「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回も前回に引き続き、日本の「アクティブファンドのようなインデックス」として、「JPX日経インデックス400」を取り上げます。

  • JPX日経400は東京証券取引所第二部市場やマザーズなどの銘柄を含む株価指数
  • JPX日経400は企業の財務状況や時価総額の大きさを銘柄選択の基準とする
  • 近年では日経平均に負け、TOPIXとほぼ同じ値動きのJPX日経400

JPX日経400はマザーズなどの銘柄も含むインデックス

昨年は大変な1年間となりましたね。そして、年が改まって、株価はロケットスタートを切ることができたのでしょうか?
ということで、「あけましておめでとうございます」と言って良いのか否か戸惑いつつも、本年もお付き合いのほど、どうか、よろしくお願いいたします。

さて、今回も「まるでアクティブファンドのようなインデックス」というお話の続きになります。

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「JPX日経インデックス400」(略称は「JPX日経400」)という株価指数があります。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)に比べると、その知名度がイマイチなので、ご存知ない方も多いかも知れません。
JPX日経400は、日本取引所グループと東京証券取引所、それに日本経済新聞社の共同開発によって、2014年1月6日から公表されている、まだ歴史の浅いインデックスです。

日経平均やTOPIXが東京証券取引所第一部の銘柄だけに限っているのに対し、JPX日経400は東京証券取引所第一部のみならず、同第二部やマザーズ、そしてJASDAQに上場している銘柄も対象にしているのが特徴です。

つまり、JPX日経400は、日経平均やTOPIXのそれよりも、はるかに数多くの銘柄の中から、対象となる企業を選んでいるのです。
NYダウが「NY」を名乗っておきながら、ニューヨーク証券取引所に上場している銘柄に加えて、マイクロソフトやアップルなどのNASDAQ上場銘柄を含んでいるのと似ているなと、筆者は思ってしまいます。

まさにアクティブなインデックスのJPX日経400

JPX日経400は、「アクティブファンド」と名乗っても違和感がないインデックスです。
というのも、JPX日経400の対象となる銘柄の選び方には、明確な運用方針、もとい銘柄選びの基準があるからです。基準については、下記のサイトで細かく説明しています。

トラリピインタビュー

JPX日経400(日本取引所グループ)

まず、債務超過(負債が企業の全資産より多い状態)などの「難ありな企業」はJPX日経400の対象外です。TOPIXが、東京証券取引所第一部に上場してさえいれば、どんな企業でもインデックスに含まれてしまうのとは対照的です。

そして、直近3年間の自己資本利益率(ROE)と、同じく営業利益、それに時価総額の3点から、インデックスの対象となる企業を400社に絞っていくのです。

ROEと営業利益は、まさに企業の「稼ぐ力」、そして時価総額は「企業規模」を、それぞれ測ることができます。

東京証券取引所第一部にとどまらず、日本のマーケットに上場し、真に「頑張っている企業」400社を厳選しているのが、JPX日経400なのです。

※自己資本利益率(ROE)……企業の自己資本(株主資本)に対して、どれだけの利益を上げたかを測る指標。ROEが高いほど、その企業はより効率的に利益を上げていると判断されます。

厳選400社のはずですが、その株価は……

筆者がここまで力強く推してきたJPX日経400ですが、肝心の市場の評価はというと……。残念ながら、先述の「厳選」という言葉のイメージには、とても及ばないパフォーマンスです。

グラフをご覧いただくと、一目でお気づきいただけると思います。
JPX日経400は、TOPIXとほぼ同じ値動きをたどっています。日経平均と比べると、2018年以降は日経平均がJPX日経400を大きく上回っています。

JPX日経400と日経平均、TOPIXとの比較
JPX日経400と日経平均、TOPIXとの比較
2014年1月6日を100として指数化。期間は2020年12月22日まで

正月早々、肩透かしを食わせてしまいましたね。
しかし、この節目のタイミングで、新たな気づきになることを願いつつ。

インデックスに投資をするのなら、日本よりもアメリカか?

さて、「フェイクミートみたいなインデックス」というサブタイトルで、過去数回にわたってお付き合いいただきました。フェイクミートというのは植物性の材料で作った代替肉のことで、「草食系だけど肉食系」な株価指数をこのように表現してみました。

連載第29回では、「高値更新のNYダウと、回復にとどまる日経平均」を紹介いたしました。そして、(密かに記念すべき)第30回では「NYダウを超えるインデックス」として、配当貴族について述べました。

そして、我が国の「フェイクミートみたいなインデックス」として、第31回では、「ビッグネームにして、リーディングカンパニー30社を集約した」インデックスとしてTOPIX Core30、そして本稿ではJPX日経400を紹介させていただきました。

ところが、TOPIX Core30の値動きは、ビッグネーム30社を集約したわりに、安定感に欠けています。

そして、JPX日経400は結局、TOPIXと変わらぬ値動きでした。

正月明け早々にここまでお読みいただいて、読者の皆さまの中でポールシフトが起きましたでしょうか? あるいは、「思い」が「確信」に変わりましたでしょうか?

アメリカの株式に投資すると、為替変動という日本株にはないリスクを抱えることになります。それでも、インデックスに投資をするのなら、今の現状では、「日本よりもアメリカ」という結論を得ることになりそうです。

大切なお金に、海を越えて旅をしてもらう時が来たようですね。

(次回は1月18日を予定しています)

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