者が給付を受けたいと思う年齢から、定期的に支払われる「年金」と、一括で支払われる「一時金」などを組み合わせて受給することできます。この60歳以降に受け取るお金を「老齢給付金」といいます。
iDeCoの加入期間が10年に満たない場合は、加入期間によって、受け取り可能な年齢が最長65歳まで繰り下げられます。

以上が現在のiDeCoシステムですが、年金制度の機能強化のため、今年5月に確定拠出年金法の一部改正が成立し、改正されました。2022年4月から受給開始上限年齢が75歳に引き上げられるとともに、その年の5月から加入可能年齢が65歳未満に引き上げられます。60歳未満の人も、65歳になるまで掛け金拠出ができますので、老後資金の準備をより充実させることができます。
この法改正の背景には、公的年金の財源を確保しながら国民の老後生活の安定を図るために、事業者には定年延長を推進し、働く側に対しては、定年延長によって、少しでも積立期間を延ばして年金の原資を増大させたいという国の意図があります。

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高齢社会への対策は国会で絶えず議論が行われており、年金制度の改革もその一環として行われる

ただ、次のような注意点があります。例えば、現在私の年齢が59歳だとして、来年2021年の60歳時点で老齢給付金の受給を開始したら、その後、再雇用制度などで厚生年金被保険者として働き続けたとしても、iDeCoには再加入できないのです。法改正は2022年5月なので、60歳以降も掛け金の拠出を継続したい場合は、60歳になっても老齢給付金の受給手続きはしないで、運用だけを続ける立場にしておく必要があります。そして、2022年5月以降に掛け金を拠出できる加入者に戻る手続きをすれば、再び掛け金の拠出ができるようになるのです。

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法改正は2年後ですが、現在iDeCoに加入中で、60歳以降も給付金を受け取らずに拠出を続けたい方は、何歳まで運用すればいいのか? 今のうちから考えておくといいかもしれません。

「元本確保型100%」なのにお金が減ってしまう場合も

ここからは、今回の相談のように、iDeCoを始めるにいたって陥りやすい失敗と、失敗を避けるための取り組み方を考えていきます。

職場の全体説明会のあと、知人に「運用会社を変えた方がいい」と言われたそうですが、私の経験上、投資信託を運用する資産運用会社自体が来社して話すことは、めったにありません。職場の提携金融機関などがiDeCoの加入や利用を推進するケースがほとんどだと思います。
多くの場合、iDeCoのメリットは話しますが、デメリットについて、特に肝心な運用商品のリスクなどについては素通りすることもあるので、そのような前提のもとで、要点を絞って聞くことをお勧めします。
要点としては、①運用商品の全体像を大まかにつかむ。②運用商品の数を知っておく。③運用商品の手数料などを把握する。などが挙げられます。

よくある失敗に「商品の配分」があります。iDeCoに申し込む際にはさまざまな書類を提出する必要がありますが、中でも資産運用の初心者にとって厄介なのは、運用商品を決めなければならないことです。理想を言うと、資産配分を決めるためには運用期間、将来の収支見通し、年金以外の資産状況、運用経験、リスクに対する考え方などを踏まえたうえで、商品の選定作業をしたいところですが、資産運用が初めての人には、なんのこっちゃ?となるのも当たり前です。
そこで、説明会でよく見られるのが、加入者が値下がりのリスクを負わなくてもすむように、元本確保型商品(運用利回りは望めないが、リスクを取りたくない)を中心に話を進めることです。これこそ、運用初心者が陥りやすい「元本確保型100%」という失敗です。

説明会
資産運用の初心者に対しては、値下がりのリスクがない「元本確保型」は確かに勧めやすい運用商品かもしれませんが……(写真はイメージです)

「元本確保型」のはずなのに、10年間積み立てを続けて結果はマイナス。将来のお金が増えるどころか、逆にお金が減ってしまうことも普通にあります。
なぜか?
それは、iDeCoの運用商品にはすべて、①金融機関の手数料(口座管理料)、②個別運用商品の手数料(購入時手数料、信託報酬、売却時手数料)のコストが掛かっているからです。
元本確保型商品でも、拠出中は口座管理料を毎月徴収されています(金額は月170円~630円程度)。運用会社を変える際にも、加入時に手数料が掛かってくることもあります。

iDeCoでお金を増やすためには、この①②の手数料をいかにして上抜けられるかにかかってくるのです。だからこそ、投資信託など値動きがあるリスク商品を取り入れながら、元本確保型商品とのバランスを取ることが大事だというわけです。②個別運用商品の手数料は商品ごとに違ってきます。商品の内容をよく調べなければわかりません。

節税効果を享受しながら、長い目で積立を続ける

相談者のように、iDeCoに加入して半年ぐらいの方は、運用状況が気になるのはわかりますが、まだ始まったばかりです。やっていることは老後年金の運用なのですから、他人の意見に惑わされず、長い目で積立を行っていきましょう。それでも、前号(利回りランキング番外編)でお伝えしたように、iDeCoに加入するだけで所得税、住民税が戻ってきているのですから、大万歳です。今後、新型コロナのせいで投資信託の価格が再び下がることがあったとしても、あわてて投資信託を売ったり、金融機関を変更したりする必要はありません。あくまでもiDeCoは「老後のお金を増やすもの」として運用していきましょう。

次回は、新型コロナの再流行を受けて、「iDeCoの運用商品などを自分だったらこう選ぶ」というアドバイスをしていくことにします。

(次回は12月4日の更新を予定しています)