中国の不動産大手である恒大集団の債務問題が話題になっています。今回は、この問題に関連する信用リスクと流動性リスクについて考えます。(この記事は、2021年9月30日に執筆しました)

  • 利払い日に支払いが滞るかもという不安が高まると、信用リスクは一気に上昇
  • 中央銀行が緊急に資金供給を行い、信用リスクや流動性リスクの拡大を抑える
  • 信用リスクや流動性リスクが他の企業や金融機関に拡大しそうな場合は要注意

信用リスク、流動性リスクって何?

今回は、信用リスクと流動性リスクの関係について見ていきます。

筆者自身がREIT(不動産投資信託)のファンドに投資していることもあり、最近は中国の不動産大手恒大集団の債務問題に関する新聞記事やネットニュースを関心持って読んでいます。恒大集団の債務問題はリーマンショック(サブプライムローン問題)と比較されることもあることから、リーマンショックの経緯についても簡単に触れてみます。

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信用リスクとは

信用リスクは、主に債券を発行している企業や国などの収支の悪化により、利子や元本の支払いに支障が出るかもしれないという不安から発生するリスクです。このリスクは一般的に株式投資よりも債券投資で意識されます。

債券の場合、定期的(半年毎など)に利子が支払われ、満期になれば額面金額で元本が償還されるものが多いため株式よりも安全な金融商品として認識されています。しかし、利払い日に支払いが滞るかもしれないという不安が高まると、信用リスクは一気に上昇します。

流動性リスクとは

流動性リスクは、売りたい時に売れないリスクと、買いたい時に買えないリスクの2つのケースがあります。通常は、売りたい時に売れない、現金化できないリスクのことを指します。

株式投資では、数日間ストップ安が続き、自分が売りたいと思う価格で売ることができないケースが流動性リスクに当たります。債券投資では、債券を発行している企業や国の信用不安により保有している債券の買い手がつかずに価格が下がってしまう場合が流動性リスクにあたります。

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信用リスクは他の銀行などにも連鎖する

上のケースとは異なりますが、ここでは銀行預金の引き出しを例に信用リスクと流動性リスクの関係について見ていきます。以下の例では、預金保険制度については考慮していません。

*預金保険制度:金融機関が破綻した場合、預金者1人につき、1金融機関当たり1,000万円までの元本と利息が補償される制度(定期預金・普通預金の場合)

特定の銀行に対して信用不安(信用リスク)が広がると預金者は急いで預金を引き出そうとします。預金を引き出しに来た預金者全員が現金を引き出すことができれば、流動性リスクは発生せず、この時点で信用不安も解消されます。しかし、預金者の一部でも現金を引き出すことができなければ、流動性リスクが発生し、それが信用リスクにつながります。場合によっては、別の銀行も信用リスクがあるのではないかと疑われ、その銀行の預金も引き出そうとします。これが連鎖し、拡大した最悪の状態が金融恐慌です。

取り付け騒ぎ
銀行に対する信用不安が広がると、預金者がいっせいに預金を引き出そうとする「取り付け騒ぎ」が起こる

そのような事態を防ぐために、中央銀行が信用不安を起こしている銀行に対し緊急に資金供給を行い、流動性リスクや信用リスクの拡大を抑えるような行動を取ります。

リーマンショックでは何が起こった?

リーマンショックにおける信用不安(信用リスク)は、サブプライムローンと呼ばれる信用力の低い個人向けの住宅ローン債権も組み入れた金融商品(証券化商品)が金融市場で流通し、その証券化商品に与えられた最上位の信用格付(AAA)に疑問符がついたことで発生しました。疑問符がついた理由は、サブプライムローンの利用者の延滞率の上昇です。それにより、証券化商品の価格が下落し、その商品を保有していたいくつかの金融機関が破綻しました。

米国を代表する大手金融機関であったリーマン・ブラザーズについては、当初、米国の金融政策策定にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が資金供給をして破綻を免れるだろうと考えられていました。しかし、FRBからの資金供給がなくリーマン・ブラザーズは破綻します。その状況を見ていた金融機関はパニック状態になり、銀行間での資金(現金)の融通がストップしてしまい、100年に一度と言われる世界的な金融危機に発展しました。最終的に各国の中央銀行が金融機関に対して大量の資金供給を行うことで、危機は鎮静化していきました。

今後、恒大集団の債務問題はどの方向に動くかわかりませんが、仮に信用リスクや流動性リスクが他の企業や金融機関に拡大しそうな場合には、今以上に中国の中央銀行の動きを注視する必要があるでしょう。

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